何故、私の前に現れる。
専用のグロースターに乗り込みエリスは今アキラと対峙していた。
アキラとは何度闘ったのだろうか、その度に胸が締め付けられる苦しみがくる。
(まただ………何故あの男がいる時に。)
エリスは戸惑いながらもアキラのサザーランドに銃口を向けた。
G-1ベースのモニター越しから井ノ本達、そしてスザクが戦況を見守っていた。
「兄さん、始まったよ。」
「さて、元レッド・ショルダー、すぐに死なないでくれよ。っでないとデータもとれないからさ。」
ドリーはふとスザクのほうを見た。
「確かナイトオブセブンはあの男と闘った事があると聞いてますが流崎アキラ、あなたから見てあの男はどれくらいの腕前ですか?」
「元特殊部隊出身だけはあり戦闘のプロで一瞬の油断もできない。卓越する能力はないが弱点はない。 」
「ふふん、じゃあエリスのいい相手になるかもね。」
廃工場の中でアキラとエリスの戦闘が開始された。
アキラはライフルで迎撃するがエリスは素早い動きで回避する。エリスはアキラに接近しようとしたがアキラは廃工場の天井を撃ち、瓦礫が降りそそぎエリスは回避できたがアキラは接近を許さなかった。
瓦礫が落下してきたことでエリスはアキラの姿を見失った。
瓦礫によって発生した白煙で周りがよく見えなかった。エリスは周囲を警戒する中背後に気配を感じ振り向いた瞬間ライフルの銃弾がエリスを襲った。
エリスは後退し物陰に隠れた。直撃はもらわなかったが銃撃で自分のライフルが弾かれ失ってしまった。
アキラも深追いはせず隠れエリスの様子を窺った。接近戦用の装備をしていない自分の機体で接近戦を挑むのは無謀であり今はこうして隠れながら闘うことを選んだ。
白煙が晴れるのを待ちアキラはエリスが後退したと思われる場所に銃口を向けたがそこにはエリスのグロースターはいなかった。
アキラは近くにいないか周りを見渡した。その時小さな瓦礫がアキラの近くに落ちてきた。
「まさか!?」
アキラは天井を見上げそこにはスラッシュハーケンで天井にぶら下っているエリスのグロースターがいた。エリスはMVSを構えアキラの所へ落下していった。
MVSの一刀を瞬時にかわし距離をとろうとするがエリスは迂回し背後をとろうとしたがグロースターの反応動作がぎこちなくなり動きが遅れてしまった。
その隙にアキラはライフルで銃撃しグロースターの片腕を損傷させた。
エリスは先程アキラによって落とされたライフルが近くにあるのを気づきライフルを拾いアキラに向け撃った。
アキラは回避したが背後にあった機器に銃弾が命中し爆発を起こした。
「どうしたの?」
モニターから見守っていたジョディが部下に問うた。
「どうやら大型ボイラーが爆発を起こしたようでまだ装置が生きていたようです。」
「くぅ、こんな時に。」
他の箇所に誘爆し辺りが爆発を起こしている中2人はまで戦闘を続けていたが爆発の影響で地盤が崩れアキラとエリスがいた箇所が沈下した。
「っ!?」
2人は地下へと落ちてしまった。
「被害が拡大2機の所在も不明。」
「くぅ~、仕方がないテストは中止、すぐに消火活動に移れ。」
ドリーの指示で基地から応援を呼ぶことになった。
「あれ?なんか大変なことになっちゃったね。」
戦闘を見ていた特派のロイドは隣にいるセシルに語りかけた。スザクはというと廃工場を黙って見つめたままであった。
地下へと落下したエリスはモニターで辺りを確認し今自分は地下にいると理解し機体を動かそうとしたが両腕とも破損し脚も瓦礫で挟まり動けなかった。
コックピットから出たエリスはアキラがどこにいるのか探った。
少し離れたところにアキラのサザーランドがうつ伏せになって倒れていた。エリスは近づきコックピットハッチのボタンを押しコックピットが開いた。
中には気絶しているのかアキラがぐったりした様子で意識もないように見える。
徐にエリスはアキラの肩に触れ様子を探ろうとした時
「動くな。」
エリスの腰にあるホルスターの銃をアキラは奪いエリスに向けた。
「っ!?」
地上では消火活動が急ピッチで行われており、その様子を井ノ本は黙って見つめていたが近くに人の気配し振り向くとスザクがそこにいた。
「奴とは同じ学校にいたと聞く。」
「思い出したくもありません。」
