コードギアスR2 ~去りゆく影~    作:三戦立ち

38 / 49
第38話

「カレン!!」

 

アキラは半壊した紅蓮に呼びかけカレンの小さな呻き声が聞こえる。

 

「待ってたぞアキラ!」

 

蛇腹剣を振り下ろすヘルハウンドから避け距離をとる。

 

「紅蓮はもうダメだ。あとは中にいるカレンを…」

 

「………お前とはここで決着をつける」

 

アキラは落ちているライフル2丁を拾い銃口を構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-斑鳩-

 

 

「紅蓮のシグナルロスト!」

 

「カレンから連絡もない!?どうなってるんだ?」

 

ブリタニアの内紛に黒の騎士団はシュナイゼル達と共に加入したが謎の超常現象から各部隊の安否が分からないままでいた。

 

「どうやら、ブリタニアのほうも同様のようで。誰が敵か味方か混乱しているようです」

 

ディートハルトはブリタニアの動向を見ながら戦場を状況を確認していた。

 

「ですがこの状況は誰によるなのか?副指令……」

 

「…………ん!?」

 

「流崎アキラ、異能生存体。シュナイゼル殿下の仰ったことはギアス同様半信半疑ですがもしこの戦場を作り出したのがあの男によるものとすれば……」

 

「…何が言いたい?」

 

「あの男を交渉の材料として引渡しましたが副指令、この混乱を利用して彼を再度捕らえてみるのは」

 

「アキラを!?」

 

「この後もし何かがここで起これば彼、異能生存体の存在は本物」

 

「たっ確かにそれは……」

 

「彼の力が本物なら確かに危険です。しかし扱いを考え、逆に利用すればブリタニアとの交渉は我等に有利にいや、逆に日本を取り戻すだけではなくそれ以上のものが……例えば中華連邦アジアを全て掌握しブリタニアと2強の大国することも……」

 

「何を言って……!?」

 

ディートハルトの申し出に扇は戸惑いを隠せなかった。

 

「ゼロ以上のことをあなたができるかもしれませんよ。流崎アキラを使い……」

 

「…………」

 

ゼロ以上……そんなことが自分にできるのか?今日本を取り戻すだけしか考えていなかった。

 

「………っ!!今はこの戦局をどうにかすることが先決だ!」

 

先程の話を忘れるが如く扇は今の戦場に向き合おうとする。そんな姿をディートハルトは口元をゆがめて笑う。

 

「ゼロによって引き起こされたカオス。そのカオスを体現させる男流崎アキラ、おもしろい。あのシュナイゼル殿下何故執着するのか気になる。ふっふふ…」

 

 

 

 

 

 

 

2機の戦闘をルルーシュ、スザク、C.C.の3人は遺跡から少し離れた高台で見ていた。

 

「C.C.、アキラが乗っている機体は?」

 

「レグジオネータ、異端者がつくったKMFの基となったKMFらしきもの」

 

「どういうことだ?」

 

「ブリタニアはあれを長い年月をかけて調べたが解析できなかった。乗っていた人間が全て本国西部にいた先住民達だった」

 

「先住民、インディアン達か!?」

 

「機械をロクにあたったことのない連中がどうしてレグジオネータを扱えたか?捕らえた機体にいたインディアンは死亡、または言語障害、精神障害五体満足の人間は誰も無かった。それだけあの機体は謎だらけということだ」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

レグジオネータは2丁のライフルを撃ちつづけその銃撃を回避するヘルハウンド。アキラは半壊した紅蓮を巻き込まないよう離れながら戦いを繰り広げていく。弾切れをおこしたアキラは茂みに隠れ近くにライフルが落ちてないか探っていた。

だがその最中にも……

 

 

―………………―

 

「……っ! 黙れ!!」

 

レグジオネータから敵機を撃破するようアキラの脳裏に呼びかけるがアキラは不快を露にする。

 

 

 

「お前はPSの私と互角で戦ってきた。戦士として賞賛に値する。」

 

 

レグジオネータからの銃撃を掻い潜りながらヘルハウンドは蛇腹剣を向ける。ライフルのうち1丁が巻き込まれ切断された。

 

「だがお前と戦ううちに敵以上の何かが……お前が常に私の心にいた。カレンもだ!お前達はいつも私をおかしくさせる!!」

 

 

 

レグジオネータはライフルを捨てヘルハウンドと取っ組み合いとなった。

 

