コードギアスR2 ~去りゆく影~    作:三戦立ち

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第四部 去りゆく影
第39話


―1ヵ月後 蓬莱島―

 

「頼まれた物資はこれで全部だ」

 

黒の騎士団の蓬莱島で物資の運搬を終え貿易商の坂口耕司は2人の連れと共に玉城に確認してもらう。

 

「あぁ、これで全部だな」

 

「ではこれにサインを」

 

スーツ姿のシャーリーがニコッと笑い玉城に書類を渡す。彼女を顔を見て怪訝な表情をする。

 

「ん?あんた日本人じゃねぇな?」

 

「はい、ブリタニア人です」

 

「なっ!?おい、おやじさん!!」

 

ブリタニア人だと聞き声を荒げる玉城に坂口はため息を吐く。

 

「おいおい、何捲くし立ててんだよ」

 

「だってこの女!!」

 

「俺は黒の騎士団じゃねぇんだ。別にどんな人間を秘書にしたって俺の勝手だぜ」

 

「けどよ……」

 

すると少し小柄ながら黒い髪に黒いスーツの格好でサングラスをした人間が玉城の前に立塞がり、これ以上の追求を許さなかった。

 

「これもあんたの秘書かよ…?」

 

「こいつはSPみたいなもんだ。最近雇ったんだ」

 

SPからの鋭い眼光がサングラス越しからも伝わり玉城は…。

 

「わかった。もう言わねぇから」

 

そう言われSPは黙ったままさがって行った。

 

「お前ももうやれブリタニアとか言ってられねぇだろ?例の新しい皇帝のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアか。その皇帝がゼロだったんだろ?貴族制度をなくして、ナンバーズの解放してるそうじゃねぇか。財閥を解体ってのは俺にとっては痛い話だけどな。あぁいう連中にも商売相手いたからな……。

それで噂じゃあ超合衆国でもルルーシュ皇帝を支持するという声があるって話じゃねぇか」

 

「いやな。俺も実はあいつは俺達の味方じゃねぇかって思ってたんだ」

 

その言葉に坂口の後ろにいたSPが噴出し玉城はSPを睨んだ。

 

「なんださっきは俺の秘書に難癖つけてたくせに調子がいい奴だな。それで実際のところどうなんだ?」

 

坂口からの問いに玉城の表情が暗くなる。

 

「それが扇の奴がよ………アキラのどこにいるか血眼になって探すようになってな…」

 

アキラの名が出てSPの肩がピクッと反応する。SPの様子をシャーリーも横目で気づいた。

 

「1ヶ月前の神根島であいつの死体が見つからなかったから必ず生きてるって言ってよ…。藤堂や星刻達はそれどころじゃねぇってあいつら会議する度に喧嘩みたいになって俺最近あいつらと顔合わせるのが嫌でよぉ……」

 

「あの扇がな…いつ頃だ?」

 

「神根島からアキラのことを詳しく調べていたころだったか。異能生存体やらギアスやら何か何やら……」

 

段々玉城の愚痴のようになっていきSPとシャーリーは静かにその場を後にする。

 

SPはシャーリーの肩に触れると笑顔で頭を横に振るう。

 

「大丈夫。私は気にしてないから」

 

その顔を見てSPもサングラス越しであるが安堵の笑みを浮かべる。

少し歩いた先にラクシャータがこちらへ来るのに気づき2人は視線を外しながらすれ違う。

何かに気づいたのかラクシャータはすれ違った2人の後姿を見て怪訝な顔をするが特に気にすることなく坂口と玉城のところへと行く。

 

 

「物資はこれで全部?」

 

「おう、インドの連中からの武器、弾薬全部あるぞ」

 

「そう……。まぁこれだけ揃ってもあの子の代わりになるか……」

 

「くそぅ…。俺はまだ信じられねぇよ。カレンが死んじまったなんて」

 