「ふふっ、見てみたかったものだ。闘うこと以外に生きるすべを知らなかった奴がどのように変わったのかを。」
「変わった? あなたが彼を陽炎に入れたと聞きます。」
「私は奴にあらゆる戦闘技術を叩き込ませ究極の兵士にさせた。だがここで再会した時奴の目には生気が漲っていた。今の奴は生を渇望している。」
「生きたい………。」
「あんな流崎ははじめてみた。この1年奴に何を影響を与えたのか……。」
スザクはカレンのことが頭を過った。
「だが今、流崎はエリスと戦闘に入ってます。いくら彼でもPSである彼女と1対1で勝てるとは…。」
「君はそう思うのかね。」
井ノ本の言葉にスザクは怪訝な表情を浮かべた。
「エリスはまだ未完成だ。故に私は不安だ。彼女が奴に殺されているのではないかと。」
「えっ………?」
地下へと落ちてしまったアキラは出口を探していた。その近くには後ろ手を縛られ座っているエリスがいた。
「…………。」
アキラは黙ってエリスに近づいた。
「出口を探したい。お前も手伝え。」
「……私を恐れないのか?」
「その気になればそんなロープ簡単に外せるだろ。」
アキラはエリスを縛っていたロープを解いた。
「…………。」
黙ったままのエリスを置いてアキラは瓦礫を退かした。
アキラの背中を見てエリスも黙って作業を手伝った。そんな彼女にアキラは何も言うことなく黙って作業を続けた。
地上ではジョディがドリーに捜索隊からの報告を伝えた。
「兄さん、捜索隊が2人を発見したみたいだよ。」
「救助したのか?」
「生体反応が2つ見つかって今、そこの位置を掘り起こしているの。」
「へぇ、だが閉塞空間で敵といて彼女がどのような反応を起こすのか調べてみたいね。」
「ふふっ、なんだ兄さんも私と同じこと考えていたんだ。」
ジョディは子供のように笑った。
「っ!……静かにしろ!」
アキラと一緒に瓦礫を退かしていたエリスが声をあげた。
「…………音がする。味方が近くにいる。」
「わかるのか?」
「私の聴力は遠くまで聞こえる。」
「便利なもんだなPSは。」
「ここでじっとしていればいずれ見つけてくれる。」
エリスはそう言うがアキラは手を休まずに作業を続けた。
「俺はこのままとんずらさせてもらう。」
「逃げられると思うのか?」
「ここから風が吹いている。ならどこかへ通じているはずだ。」
そう言うアキラをエリスはただ黙っているだけであった。
「………殺さないのか?」
「…………。」
黙っているエリスにアキラは無視したがエリスが重い口を開いた。
「………私は常人を遥かに超えた究極の兵士、戦うために生まれた。PSである事に私は誇りに思っている。」
その言葉にアキラは振り向いた。
「だが心の中にいつもお前がいた。カゴシマでの戦いでお前と会った時初めてのような気がしなかった。初めてなのに………お前の事が頭から離れなれない。」
アキラは若干戸惑いを見せた。彼女の言うとおりエリスとはこうして面を向かって話すのは初めてである。
そんな彼女の言葉にどのように返せばいいのかアキラは迷った。
「………だから私はお前を殺せない。殺したくない。」
「だったらほっといてくれ。」
「だが戦場でお前に会う。何故お前は戦う?」
「………前の俺だったらその問いに答えられなかったかもな。」
「仲間の為?」
「それもある。だが………。」
アキラはどこか躊躇する顔をしたが口を開いた。
「生きて……会いたい人がいる。」
「会いたい?」
「俺に生きる目的をくれた。あいつがいるから今こうして戦える。」
その時、小さな揺れが発生し頭上から小石が落ちてきた。
「伏せろ!」
アキラはエリスの体を伏せさせた。揺れは収まり地上の捜索部隊が近くまで来ていることがわかった。
それと先程の揺れでアキラが瓦礫を退かしていた箇所に人1人が入れる穴ができた。
アキラはその穴から風が吹き外に通じているのだろうと思った。
「お別れだな。お前は地上の味方が拾ってくれる。」
「待ってくれ!」
「っ?」
「一緒に……一緒にいてくれ。私はお前の事をもっと知りたい。どんな人間か、私の……傍に。」
エリスはアキラの腕を掴んだがアキラは反射的にその手を振り払ってしまった。
「俺はお前の敵……それだけだ。」
「違う!私は……。」
その時、頭上から大量の土砂が落ちてきて2人を隔てる形になった。アキラはそのまま穴の中へ入っていった。
