ではどうぞ
2日前の吹雪が収まり太陽の陽がさしておりその中を2機のヘリが飛んでいた。
『目標ポイントは南東20キロ、収容する隊員は民間人と同行している。』
「了解、目標ポイントまで向かう。」
ヘリが目標のポイントには数名の民間人と共に疲れきった表情のアキラが座り込んでいた。
「ほう…では奴は生きているのだな。…………わかった、こちらへ帰還次第すぐに奴の治療をあたらせろ。」
部下の報告を聞いたトラウトマンは若干驚きの顔をしたが口元はニヤっとほくそ笑んでいた。
「ふっふふ、シュナイゼル殿下が夢中になるのも無理はない。奴の力は本物だ。奴を利用すれば俺も……。」
「殿下、流崎アキラが政府軍に保護されたようです。」
同様の報告をシュナイゼルも受けた。
「そうか、………パーフェクトソルジャーだったかな。エリスって子との戦いから抜け出し偶然、吹雪で立ち往生していた民間人に保護される。ますます面白いよ彼は。」
「そうでしょうか? 私から見ればただの運のいい男にしか見えませんが……。」
「そう思うかいカノン。」
シュナイゼルの右手にはCDケースが握られていた。
「そのデータも信憑性があるかどうか………不死の人間なんてありえませんよ。井ノ本の戯言に過ぎないと思いますが……。」
「ふっふふ、そうか……ならカノン、たまには火薬の臭いを嗅いでみるのはどうかな?」
「サドナ王国にですか?出向くのは構いませんが流崎アキラの動向を確認しろと?」
「直接その目で確認するといい。それと最近、鼠がアキラのまわりを嗅ぎまわっているようだね。」
「…………なるほど、お気づきになっていたのですね。わかりました。では何かあれば……。」
「頼むよ、カノン。」
「イエス・ユア・ハイネス。」
「………うっ。」
軍から保護されてから深い眠りに入っていたアキラはゆっくりと目を開いた。数日前吹雪に晒されていた時に比べればここの病室は心地のよい暖かさであった。
「あっ!? 目覚めた!」
ヒョイッと自分の顔をのぞく様に見た女にアキラは見覚えがあった。
「……飲み屋の女か。」
「何飲み屋の女って!レイナって言ったでしょ!名刺渡したでしょ。」
アキラは上半身を起こした。
「………それでお前がなんでここにいるんだ?」
「はぁ~相変わらずね。心配して見て来たけど安心したわ。 ちょっと待っててねみんなを呼んでくるから。」
レイナは病室を出てアキラは1人になりまた体を倒した。 イゴール達が来ればまた騒がしくなるだろう。皆とまた再会できることに喜びを感じている自分がいた。
病室の外から複数の足音が聞こえる。アレクセイ達がもう来たのかと思ったが部屋に入ってきたのは予想外の人物であった。
「ふっ、まさか生きていたとはな。」
トニー率いる数人の部下が銃を片手に入ってきた。
「………どうやらお見舞いに来たようじゃなさそうだな。」
「察しがいいな。貴様を拘束させてもらう。」
「また、スパイだの言うんじゃないだろうな?」
「ふっふふ、違うな。まぁ、貴様が裏で通じていようがもう関係ない。」
「……どういう意味だ?」
「さぁ、こいつを連れて行け!」
-同日、ブリタニア ハバロフスク軍事基地-
ロイド達特派はブリタニア本国へ帰国する準備をしていた。共に帰国するスザクは1人、外の景色を眺めていた。
「ご足労かけたな、ナイトオブセブン。」
声が聞こえた方向へ振り向くとそこには井ノ本1人が立っていた。
「エリア11にいる彼には会わないのか?」
「そのつもりはありません、奴には皇帝の力で………。」
「そうだったな………。」
「あなたに聞きたいことがある。」
スザクは鋭い眼差しを井ノ本に向けた。
「あなたは何を知っている?」
その問いに井ノ本は微笑んだ。
「どういう意味かな?」
スザクがあの男を皇帝に差し出した時井ノ本が同席していた。皇帝シャルルのあの力に驚くことなく平然とした様子でいた。
「あなたは皇帝陛下とどのような関係で?」
「……ただの友人だ。」
「友人?日本人のあなたが!?」
「ふっふふふ、それを知って彼の弱みでも知ろうと?」
「ふざけないでください!!」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。君に教えたいことがあって来た。」
「!?」
「流崎が救助されサドナ王国にいることが確認された。」
「救助された!? あの吹雪の中を!」
「偶然、民間人が通りかかったようだ。」
「しかし、サドナ王国はもう……。」
そう言うとスザクは井ノ本の横を通り過ぎた。
「君に忠告しておこう。」
井ノ本の一言でスザクの足が止まった。
「奴は必ずまた君のまえに姿を現す。気をつけることだな。」
「……………。」
スザクは黙ったまま井ノ本から離れていった。
(奴は必ずエリア11に戻ってくる。)
井ノ本の手にはある1枚の写真が握られていた。
「ふっふふ、無事に帰還できてよかったな。」
「帰還した人間に対してこの仕打ちはどうかと思うが……。」