「島から遺体が見つかってないから死んだとは言えないけど……もう1ヶ月だからねぇ……。紅蓮も大破しちゃって…修理するよりインドにあるあの機体(・・・・)のうち1機をいじっちゃったほうが早いかも……」

 

ラクシャータの言葉に坂口は顔色が悪くなった。

 

「ん?あんたどうしたの?」

 

「あっ??いっいやなんでもねぇよ。あっははは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャーリーとSPが貿易船へと戻り格納庫と入るとシャーリーと同じ坂口の秘書をしている和上千鶴がいた。

 

「あっ!ご苦労様。ありがとうねシャーリー。あたしの代わりに出てくれて。別の仕事で抜け出せなかったから」

 

「ううん。千鶴もお疲れ様」

 

「それから……カレン、その格好はもういいでしょ」

 

SPは頭を手で掴むと髪と思われたがそれはカツラで脱ぐとに紅く彩られた可憐な髪が現れサングラスを取る。

スーツを脱ぐとワイシャツの上2つのボタンを取り息を吐いた。

 

 

「ふぅ~。ちょっと千鶴、胸のさらしきついんだけど」

 

「何それ嫌味?あんたが黒の騎士団の様子みたいからってシャーリーと一緒に隠してあげたんだから。その胸でアキラを誘惑したんでしょ?」

 

「そっそんなわけないじゃん!」

 

2人のやり取りを見てシャーリーは苦笑いをする。

 

「んで、どうするの?」

 

さっきまでの口調が変わり真剣を帯びた口調で千鶴はカレンに問いかける。

 

「みんな心配してんでしょ」

 

「うん…そうだけど………」

 

カレンはこの1ヶ月に起こったことを思い返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

―1ヶ月前―

 

 

「うっ……うぅん…………?」

 

あれからどれくらい意識を失ったのだろうか。カレンは意識を目覚めさせると周囲を見渡すが自分と1人の女性の後姿が見えカレンはベッドから上半身を起こすと女性がベッドからの物音で振り返る。

 

「えっ……!?」

 

振り返えった女性の顔を見てカレンは驚きを隠せなかった。

 

「シャーリー………?」

 

髪型が変わっていたがシャーリーで間違いなかった。

 

「カレン!!」

 

シャーリーはカレンに駆け寄り強く抱き締める。

 

「よかった!あれから3日も目が醒めなかったから私……!」

 

「3日?」

 

カレンはふと自分の頭に触れると包帯が巻かれていることに気づいた。

 

「待ってて。すぐに坂口さんを呼んでくるから」

 

カレンを残しシャーリーは急いで部屋を出た。1人になったカレンは神根島で起こったことを思い返しアキラのことを思い出す。

 

「アキラ……!アキラはどこ!?」

「神根島で火山爆発のようなことが起こって島がなくなったって言うから。おやじさん、アキラが関わってるんじゃないかって心配して近海をうろついてたらあんたが乗っていた小型機を見つけたのよ」

 

「ホント、感謝してるよ。ここでシャーリーとまた会えるなんて思わなかった」

 

「私もまたカレンと会えて嬉しかったよ」

 

 

「それで黒の騎士団に帰そうと思ったけど……」

 

「黒の騎士団に戻ると自由が利かないから。それだとアキラの行方を探れないからここでお世話になったけど……」

 

「手掛かりなし。お手上げ状態」

 

ため息を吐き天井を見上げる千鶴。シャーリーは先程、玉城との会話を思い出した。

 

「あの玉城って人が言ってたけど黒の騎士団は……」

 

「命を取るまではないだろうけど。探し出して捕まえようとしてると思う。おそらくブリタニア、ルルーシュも何かしているはず」

 

「ルル………」

 

皇帝となったルルーシュ。彼の動向に不安に感じるシャーリーであったが。

 

「シャーリー、あいつがスザクとつるんで何を考えてるのか今はわからない」

 

「うん……だから怖いの。今のルルが私の知ってるルルなのかそれとも……。でも私は信じてる、信じたいの!」

 

「シャーリー……」

 