「アキラ!!」
去っていくアキラの背中を見てエリスは大きな声で叫んだ。
『PS発見、身体に異常なし。』
「流崎アキラは?」
『現在、不明です。PSに聞いてますがかなり憔悴しているようで答えません。』
「体が限界にきているんじゃない兄さん?」
「うん……エリスをすぐに回収してこっちへ運んでくれ。残りは流崎アキラの捜索を。」
地上へとあがり一面は吹雪で覆われていた。エリスは先程アキラとの話が1時間、2時間と長く感じていた。
『今、捕虜が通過したと思われる通路を通ってますが土砂が崩れて塞がれてます。捕虜の姿も見えません。』
「っと言うことです。閣下、如何致しましょう?」
「……すぐに捜索部隊を出し見つけて殺せ。」
「それは無理です。」
井ノ本の指示に一緒に同席していたマクシムは異議を唱えた。
「吹雪が激しくなっています。今、部隊を動かせば戻れなくなります。」
「捕虜を見過ごせと?」
「ここから脱出したとしても首都のヤールンまで離れている。あとは自然が彼を殺す。」
「………。」
そのまま、井ノ本はブリッジから出て行った。
「どうしたのです。」
井ノ本は振り向くとそこにはスザクがいた。
「何を急いでるのです。何故、彼にそこまで…?」
「君はこの吹雪をどう思う?」
スザクは井ノ本の問いの意味が分からなかった。この模擬戦開始時より吹雪は激しくなったのだがそれとアキラとどう関係があるのか。
「出来すぎないか?このタイミングで吹雪の発生、この悪天候。これが自然に発生したものと思うかね?」
「仰っている意味が……。」
「私はそうは思わない。そして奴は必ず生きて帰り再び我々の前に現れる。」
「あいつは満足な装備もしていない。生存できるはずがない!」
「そう思える君が羨ましい。それ以上悩むことはないのだから。」
(奴の……流崎アキラに何が…?)
スザクは井ノ本がアキラを恐れているように見えアキラの存在の不気味さを感じるようになった。
「ハァハァハァ。」
地上に出たアキラはどこへ出たのかも分からず己の勘を頼りに吹雪の中を進んでいた。途中拾った穴の開いた古びた防寒服をはおり寒さを凌ごうとした。 幹線道路に沿って行こうとするがどの道も雪で覆われ道が消えてしまっていた。
歩き始めてどれくらい時間が経ったのだろうか。自分がどこにいるのか周りを見渡そうとした時アキラはその光景に驚愕した。
(な、何も見えない!?)
視界が白一色となりどの方向に歩いているのか、凹凸などの地形の起伏がどうなっているのかまったく分からなくなった。
ホワイトアウト現象である。
今、自分がどこにいるのかどこに行けばいいのかわからず上下感覚が麻痺したアキラは身動きできずその場に蹲った。
意識を失いかけアキラは慌てて体を起こし歩き続けようとした時歩いていた地盤が崩れだした。
「うおっ!?」
足場が崩れアキラは転落してしまった。長い斜面を落ちたアキラは起き上がろうとするが体中に痛みがはしり倒れてしまった。
その時前方の離れたところから明かりらしきものが見えこちらへ近づいているのがわかった。 アキラは声をあげようとするが思うように声が出なかった。
3人の集団がアキラを囲み様子を伺い皆でアキラを運び、スノーモービルに乗せた。
アキラは緊張の糸が途切れたように意識を失った。
スザクは1人休憩室にいると、エリスがスザクの隣に座った。
「もう、大丈夫なのかい?」
「聞きたいことがある。」
「聞きたいこと?」
「流崎アキラ、彼の事を。」
「流崎アキラ……。」
エリスは真剣な眼差しをスザクにむけた。
「教えて欲しい、彼がどんな人間なのか、何故戦うのか!枢木スザク、お前が知っていることを話してくれ。私は……もっと彼の事を知りたい!」
「君は………。」
スザクはエリスがまるで子供がせがむように見え戸惑いを浮かべていた。
-エリス、俺と同じ戦場でしか生きられない女。彼女は俺を必要としていた。そんな彼女の想いを俺は受け止めることができなかった。
これが俺とエリスを苦しめることになることを俺はまだ知らなかった。-
アキラとエリスの関係はテイタニアやイプシロンとはちょっと違うんです。
ネタばれになるので言えませんが2人はボトムズのある2人のキャラの関係をモデルにしてます。