鍛錬場で膝をつく。全身には汗がビッシリと浮かび上がっており、相当ハードな訓練をした後だというのが誰の目にもわかった。しかもその汗の主は女性だというのだから驚きだ。佇んでいるのは灰色のロングヘアを三つ編みに束ねた麗人。名前はナジェンダ。帝国軍幹部候補に名を連ねる期待の若手だ。
───何をやってるんだ、私は……
オーバーワークな事は分かっていた。しかし、鍛錬を止める事は出来なかった。体を酷使していないと、余計な事を考えてしまうから。
───この国で将軍となる事を目指してずっと戦ってきた。だが……
偉くなればなるほど、この国の闇が目につく。変える為には偉くなるしかないのだが、それでもこれ以上先に進む事にナジェンダは恐れを感じていた。
「浮かない顔してるな」
タオルとともにそんな言葉が空から降ってくる。声の主が誰かは知っていた。この上官は自分より先に来ていて、そして同じ鍛錬メニューをこなしていたのだから。
「…………流石ですね、ヴァリウス隊長」
自分は動けなくなるほどきついメニューだったというのに、この男は軽く息を弾ませ、汗を掻いている程度。まるで永久機関を備えているかのような男だ。見た目の尋常ならざる美しさも相まって、本当に精緻なロボットか何かのようにさえ思えてくる。
「俺は生まれ育った場所が特殊だったんだよ。常に重りをつけて生活してたようなものなのさ。北の辺境で十年暮らせば体力なんて嫌でもつく」
あそこは標高も高く、空気も薄い。普通に生活してるだけでも心肺機能が鍛えられる。ましてあそこで危険種どもと生きるか死ぬかの戦いを繰り広げて来たのだ。備わったボンベが違いすぎる。
「あんたも真面目はいい事だし、努力するのは素晴らしい。こん詰めるのも時には必要だろう。でもあんたはまだ若い。無茶に鍛えると身体を壊すぞ」
タバコを懐から取り出し、咥える。いつの間に火をつけたのか、もうタバコからは煙が上がっていた。
「…………タバコの方が体に良くないと思いますが」
「ど正論だな。だが水が清過ぎれば魚も住まなくなる。こうして偶には不純物を体に取り入れて、清濁併せ呑む事も将には必要なのだよ」
笑ってしまう。上官とはいえ、自分よりも歳下の少年が、そんな事を言う姿が少し可笑しかった。
「そうそう、そうやって表情緩めて、煙を吹かすくらいの余裕がないとこの国ではやってけないよ。張り詰めすぎた弦はいつか必ず切れる」
だから適度に力を抜いてけ、と煙を吐き出し、タバコを一本差し出す。
「吸う?」
「…………いただきます」
初めて吸った煙の味は、苦く、けれどどこか甘かった。
▼
レオーネは後悔していた。この場に彼女達を案内した事は間違いだったかもしれない。少なくとも自分がこんなに気まずい窮屈な思いをする必要はなかったはずだ。
向かい合うナジェンダとチサトの間には冷たい、けれど激しい対立の空気が支配している。お互い無言で睨み合う。こうなったきっかけはナジェンダの一言だった。
「つまりあの人を死地において貴方達は逃げたということか」
今回ヴァリウスが逮捕された顛末を聞いたナジェンダは避難の色を込めた目で結論を出したのだ。
「やはりあの時、お止めするべきだった」
「それは貴方ならあの状況でもどうにか出来たという意味か」
「私ならまずそのような状況にしなかった。あの方を信じ、指示に従っていただろう。そして隊長一人であればむざと捕まるような戦い方はしなかったはずだ。貴方達が逃げる時間を稼ぐために、彼はあの怪物と真っ向勝負をしなければならなかった。貴方達の指示を無視した行動が、彼を死地に追いやった」
その言葉に、四人とも何も言い返せなかった。彼女の言った事は恐らく事実であるから。
「あの方を今の状況に追いやったのは、貴様らだ」
流石に気色ばむ。そこまで言われて黙っていられるほど四人とも出来た人間ではない。