「おう、今帰ったぞ……って?何しんみりしてんだ」

 

用事を終えた坂口が戻ってきた。

 

「それでどうするんだカレン。戻るんなら今のうちだぞ」

 

「…………」

 

「……カレン」

 

黙り込むカレンにシャーリーが優しく寄り添う。

 

「前の私なら迷うことなく戻ってたはずでも……」

 

「いいのか?もうここへは戻れないぞ」

 

「ごめん。でも黒の騎士団とか日本とかそんな問題じゃなくなってる気がする。異能生存体やアキラの背後にいる異端者。私にはもうブリタニアを倒してそれで終わりとは思えない」

 

「……そうか。お前がそう思ってるなら好きにすればいいさ」

 

「でも勘違いしないで。矛盾してると思うけどみんなと戦うつもりはないから。……シャーリー、我侭かな私?」

 

 

「みんなそうじゃない。私やルル、アキラくんだって。誰かのためって言うけどそれは自分のためでもあると思うよ」

 

笑顔で答えるシャーリーに胸を撫で下ろすカレン。

 

「じゃあ。決まりだね!おやじさん!」

 

千鶴の一声で坂口は大きく頷く。

 

「よしそうと決まればすぐに出発だ!」

 

「出発ってどこへ?」

 

「カレン心配するな。うってつけの場所がある。俺達の行き先はエリア15、サドナ王国だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ブリタニア本国―

 

皇帝となったルルーシュはギアスで各皇族達を従わせ旧制度の廃止など行う中それに反対するもありこの日もジェレミアが旧貴族の討滅から帰還してきた。

 

 

「ジェレミア・ゴットバルト、ただ今、ローゼンクロイツ元伯爵の討滅より帰還致しました」

 

「ご苦労だった。しかし、我ながら人望がないな。こうも各地で貴族共が反乱を起こすとは。スザクも各地の反乱で転々としている」

 

 

「自分達の権利、利益が奪われるとなれば抵抗もするさ」

 

ジェレミアに続いて戻ってきたのはC.C.とアーニャ。

 

「C.C.。アーニャもご苦労だったな」

 

「記憶を戻してくれたから……」

 

「俺は何もしていない。礼を言うならジェレミアに言うんだな」

 

ルルーシュ達に保護されたアーニャはシャルルのギアスで改竄された記憶をジェレミアのギアスキャンセラーによって取り戻し今はルルーシュのもとでスザク達と行動を共にしている。

 

「C.C.、ワイズマンのことで何か手掛りは掴んだのか?」

 

「手掛かりになりそうなものは全て確認したが確実なものは見つからなかった」

 

アーニャはルルーシュにカメラを渡しこの数日記録された写真が写されている。

 

「本国の西部、原住民が住んでいた廃村を中心に調査したがな……あいにく原住民もシャルルが大量虐殺したおかげでどこにいるのか……」

 

「ワイズマンの痕跡を調査したシャルル達に何か見過ごしがないか改めて調べているが……。C.C.、ワイズマンと彼らはどんな関係だったんだ?」

 

「神と信者とでも言えるか。神は奇蹟を見せ、人はそれに驚愕し神に信仰し神は彼らを従わせた。私たちのギアスとかそんなもんじゃない。」

 

「お前達はワイズマン、異端者とどう戦ったんだ?」

 

「奴らを葬り去る手段としてあったのがアーカーシャーの剣だった。シャルルやマリアンヌのように消滅させた。だがそのアーカーシャーの剣も今はワイズマンの手中にあるのは皮肉だな」

 

 

「肝心のワイズマンの行方は知れずに100年以上経ち今再び表舞台に現したということか……。C.C.、奴等と戦ったお前なら今対抗する術はあるか?」

 

「ないな。ワイズマンはブリタニアだけじゃない。既にこの世界各地に根を張っている。お前達のゼロレクイエムも既に奴らに……」

 

「言うなっ!!」

 

C.C.が言おうとしたことにルルーシュは怒声でかき消した。

 