「言いたいことはそれだけか」

 

「っ!?」

 

「お前の僻みにはうんざりだ」

 

「何だと!?」

 

「俺から見ればお前もただの女だ」

 

「違う!!私はPS、選ばれた戦士だ!!」

 

ヘルハウンドの左腕の力が強まりレグジオネータの腕が軋む音が聞こえてくる。

 

「なら、お前と私の違いは何だ!!」

 

「っ!?」

 

「お前も戦士。お前は戦士としてカレンを守るために戦ってきた」

 

「………」

 

「お前がカレンを愛していたように私もお前を……」

 

「…………」

 

「何にお前は…!!」

 

ヘルハウンドはレグジオネータの左腕を破壊した。アキラはエリスの追求に一瞬戸惑い動きが止まった。

エリスはその隙を逃さず蛇腹剣を振り下ろす。

間に合わないとアキラが感じた瞬間何者かに操られたかのように自分の腕が勝手に動きレグジオネータの残った右腕が蛇腹剣を掴んでいるヘルハウンドの右腕を受け止める。

 

 

「っ!?」

 

レグジオネータから漂う異様な違和感にエリスは不気味に感じ離れようとするがレグジオネータは掴んだ腕を離さず逆に腕の力が強まりヘルハウンドの腕を握り潰すと持ち手を失った蛇腹剣を逆手で持つとそのままヘルハウンドの胸部に突き刺した。

 

「ぐうぅ!?」

 

レグジオネータはそのままヘルハウンドを押し出し岩壁へと激突させ刺さった蛇腹剣を更に機体の奥へと刺しその刃がエリスのいるコックピットへと迫ろうとしていた。

 

「ぬあぁぁぁ!!」

 

エリスは強引に押し返しレグジオネータから離れるとこのままではやられると距離をとろうとするがレグジオネータはその後を追いかけるがその姿はドス黒い不気味なオーラを身に纏っているようにエリスには見えた。

 

 

 

「うぅ……」

 

 

周りの爆音により気を失っていたカレンがゆっくりと目を醒ます。

 

「私は確か……っつ、エリス…!」

 

カレンは計器を操作し紅蓮がまだ動くか確認するがしばらくしてディスプレイに光が点り外の景観が見れるようになった。近くにエリスがいないことを確認するとカレンは紅蓮を立ち上がらせるが損壊しているため動作が遅くなってしまっている。

 

 

「どこ……エリス」

 

おぼつかない足取りで紅蓮を歩かせているとここから少し離れたところで戦闘を行っているヘルハウンドを見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

後退するヘルハウンドを捕まえたレグジオネータは頭部を掴むと無理矢理引き剥がすと拳をつくり振り下ろしその衝撃でヘルハウンドは転倒した。

 

「ぐぅぅ…」

 

倒れたヘルハウンドに止めを刺そうと近づこうとするがその直後紅蓮がレグジオネータに体当たりをして両機の間に入った。

 

「エリス!!」

 

カレンはエリスを守ろうとレグジオネータの前に立ち塞がる。

 

「何こいつ?」

 

見たことのないKMFにカレンは焦りの色を滲ませる。

 

「カレン……私とアキラの邪魔をするな!!」

 

「アキラっ!?あれに乗ってるのはアキラ!?」

 

紅蓮は両腕がない状態で近づくレグジオネータに止めようと体当たりをする。

 

「アキラ!!そこにいるの!?」

 

カレンは必死に呼びかけるが返事がない。KMFとは言えないその不気味な姿。紅蓮の胸部を掴むと凄まじい握力で紅蓮の胸部が歪みだす。

 

「っ!? アキラなの…?ホントに!?」

 

レグジオネータから放たれる異様なオーラ。アキラが乗っているが別の何かがいるように感じカレンは金縛りにあったように動けなくなった。

 

そしてレグジオネータの腕から電流が走りその瞬間紅蓮の動きが止まりモニターが消え起動しなくなった紅蓮を乱暴に叩きつけた。

 

 

沈黙した紅蓮を無視しレグジオネータはヘルハウンドへと近づく。再び立ち上がるヘルハウンドは残った左腕のアームクローを構えてレグジオネータを迎える。

 

「ダメ、アキラ!!エリスを殺さないで!!!」

 

叩きつけられた衝撃でコックピットが破損し外の様子を見たカレンが飛び出し必死に呼び掛ける。

 