「あー、皆様方。喧嘩も大いに結構ですがねぇ。そんな事よりも優先しなきゃならないことがあるんじゃないですかい?」
空気がピリピリし始めた事を肌で感じ取ったレオーネは軽い口調で空気を壊す。これ以上こんな居心地悪い空間に居たくはなかった。
「そうだな。今はこれからの事を考えなくてはならない」
その言葉に納得を見せた弟子達も取り敢えず黙る。過去の事を悔やんでも仕方ない。後悔ならここに来るまでに十分やった。今は彼を救う事に全力を注がなければ。
「処刑の日取りは?」
「まだ正式に決まったわけではないが……恐らく一週間後。時間は正午。処刑はエスデス将軍とブドー大将軍。2名の手で行われるとされている」
「….…それはまた豪勢な」
この国の武の頂点に立つと言われる三人が一堂に会する事になる。そんな事は軍にいた時ですら滅多になかったというのに。
「結論から言って、その前に彼を助け出す事は不可能だ。地下牢の警備は厳重だ。此処に侵入するだけでも至難の技だろう」
その事については弟子達も異論ない。宮殿の警備を担当した経験のあるヴァリウス本人が言っていた。平時にあそこに突入するのは単独では俺でも無理だと。厳密に言えば突入はできる。だが生きて出るのが一人では無理だと言っていた。
「…………隙ができるとすれば処刑当日って事ね」
無理だと断言したというのにナジェンダは諦めていない。それはつまり突破口があるという事だ。そして万物に言える事だが、付け入る突破口とは動き始めた時にこそ起きる。ヴァリウスも言っていた。機とは敵が弱っている時ではない。相手が万全の状態で優位に立っている時こそがその瞬間だと。
───流石ですね、ヴァリウスさん。貴方の教育を受けていることが会話だけでよくわかる。
ほんの短い時間ではあっても、手ほどきを受けたナジェンダだからこそ、彼女らからあの人と同じ匂いを感じ取った。
「大臣はこの処刑を最近落ち始めている帝国の威信回復に利用するつもりらしい。闘技場を借りきって、民衆も集めて大々的にな」
「…………なるほど、ブドー辺りは頭が痛いだろうな」
民衆を集めるという事は警備上どうしても穴ができる。わざわざリスクを増やすような真似をしようというのだ。エスデスは敵が現れる事は歓迎するだろうが、警備を一任されているブドーにしてみれば溜まったものではない。
「だが此方としては好都合だな」
「ああ、貴方達が侵入する隙を作ってやるくらいは今の私でもきっと出来る。私は好き勝手動けないが、別口で頼んでいる組織もある。あなた達には処刑当日、彼らと連動して動いてもらう。それまで派手な動きはするな」
「………………」
「1日でも早く動きたい気持ちはわかる。だが無計画に動いて、それがバレたらあちらの警備態勢がさらに厳しくなる。今の方法が最も彼の生存率の高い作戦なんだ。それでも助けられる確率は限りなくゼロに近い。これ以上状況を難しくするな。彼の弟子だというなら理解しろ」
不服そうな3人の弟子を見てナジェンダがクギを刺す。何としてもあの人を助けたいのはナジェも同じだ。だからこそ危険とわかっていながら薄氷を踏むような綱渡りをやっている。
───納得はしてなさそうだが理解はしたか。
これ以上何を言っても無駄だと判断した灰色髪の将軍は懐から処刑場の見取り図を取り出し、作戦についてチサトと議論を始める。何が出来て、何が出来ないかをお互い忌憚なく言い合い、詳細を少しずつ詰めていった。
「…………なぁ」
黙って見ていたレオーネが二人に呼びかける。邪魔をするかとも思ったが、聞かずにはいられなかった。
「ああ、レオーネ。すまない。本来なら今日はお前と話をしに来たんだったな。チサト、悪いがこの話は後に──」
「それはいいよ。私も完全に敵に回る前にヴァリウスにはちゃんと会っておきたかったから。だから私もこの作戦に協力するのは吝かじゃないんだけどさ」
「………?」