「例えワイズマンだろうとこのゼロレクイエムの邪魔をさせない。いや、奴らを潰さなければゼロレクイエムは完遂しない!C.C.、アキラの行方も調査しただろうな?」

 

「人使いの荒い奴だ。あいつも簡単に見つかるわけがない。ワイズマンと同じくらいに難しいぞ」

 

「神根島からは遺体は見つからなかった。だとすると島のシステムでどこかに転送されたのは間違いない。アイツがワイズマンに関係があるならアイツの近辺で何か起こる。おそらくシュナイゼルもそれをわかって俺と同じことをしているはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―数日後 エリア15 旧サドナ王国。ウラジオストク港―

 

冷たい風が吹き渡るウラジオストクへと降りた坂口一行は新生サドナ王国のリーダー、アレクセイと対面を果たす。

 

「お久しぶりです」

 

「久しぶりだなアレク。無事で何よりだ」

 

握手を交わすアレクセイと坂口。坂口の後ろには千鶴、シャーリー、カレンの3人が並んでいる。

 

「千鶴も元気そうじゃないか」

 

「逆にアレク。あんた痩せたんじゃないの?」

 

千鶴からの指摘にアレクセイは苦笑いをする。

 

「リーダーをやってると苦労するんだ。それでそっちの2人は?」

 

「シャーリー・フェネットです」

 

「紅月カレンです。あなたのことはアキラから聞いてます」

 

「紅月カレン!?では君が黒の騎士団の……」

 

「まぁ……今は色々あってここに居候って感じで……」

 

苦笑いをするカレンをアレクセイは驚きの顔を浮かべる。

 

「話には聞いていたが君のような若い子が黒の騎士団のエースだったのか……」

 

「アレク、早速だが……」

 

「あぁいいだろう。カレン、一緒に来てくれ」

 

アレクセイに連れられカレン達は港にある1つのドックへと入って行く。

中には白い迷彩で彩られたサザーランド、グロースター。新型のヴィンセント、ガレスも少数ながら並べられていた。

 

その中で男達の集団の中で1人の女性が混ざっていた。

 

「カレン、彼女はカティア。何か聞きたいことがあれば彼女に聞いてくれ」

 

「初めまして。よろしくカレン」

 

差し出されたカティアの手を握りカレンは握手する。

 

「君達がトウキョウで戦っていたときに奪取したのがこの基地だ。今は休戦中だから襲われる心配もない。ゆっくりしていってくれ」

 

「ありがとうございます」

 

「そんな堅苦しくしなくてもいい。これもアキラとの縁で会えたんだ。よろしく」

 

差し出された手を見てそのカレンは微笑んで握手を交わす。

 

「じゃあ、よろしくアレク」

 

 

 

 

 

「おうアレク!坂口のおやじから来たらしいな」

 

大きな声をあげてやってきたのはイゴールであった。

 

「久しぶりだな。なんだおやじ、少し会わないうちに妾を2人も増やしやがったのか?」

 

ニタニタと笑いながら坂口の首に手を回すイゴールに坂口はその手を払いのける。

 

「何人聞きの悪いこと言ってんだ!てめぇも相変わらずだな」

 

「はっははは!!」

 

「イゴール、彼女は紅月カレン。黒の騎士団、紅蓮のパイロットだ」

 

「紅月カレン!?じゃあお前がアキラの女か!?」

 

「……っ!? ひっ…否定はしないけどなんかそう言われると……」

 

イゴールからの直球的な指摘に顔を赤くするカレンをイゴールは下から上へと舐め回すように見る。

それを見て千鶴はイゴールの顔を抓る。

 

「イテテ…。何すんだ!?」

 

「あんたがカレンをやらしい目で見てるからでしょ!」

 

「黒の騎士団のエースって言うからどんな奴か気になっただけだ!悪かった!」

 

「ったく。ごめんねカレン。こいつ、酒と女には目がなくて。もし手を出そうとしたら骨一本くらい折っていいから」

 