 

右腕を手刀へ構えレグジオネータは右腕を突き出す。そしてヘルハウンドがアームクローを突き出し両機の腕が交差する。

 

「アキラっーー!!!」

 

 

カレンの呼びかけにアキラは意識が覚醒し目の前の光景がスローモーションのように映った。

 

ヘルハウンドのクローアーム、レグジオネータの腕が交差し両機のコックピットを貫通した。

 

 

「あ……あぁ………」

 

両機の姿にカレンは腰から崩れ落ちた。

 

 

 

「相討ち!?」

 

両機の戦闘を見たスザクは2人は死んだと思われたが…。レグジオネータのコックピットのハッチが崩れ落ちコックピットの中が表れた。

 

カレンはハッと体を起こし下からコックピットを覗くと…。

 

「アキラっ!!」

 

中にいるアキラは健在で貫通したアームクローはアキラの真横を貫通しアキラに被害は及ばなかった。

 

アキラは腰のホルスターからショットガンを抜きレグジオネータから降り沈黙したヘルハウンドへ近づく。

 

「アキラ!!」

 

カレンは銃をアキラに向ける。

 

「もう、やめて!!これ以上やるなら私は…!!」

 

アキラはカレンを見て戸惑いを見せるがアキラは…。

 

「…………」

 

その足取りを止めずアキラはヘルハウンドへと近づく。

 

「アキラ!!」

 

アキラはコックピットの稼動部をショットガンで撃ちハッチをこじ開ける。

中にいるエリスを見てカレンは絶句する。

 

レグジオネータの腕がエリスの体を貫き彼女の下半身が潰されていた。

 

「あぁぁ、エリス……っ!!」

 

カレンはエリスに近づき膝をつく。カレンを見てエリスは喀血しながらも笑みを浮かべる。

 

「何だその顔は。お前からアキラを奪おうとした私が死ぬんだ」

 

カレンは頭を横に振るう。

 

「違う…私はこんな………」

 

エリスは悲痛な面持ちでアキラを見つめる。

 

「アキラ……私はどうして自分がお前達に執着していたのか……。お前を愛していた………。だがそれだけじゃない。私は………お前達が羨ましかった」

 

 

「………」

 

「戦場でしか己の存在を見出せない同類だと思った。だが……お前には愛している人がいた。。そしてお前を愛してくれる人がいた。欲しかった……私にもそんな人が………」

 

「エリス……」

 

エリスの呼吸が乱れ苦しみだした。

 

「アキラ……頼みがある」

 

「………」

 

エリスの顔を見てアキラは黙ったままショットガンの銃口をエリスに向ける。

 

「ふふっ……。さすがアキラだ。頼む、最後はお前の手で……」

 

「………」

 

「戦えアキラ……兵士としてではなく人間として………」

 

 

 

 

その瞬間、銃声の乾いた音が鳴り響いた。

 

 

「エリス……」

 

カレンはエリスの亡骸を優しく撫でる。

 

「アキラ…私ね、彼女とあなたが似てるって感じたの。だから助けたかった……」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝った……アキラが……」

 

戦闘が終えるのをルルーシュ達も確認した。

 

「このままアキラ、ワイズマンがいればこの世界は終わることのない戦いの混沌となる」

 

「だがそれは君も同じだ」

 

ルルーシュとスザクは視線を合わせ対峙する。

 

「君はユフィの仇だ」

 

「……あぁそうだ」

 

次の瞬間、島全体から地響きを立て揺れだした。

 

「何だ地震!?」

 

「いや、何かおかしい」

 

ルルーシュは急ぎ遺跡へと戻ろうと2人と駆けていく。

 

 

 

 

 

 

 

「何っ!?」

 

アキラ達も只の地震ではないと感じた。

 

「カレン!!」

 

アキラはカレンの手を引っ張り走り出した。

 

 

駆け出したことで肩で息をしながらも蜃気楼へ戻ったルルーシュはこの現象の原因を探った。

 

「これはっ!?」

 

 

そしてシュナイゼル達もこの謎の現象の原因が何なのか分かった。

 

「エネルギーコアの暴走ですって!?」

 

「はっ、おそらくここの遺跡、いえこの島地下深くから発生していると……」

 

「殿下、このままですと……っ?殿下?」

 

カノンが振り向くとシュナイゼルが声を押し殺していた。

 