「なんでアンタはそこまでしてあいつを助けようとするのさ。元上司だからってだけじゃ、ここまでしないよね。貴方がアイツに味方する奴らを炙り出してこの4人をハメようとしてないって保証はある?」
場の空気に緊張が奔る。弟子達もその可能性を考えていなかったわけではないが、師を救うとっかかりはもう彼女らしかいない。罠を覚悟でそれでも希望を求め、藁にすがった。そのことを口にしなかったのは掴む藁さえ無くなることを恐れたからだ。
弟子達では聞けなかったことをレオーネは聞いてくれた。それはありがたい事ではある。しかし……
「ちょっと、レオーネ」
堪えきれずチェルシーが声を上げる。罠だったとしても彼女らからすれば、チャンスと言えるこの交渉を決裂させるわけにはいかない。たとえ警備隊が手ぐすね引いて待っていたとしても、帝国の奥深くに潜れるというのは好機だ。罠に嵌めたと思っている敵は御し易い。
「ゴメンね。でもやっぱりコレは聞いとかないとさ。それに迷いがあっちゃみんなだって思いっきりやれないだろ?」
人生の大半をスラムで生きてきたレオーネは騙し騙されに染まりきっている。疑う事が日常である彼女にとってこの疑問は当然だった。
「もう一度聞くよ。なんでアンタはあいつを助けようとするのさ」
それが聞けない限り、そしてその理由で納得できない限り、レオーネはこの作戦に協力できない。
「…………元上官だから、というのも嘘じゃない。でも、もちろんそれだけじゃない」
「…………」
「私は……あの人が好きなのさ」
何かを懐かしむような、遠い目を向ける。手にはタバコが握られていた。かつて彼に勧められた銘柄。できるだけ体に悪いものは摂取せず、完璧な体調管理を続けていた聡明なナジェンダが唯一摂取している明確な不純物。きっと彼があの時差し出してくれなければ、生涯取る事はなかっただろう。
『生死の境を生きる奴はな、毎日完璧な体調管理スケジュールをこなしつつ、致死量ギリギリの毒を躊躇いなく飲めるやつだ』
畑で育てられた植物より道端に生えてる草の方がしぶとい。体に良いものだけ摂ってたらタフさが身につかない。しなやかな強さが無いものは脆い。
彼がいつも言っていた言葉だ。真実もあるが、それ以上にきっとタバコを吸う言い訳だろう。それとこれとは話が別だ。これを話している時の彼も自覚はあったようで、笑っていた。
しかしナジェは彼のそんな所が好きだった。
「そういうお前はどうなんだ?見た所隊長とは顔なじみのようだが」
「アンタと似たようなもんさ。ボコボコにされてはアドバイスされて、偶に優しくされてた悪友だよ」
その一言を聞いて誰もが笑みをこぼす。ここにいる全員に覚えがあった。
「私たちは全員、彼にボコられた借りと恩がある。纏めて返してやる…とまではいかないだろうが、ギャフンとくらいは言わせてやろう」
後にこの場にいる全員が、帝国を崩壊させる組織の中核を担うメンバーたちとなり、歴史に名を残す偉業を成し遂げるのだが、それは別の物語。
▼
軍靴が床を鳴らす硬質な音が闇に響く。浅く留めていた意識が浮上する。その足音だけで尋ね人が誰かわかった。
「随分やつれたな、ヴァル」
碧空色のロングヘアを揺らし、氷のように冷たく、美しい瞳が闇の中で煌めく。現れたのは鎖に繋がれた狼の元主。溢れる覇気と威圧感はいささかの翳りもないが、体中に包帯や湿布など怪我や火傷の手当てを受けた跡が見受けられる。
「随分大げさに包帯巻いたな。そこまで大怪我負わせてないだろ」
「まともに動く許可を医師にもらうのに今日までかかった。こんなに怪我をしたのは間違いなく三年ぶりだ」
座り込む。手にはブラウンシチューが盛られた皿があった。
「エビルバードのシチューか。懐かしいな。お前の得意料理だった」
「覚えていたか。嬉しいよ」
スプーンでひと匙、シチューをすくい取る。そのままこちらに差し出してきた。
「食べるか?」
鎖を引きずる音が鳴る。断られるかとも思ったのだが、そのつもりはないようだ。口を開けた。