「何言ってるんだ。俺は他人の女に手を出す趣味はねぇよ」

 

「あははっ……」

 

2人のやりとりを見て苦笑いをするカレン。そしてもうここまでだと坂口が割って入る。

 

 

 

「お前らもうここで終いだ。それでカレン早速だがお前に見てほしいもんがある」

 

「私に?」

 

坂口に連れられドックにあったコンテナの前につく。それは坂口の貨物船から運ばれたコンテナの1つで坂口はコンテナを開けるとそこにあったものにカレン驚愕した。

 

「紅蓮!?」

 

そこにあったのは自分の愛機である紅蓮。神根島で大破されたはずの紅蓮が膝をついていた。

 

「確かに紅蓮だがこいつは紅蓮壱式。お前が乗ってた紅蓮弐式のベースとなった機体だ」

 

「紅蓮壱式……」

 

 

「インドで作られたうちの1機でな。俺の部下に運ばせて蓬莱島で合流した時に受け取ってな。こいつの整備ができる場所がないか探してたらアレクから誘われてな」

 

「ちょっと何でずっと隠してたの!?」

 

「いやぁちょっと驚かせようと思ってな」

 

したり顔の坂口に千鶴は呆れていた。

カレンは紅蓮壱式に触れ細部を確認する。最大の武器であった輻射波動は右腕には装備されていなかった。

 

「武器もちゃんとある」

 

坂口はシートで覆われたものを見せる。そこには鋭利な爪を光らせる輻射波動機構が横たわっている。だがこの輻射波動機構、特徴の1つの5本の爪が3本になっている。

 

「…っと言ってもこいつは予備のパーツで作られた代用品だ。サザーランドやグロースター相手ならともかく……」

 

ここにある輻射波動機構はカレンが紅蓮弐式で使用していた応急品と同型で出力、性能は可翔式、聖天八極式と比べて大きく劣っている。

 

「それでその代わりってなんだが……」

 

もう一つシーツに覆われているものを取り出すとそれはアーミーナイフのように収納された武器であった。

 

「お前達が中華連邦に隠れていた時期にな紅蓮を修理するためにインドに送ったらしいんだ。その時に紅蓮をインドまで届けてくれたのがピースマーク。お前も名前くらいは聞いたことあるだろ傭兵の派遣会社みたいなとこだ。俺の商売相手でもあるんだがな。

 

そのピースマークにいる1人がこの紅蓮壱式をベースにした機体に乗ってんだがその機体に装備してるのがこいつだ。」

 

カレンはその武器に触れ細部に様々な武器が収納され複雑な構造になってるのがわかる。

 

「それでこいつはその試作品でな。ピースマークが持ってたのをいただいたってわけだ」

 

「………それでこいつを私に?」

 

「俺はそのつもりで用意した。だが使う使わないのはお前の自由だ」

 

 

 

 

アキラを助けたい。だがその術を持たない現状の自分ではこの紅蓮は現状打破するきっかけになるのかもしれない。

 

 

「やっぱり戦わないと道は開けない………っか」

 

ルルーシュのような戦略家でもない自分には幾多の戦場で身に付けたKMFの操縦スキルで今を戦い抜く。それがアキラに最も近づける手段であるとカレンは信じ…。

 

 

「アレク、ここにあるKMF、武器全部確認したい。それと……」

 

次々とアレクセイに要求するカレンを見てイゴールは感心する。

 

「顔に似合わず勇ましい女だ。あのギャップにアキラが惚れたかぁ」

 

「イゴール、手伝ってほしいんだけど。いいかな?」

 

「ほぉカレン、手伝ったら何してくれるんだ?」

 

ニタっと笑うイゴールにカレンは笑ってかえす。

 

「酒のお酌してあげるよ」

 

「……がっははは!!気に入ったぜカレン。楽しみにしてるぜ!」

 

差し出されたカレンの手を強く握り紅蓮壱式の作業へ取り掛かった。

 

 

 

 

 

その様子を坂口とアレクセイは見て微笑む。

 