「ふっふふふ……。アキラ、やはり君はただで終わらせないんだね」

 

 

 

 

 

 

―斑鳩―

 

「全部隊に撤退するよう伝えるんだ!!」

 

「それが突然、島全体から電波妨害が発生して連絡が…」

 

「なんだって!?」

 

何故こんな時に。扇は戸惑いを隠せずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このままではこの島は沈む。C.C.、スザク!!ここから脱出する!!」

 

「っ!? 待ってくれ!!」

 

スザクは急ぎ遺跡の中へ駆け出し、遺跡の扉の前に倒れているアーニャを抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキラとカレンはアキラが乗っていた小型機へ戻ってきた。

 

「これに乗るんだ」

 

アキラはタラップを降ろし先にカレンを乗せた。

 

「アキラ!」

 

手を伸ばすカレンの手を掴もうとしたアキラだったが大きな揺れで周辺の地盤が崩れその拍子でアキラの足場が歪み転倒してしまった。

 

「ああぁ!?」

 

小型機が斜めへと歪みカレンは機内で転倒し頭を打ってしまいそのまま意識を失ってしまった。

 

「カレン!!」

 

アキラはカレンを助けようとするが上空から眩い光が差し込み見上げた瞬間その光に視界が奪われた。

 

 

 

 

崩れる神根島に敵、味方関係なく巻き込まれブリタニア、黒の騎士団両軍は混乱に陥った。

 

 

 

 

島の様子を上空から蜃気楼でルルーシュは見つめる。機体の両腕にC.C.、スザク、アーニャの3人が乗っていた。

 

「神根島が消えていく……」

 

アーニャを抱えたままスザクは呆然と神根島を見つめていた。

 

「どうして……」

 

「あの遺跡の自動防衛システムが……」

 

「それだけだと思うか?」

 

C.C.の問いスザク、ルルーシュの2人はある答えに辿り着く。

 

「まさか……」

 

「ルルーシュ、ワイズマンは存在している」

 

「何っ!?だが……」

 

「Cの世界はお前のギアスで消滅させられた。普通ならワイズマンもシャルルと同じようになるはずだ。だが自動防衛システムは対象の人物、物体を転移させるものだ。こんな自爆するようなものじゃない。だとすればこれが誰かが仕組んだんだ」

 

「ワイズマンが生きている……?」

 

「おそらく、アキラも生きているはずだ。ワイズマンはあの男に何かさせるつもりだ。そしてアーカーシャの剣も修復させるだろう」

 

「ワイズマンは一体どこに?」

 

「さぁな。ワイズマンがどこに潜んでいるのか……。長い間奴らに踊らされた私達にわかるはずがない」

 

C.C.は自嘲気味で笑みを浮かべる。

 

「気をつけるんだな。奴は私達を見てるぞ」

 

C.C.の言葉に2人はワイズマンの存在が自分達のすぐ背後に感じる恐怖で額から一筋の汗が滴り落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―俺とエリスが似ている。

カレンの言葉、そしてエリスの最後の言葉。何故、俺がエリスに殺意を抱いていたのか。それは奴が俺そのものだったからだった。戦いでしか己の存在を見出せず愛を欲していた。だが奴の愛を受け入れることができなかった俺は奴を突き放してしまった。

俺がエリスを追い込んだ………。だがエリスを救う手立てはあったのだろうか……。

今の俺にはわからなかった…………。浴びせられた謎の光で俺の後悔の念を抱く時間をも奪っていった―




はい。長い長い第3部はこれ終わりです。
中々思うように投稿できず心苦しい限りです。

エリスはここで退場となりましたがアキラとエリスの関係っていうのは原作のフィアナとイプシロンがモデルとなっているのです。

イプシロンはフィアナから人を愛することはどういうことか。彼女と接することで愛を知りそれ故に苦しむ描写がありましたが

エリスの場合は愛っというものが何なのか分からないままで。知らない故に苦しみそしてカレンの存在でアキラに対し歪んだ愛情へとなっていったのですが。

ここでもしアキラがフィアナのように導く、もしくは接せる姿勢を見せていれば違った方向へといけたのではないか。
それをカレンが終盤になって伝えようとするのですが時既に遅しっという状況へとなってしまったっということです。

なのでカレンとエリスの関係もフィアナ、イプシロンと似ているのです。

さて、次回から第4部突入となります。遅筆となりますがよろしくお願いします

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。