「美味しい?」
「ん……美味い」
ゴロリとした大きな肉片が乗っていたのだが、躊躇いなく食べる。流石だ。ロクな食事も与えられず、鍛錬もしていない。筋肉は衰える一方のハズなのに、肉を噛み切る力はまだあるらしい。体力は削られても、気力は些かも萎えていない。
「ふふ……懐かしくも新鮮だな。あの時食べさせて貰っていたのはいつも私だった」
「二人で旅をしていた時か……あったな、そんな事も」
あの惨劇の夜を経た後の思い出。ヴァリウスを鍛えると同時に姉貴分としてエスデスは彼を甘やかしていたのだが、時には甘えてくる事もあった。寝る前に唄をせがんだ事、共に眠った事。食事もそのひとつ。偶に食べさせてと口を開いてくることがあった。
「…………考えは変わらないか?」
「……………………」
黙秘は肯定と変わらない。雄弁な沈黙だった。
「今ならまだ間に合う。私の軍門に入れば、超法規的にお前の罪を赦す。話はついてるんだ」
「くどいなエディ。この国に仕える気はもう一切ない」
「国ではなく、私に仕えると考えろ」
───……それは無理だよ、エディ
盲目的にお前に仕える事が出来たのなら、あの反逆の夜は起こらなかった。それが出来なかったから、俺は今こうしているのだ。
「哀れだな」
俺たちはもう、自分の為だけに戦うなんて事は出来ない。それをするには俺たちは強くなり過ぎた。
「なあエディ。強いってのは哀れだな」
自分のために戦っているつもりでも、その強すぎる力は何かを巻き込み、そして誰かの為になってしまう。
「俺たちはいつだって、誰かの代わりに戦わなくちゃならないから」
言っている意味が理解できないのだろう。そういう事が二人の間にはままあった。それでいいと二人とも思っている。嘘をついたことはないけれど、隠し事をしたことは二人ともある。全てを理解する必要なんてない。互いが互いを愛している。それだけが理解出来ていればそれでいい。本気でそう思っていた。
しかし今、生まれて初めて、彼を理解できないことに氷の女神は苛立った。
「…………処刑の日取りは明日の正午。全帝都民の前で行われる」
檻の鍵を開け、入ってくる。そのまま彼の胸へと倒れこんだ。鎖で繋がれているヴァリウスは動く事は出来ない。
「処刑を行うのは私とブドーだ。その重症に加えて、ロクに休息も取れていない最悪のコンディション。お前に勝ち目は絶対にない」
「どうかな。わからないぜ。この世に100と0はない」
「私ももうここに来ることは出来ない」
軍服のボタンを外す。窮屈そうに押し込められていた豊かな胸が露わになる。血塗れの彼の首に腕を回した。
「だからせめて……今夜だけは」
闇の中で二つの影が重なった。
▼
手の中にある一通の手紙を玩びながら女がため息をつく。服装は大道芸人を彷彿とさせる衣装を纏っている。番傘を肩にかけ、腰掛けた椅子をグラグラ揺らしていた。
「はぁ〜」
「メラ様、どうしたんですか?」
メイド服を来た女性が声を掛ける。彼女のこのような不機嫌というか、不満げな姿を見たのは随分久しぶりだったからだ。
「ちょっと嫌な依頼が来ちゃったのよ」
メラ様……メラルド・オールベルグは嫌そうに手紙を指でつまむ。依頼人は革命軍と繋がりのある将軍で、報酬も良いため、無下には扱えない。しかし依頼内容は気にいるものではなかった。
「男と寝ろとかですか?」
「そんな依頼して来たら依頼人ごと殺してやるわ……ま、内容はそれに近いけど」
「え!?」
メイド服の少女、ギルベルタが本気で焦る。先ほどは冗談で言った事だったが、本気で恋をしてしまっているメラルドが男を相手にするところなど考えただけでゾッとする……多少興奮もするが。
「内容はなんなんですか?」
「男を、助けろだって」
「護衛任務ですか?それなら今までだって……」
「そう、何度かあったわね。もしコレがただのVIPとかなら私だってここまで憂鬱にはならないけど……見てよこれ」