「悪いなアレク、無理言って」

 

「気にしないでくれ。俺達もアキラのことが気掛かりだったんだ。そっちのほうも黒の騎士団の目を盗んであれをここまで運ぶのに苦労しただろう」

 

「インドの連中にはうまく誤魔化したがほぼ盗んだようなもんだからな。トウキョウでアキラが使ったKMFとは訳がちがう』

 

苦笑いする坂口に釣られ笑うアレクセイだが最近の世界情勢を思い表情が険しくなった。

 

「ゼロがいなくなったことで扇や星刻が代わって黒の騎士団を運営しているが……」

 

「ここへ行く前に蓬莱島に寄ったがどうも一枚岩じゃないらしいな」

 

「星刻からも同じ事言われた。自分たちを纏めていたゼロ、ルルーシュ皇帝を相手に戦えるのかと……」

 

「なら、ブリタニアと一戦……」

 

だがアレクセイは頭を横に振るう。

 

「どうだろうな。それも今向こうでは話の最中だろうな。歩み寄るか徹底抗戦か……。星刻からは超合集国に加盟し共に戦ってほしいと再三言われてるが断ってる」

 

「どうしてだ?黒の騎士団の力を借りればブリタニアからの独立も難しくはないぞ」

 

「それでは真の独立じゃない。超合衆国に加盟すれば安全保障担うことになる。依存した状態では独立を我々単独では難しくなる。結局、ブリタニアから超合衆国へ替わるだけだ」

 

 

「………お前、もしかしたらマクシム以上に面倒なことをやろうとしてるんじゃないのか?」

 

マクシムの名が出てアレクセイの顔が曇る。

 

「自分の手で彼を討ったんだ。それ相応の贖罪をしなければいけない。でなければ全ての戦いが無駄になる」

 

「一度潰れたもんを元に戻すには手間も時間もかかるわけかぁ……」

 

 

項垂れる坂口を見てアレクセイは苦笑いをする。

 

「こういう時は体を動かしたほうがいいか」

 

そう言うとアレクセイはカレン達の所へ向う。皆とKMFをいじる姿を見て坂口は微笑む。

 

 

「いいねぇ、若いって。さてあいつらから元気をもらうとするか」

 

坂口も皆と混じって作業に取り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜となり静まり返る作業場にカレンが1人紅蓮の改修作業を続けていた。

 

コツコツと足音が聞こえ振り返るとそこにシャーリーがポットを持って佇んでいた。

 

「もうみんな休んでるよ」

 

「シャーリー…」

 

「ほら、少し休憩したら」

 

コーヒーが注がれたカップを差し出す。

 

「うん。ありがとう」

 

カップを受け取りコーヒーを一口飲む。肌寒い体に暖かく染み込んでくる。

 

「ここ寒いね」

 

「カティアさんから聞いたけど雪が降るともっと寒いみたい」

 

「………」

 

それからしばらく2人の間に沈黙が流れるとカレンはカップを置いた。

 

「ごちそうさま。シャーリーはもう寝なよ。私はもう少しやるから」

 

工具を手にしまた作業に戻るカレンの姿にシャーリーは噴出す。

 

「えっ。なぁに、突然?」

 

シャーリーの笑い声に何か自分がおかしいことしたのか苦笑いをし振り返る。

 

「ごめん。アキラくんの事思い出して」

 

「アキラ?」

 

「アキラくんもこんな感じで夜中1人でやってたなって」

 

「ふふっ、そうか。あいつも……」

 

手に持ってた工具を見て微笑む。

 

「こういうのあいつに教えてもらったせいかな。KMFいじるの好きになっちゃって」

 

「アッシュフォード学園にいる時と全然違うね」

 

「もうやめてよぉ…」

 

2人揃って声をあげて笑う。こんな風に笑うのは久しぶりだとカレンは感じた。

 

「……カレン。絶対生きて帰ってね」

 

「シャーリー………」

 

「世界がどんなに変わっても私達は変わらないから。学園で待ってるよ。あっ!でも私もカレンのこと言えないか。私も死んだことになってるから」

 

 

その言葉を聞きカレンはシャーリーに言いたかったこと口に出そうとしたこことを吐き出そうとする。それはこの1ヶ月何度も言おうとしてその都度飲み込んだもの。

 

 

「シャーリー、私ね……あなたの「カレン、私ね」っ!?」

 

カレンが言おうとしたことを遮りシャーリーは続ける。

 

「私、今坂口さんや千鶴と一緒にいるの好きなの」

 

「えっ??」

 

「皆と一緒に世界中巡っていいところや悪いところを見た。ルルやカレン達はこんな世界を相手に戦ってたんだなって……」

 

「シャーリー……」

 

「だから必死に抗っているんだよね。自分だけじゃないみんなが幸せになるように」

 

「やめて……。私はシャーリーが思ってるような人間じゃないよ」

 

「…………」

 

「………ごめんね。今日はもうここまでにしようか」

 

気まずい雰囲気になりカレンはこの場から離れようとする。

 

「カレン、まえみたいに戻れないの?」

 

逃げるように歩もうとしたカレンの足が止まる。

 

「私はルルにひどいことされた。でも嫌いになれなかった。だからルルやカレンが帰ってくる時ちゃんと迎えたいってそう思ったの。許すとか許さないとかじゃない。カレン、帰ってきてね……お願い」

 

シャーリーに背を向けているカレンの背中は小刻みに揺れる。

 

「………おやすみ」

 

声が震えながらカレンはドッグを後にする。

 

「カレン……」

 

 

 

 

 

「ずるい……ずるいよ、シャーリー…」

 

肌寒い外を涙を流しながら歩くカレン。あんな言葉をかけられる資格は自分にはないのにシャーリーは待ってると言ってくれた。

 

「…ダメ!泣いちゃだめ」

 

シャーリーの気持ちに対して嬉しいのかそれとも彼女に対する罪悪感からなのか複雑に入り混じった感情が溢れ出そうな今、カレンは必死に涙を拭おうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―数日後 ブリタニア カナダ領―

 

カナダで行われた反乱分子の討伐を終えたスザクと別れロイド達特派はある洞窟の調査をしていた。

先の皇帝シャルルにより先住民は排除されワイズマンに関するものは全て破壊されたとしているがルルーシュは改めてスザク達に調査を命じたが………。

 

「ここもハズレみたいだね~」

 

「先の皇帝は余程ワイズマンを恐れていたのでしょうね」

 

「それもあっただろうけど恐れていたのはそのワイズマンと共にいた先住民達じゃないかなって思うよ」

 

「えっ?」

 

ロイドは洞窟に残された痕跡の一つを手に取り呟いた。

 

「ワイズマンだといっても1人だよ。そのたった1人を神のように崇めてさ、先代の皇帝の時代はまだ先住民が各地に点在していたんだ。そんな連中がワイズマンの名のもとで集まってごらんよ。そうなるとどうなるか君でもわかるだろ」

 

「まるでギアスみたいですね……」

 

「ホント、一体何者なんだろうねワイズマンって。興味を持ったシュナイゼル殿下の気持ちがわかるよ」

 

 

すると部下の1人がロイド達にある報告をしにやってきた。その話を聞きロイドの目の色が変わった。

 

「どうやら当たりが見つかったようだね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロイドが辿り着いたのは先程いた洞窟から数キロと離れていないところで洞窟前はサザーランド数機、兵士達で固められていた。その洞窟の入り口は大きな岩が半分覆い人目に晒さないように隠されていた。

 

洞窟に入ると既にスザク達が眩い照明で照らされた洞窟を調査していた。

 

 

 

 

 

 

 

「ロイドさんのところは?」

 

「はずれ。ここは当たりらしいけど?」

 

「まだわかりません。でもこれまでとは違うようです。先の皇帝はここに住んでいた先住民を粛清しワイズマンの痕跡を全て破壊したようですがここだけ遁れたみたいです」

 