手紙を見せる。そこに書いてあった名前を見て、ギルベルタも眉をひそめた。
「まさかよりによって散々煮え湯飲まされたこいつを助けろなんて言われるとわねぇ」
オールベルグ殿へ。炎狼のヴァリウスが捕まった事は情報通の貴殿らならもう御存知の事と思う。この傑物を無為に死なせる事は国家の損失に等しいことを貴方達なら理解していただけるだろう。ついては彼の救出を依頼したい。もちろん報酬は充分に支払う。協力してほしい。
ナジェンダ
▼
「処刑場の警備……ですかい?」
次の仕事内容を聞かされたゴズキは眉を顰めた。警備態勢という点なら帝都以上に堅固な場所はない。選りすぐりの精鋭である近衛に今はエスデス軍もいる。わざわざ自分たちが呼び出される理由がわからなかった。
「ああ、お前ももう聞いているだろう。炎狼のヴァリウスの処刑は一週間後と決まった」
「らしいですな」
生きていた事にゴズキはそこまで驚かなかった。いくら帝具の力があったとはいえ、あそこまであっさりヤツがやられるのはやはりおかしい。自分が知らない全く未知の帝具の能力でもあったのかもしれない。何らかの仕掛けがあったと見るのが自然だった。
「処刑は帝都の闘技場で大々的に行われるとのことだ。一般都民も多く集めるらしい」
「それはまた……」
「彼は良くも悪くも民に慕われる将軍であった。未だあの方への恩を忘れていない連中は民にも、軍の中にも少なからずいる。この混乱に乗じて内外から何らかの動きがあるかもしれない。ブドー将軍の近衛は外部の警戒に回される。エスデス軍は帝都内の警備に配属が決まった。監獄と将軍の護送にどうしても彼ら以外の手練れがいる」
「それで俺らに白羽の矢が立った訳ですか」
正直に言ってあまり気は進まない。あの炎狼にこれ以上関わることは子供達にとって、特にアカメにとって良くない。彼の事を新聞で知ってから、ずっと思い悩んでいることは気づいていた。
しかし断ることもできない。ゴズキは諦めの息を吐いた。
▼
「貴方、監獄で彼の世話をしているそうね」
今日の食事を持って地下牢へと向かうシェーレを呼び止める。後ろにいたのはローブを頭から被っている人影。顔は分かりにくい。なかなか高身長だが体躯は華奢なため、恐らく女性だと思われる。
「ここの一番地下にいる人に会いたいの。案内をお願いできない?もちろん、やれる事なら何でもやるわ」
「あの、貴方は?ヴァリウスさんと知り合いなんですか?」
あの闇の中に自分から行きたいという人間が自分以外にいるとは思えなかった。いや、自分が思っている以上に顔の広い人である彼ならば会いたいという人間の一人や二人いても不思議はないのかもしれない。でも、顔も素性も隠した相手をあの人に会わせたいとは思わなかった。
そんな警戒心を読み取ったのか、女性は顔を隠していたローブを外す。現れたのは少し煤けた、けれど輝きはある金色の髪が舞い踊り、天覧の空を思わせる青い瞳が姿を現した。
「私はコルネリア。あの人に救われた女よ」
人が次第に朽ちゆくように、国もいずれは滅びゆく。
千年栄えた帝国も、今や腐敗し、生き地獄。
緋色の狼を救いたい者、大罪を犯した戦士を裁く者、彼を手に入れたい者、それぞれの意志を抱え、彼女たちは行動を始め、運命の日を迎える。
人の形をした魑魅魍魎の住まう街で主義、思想、信念を完全に違えた彼女らは、揺るぎない思いを胸に───
決戦に挑む
後書きです。完全オリジナルって難しい。絡ませる予定じゃなかったアカメ達やオールベルグまで出てくるし……誰か一人くらいは死なせないとなぁ。でも誰も死なせたくない……そんなジレンマ。やっぱり原作ですでに死んでる人が殺しやすいなぁ。つまり最初の犠牲者はタエ……ゲフンゲフン、なんか最終章っぽく締めちゃったけどどうやって収集つけよう?それでは、励みになりますので感想、評価よろしくお願いします。