スザクの言うようにここの遺跡に破壊されたような痕跡は見られなかった。今まで調査した遺跡と違い階段を降りると巨大な建造物が立ち並び当時のまま残されているようである。

 

「なら収穫はありそうだね♪」

 

ロイドは嬉しそうに辺りを捜索を開始した。だがスザクは表情を暗く落としていた。

 

(ここ1ヶ月、本国を中心に世界各地にあるワイズマンの遺跡を調査したが有力な情報がないままだ………。ルルーシュ、時間がない。ゼロレクイエムは………)

 

「早くここから出るんだ!!」

 

何者かの大きな声が洞窟に響きスザク達は入り口のほうを見ると杖を持った老人と中年の男性2人がいた。

 

その3人を兵士達が取り押さえていた。

 

「申し訳ありません!急に現れて…」

 

「入ってはいかん!!ここに入るのは禁じられている!!」

 

「じいさん、もう帰ろう。こん人達は軍人さんだ」

 

連れの男性2人が老人を帰そうとする。スザクは兵士に3人を放すよう命じる。

 

「ご老人、ここの遺跡について何か知っているのですか?」

 

「ここは我々一族に伝わる負の遺産。一族が滅されるきっかけとなった神の遺物が眠っている」

 

「神の……遺物?」

 

老人の言葉に引っかかり詳しく聞こうとした時自分の名を呼ぶ兵士の声にスザクは洞窟の奥へと降りていった。

 

 

「こっ…これを見てください!!」

 

洞窟の下部に降りスザクは驚愕の表情をする。

 

「これはっ!!!」

 

そこにあったのは神根島でアキラが搭乗したレグジオネータが3機立ち並んでいた。

 

「レグジオネータ!!」

 

スザクは3機の前に立ち確認する。3機とも損傷は見られない。

 

「これが神の遺物?」

 

セシルは先程の老人の話から出た言葉を思い出す。

 

「あはっ♪こんな完璧な状態で保存されていなんて。すぐに回収して……」

 

レグジオネータを見て嬉しそうにロイドはレグジオネータに近づき触れようとした時

機体のコックピットから不気味なラインが浮かび上がるのをスザクは気づいた。

 

「ロイドさん!!」

 

レグジオネータの脚が上がりロイドを踏み潰そうと脚を振り下ろす。

 

「へっ!?」

 

突如動きだしたレグジオネータにロイドは唖然としそれを見たスザクが飛び込みロイドを抱え横へと回避した。標的が避けレグジオネータは一歩一歩と前進し他の2機も起動し動き出した。

 

「っ!? みんな、ここを出るんだ!!」

 

スザクの大きな叫び声に洞窟にいた者達は一斉に階段を駆け上った。

 

「あなた達も早く!!」

 

スザクに促され3人も急ぎ遺跡から出た。

 

「セシルさん!ランスロットを!!」

 

セシルはトレーラーに乗り込みランスロットの起動準備を開始する。

 

洞窟を出るとレグジオネータが岩場から現れたのを見てスザクはランスロットに乗り込む。

 

 

 

「あぁ……目覚めてしまった。神の遺物………世界が滅びる……」

 

レグジオネータの姿を見て老人は声を震わせた。

 

「エナジーフィラー稼動良好。発進可能」

 

(レグジオネータ……果たしてこのランスロットでどこまで戦えるか)

 

まだ詳細が明らかにされてないレグジオネータを相手にスザクは新型ランスロットアルビオンを駆り対峙する。




今回も読んでいただきありがとうございます。今回はアキラを登場させずにやってみようと思い執筆しました。そして双貌のオズをクロスさせました。

原作ではカレン達と共闘しましたがこの作品の都合上少し内容を変えました。

原作、白炎が装備している七式統合兵装右腕部を登場させましたが試作品としてなので武装の数も少なく3つだけとしました。

ですので武装も原作とは変わるので詳細は次回ということで。

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