今アキラは両手を手錠で繋がれて義兵団のトラウトマン将軍と相対している。
「残念だが貴様をブリタニアに引き渡す手筈を取っている。」
後ろからトニーが悪態をつくように告げた。
「引き渡す?………そうか、あんたブリタニアと通じていたんだな。」
「我々はサドナ王国の内情を調べるために送り込まれた。そんな時お前が来たのだ。だが、この国はもう終わりだ。」
「……どういうことだ?」
「おい、どこにいるんだアキラは?」
その頃アレクセイ、岸谷を除くイゴール達は病院にいたがアキラの姿が消えていなくなり皆で探している中レイナが走って戻ってきた。
「ここの看護師に聞いたけど軍の人に連れて行かれたみたいよ。」
「軍?義兵団か?だがなんでだ。体の回復を待って事情聴取するはずだよな? ……ってジェノムお前何見てんだ?」
ジェノムは外の様子を見ていた。
「………外が騒がしい。」
イゴールも外を見ていた。軍の小隊らしき集団が動き回っていたがその格好に違和感を覚えた。
「お、おいあいつらは…!」
その時アレクセイが息を切らして病院に入っていった。
「ア、アレク!」
「すぐにここを出て身を隠せ!」
「ちょっと待てよ。どうしたんだ?」
「政府が……ブリタニアに掌握された!」
「サドナ王国は恭順派によって全て掌握されじきにブリタニアの部隊が首都に入り新たなエリアに編入される。この国の歴史も終わりだ。」
トラウトマンは煙草に煙を吐いた。
「流崎、またブリタニアに逆戻りっと言うことだ。お前を引き渡せば俺はブリタニアの軍人として迎え入れてくれることになっている。くっくく。」
トニーはこれを機にブリタニアに入り出世しようと目論んだ。元々サドナ王国に対して忠誠心もなかった彼はトラウトマンからこの話を持ちかけられふたつ返事で乗ったのである。
「さぁ、流崎我々と来てもらおうか。」
部下2名が入ってきてアキラを連行した。
その頃、アレクセイ達は義兵団基地の近くで様子を伺っていた。
「ブリタニア軍が占拠している。もう完全に義兵団は支配化に置かれたな。」
「けどよアレク、どうするつもりだ?いつまでも離れてたら怪しまれるぞ。」
「あたしもよ!なんであたしまであんた達と一緒に………。」
「イレブンは強制収容所に送られているんだ。今見つかったら連行されるぞ。あんな風にな。」
少し離れたところでイレブンらしき女性と子供が軍の人間達に無理矢理トラックに入れられどこかで連れて行かれているのを見かけた。
「それにアキラのことも気になる。彼は今どこに。」
その時、茂みの奥から足音しアレク達は身構えたが現れたのはジェノムであった。
「ジェノム、どうだった街の様子は?」
「ブリタニアの軍がまわりをうろついている。」
「んでどうするアレク?」
「………俺は義兵団を抜ける。」
「逃亡は重罪だぞ!」
「俺はブリタニアを国から追い出すために戦ってきたんだ。今更、奴らの傘下に入るつもりはない。アキラも助ける、あいつをこのままほっとくわけにはいかない。」
「へっへへ、仕方ねぇな。1人より2人でやるほうが成功できるだろ。」
「2人じゃない、3人だ。」
ジェノムはそっとアレクセイの肩に手を置いた。
「お前達……。」
「なぁに食い口はいくらでもあるさ。」
「ちょっと、あたしはどうすりゃいいの!!捕まるのはゴメンだよ!」
「もう帰るところねぇんだろ。だったら一緒についてこい。」
「なんで、あんた達に付き合わないといけないのよ!」
皆で話し合っている中この場にはいないはずの人物の声が聞こえた。
「おうおう、なんか騒がしいと思ったらお馴染みの顔ぶれが揃いもそろって。」
聞き馴染みの声にアレクセイは声が聞こえたほうを振り向いた。
「あ、あなたは!?」
アキラを乗せた護送車、トラウトマン達を乗せた車両をKMF部隊が囲み、周囲を警戒していた。
「将軍、義兵団基地からの連絡で岸谷晋二が将軍に会いたいと…。」
「イレブンが…今はそれどころではない。追い払え。」
トラウトマンは外の雪の様子を見た。これ以上降り積もれば進行の妨げになるからである。
一方、アキラは3人の兵士の監視の下一言も喋らず黙ったままであった。
その時、最前列を走っていた車両の前に1機のサザーランドが現れた。
「なんだあのサザーランドは? おい、どこの部隊の者だ?言え!」
兵士の1人が告げたがその直後サザーランドはライフルをこちらへ向け発砲した。
大きな爆発音が後方にいたトラウトマンにも聞こえた。
「何事だ!?」
「て、敵襲です!」
「何、一体どこの奴らが?」
「わかりません、将軍、今は退避してください!」
「くっ…、流崎はどこだ?」
「な、なんだ!?」
「外が騒がしいぞ!」
アキラが乗っていた車両も立ち往生し周りにの兵士も外の様子を伺っていた。
アキラはその隙に兵士の1人の背後を取り首を絞め、ライフルを奪う。
「こっこいつ!」
アキラの動きに気づいた1人がライフルを構えたが、アキラはライフルで兵士を殴打し倒した。
外へ出ると突然の襲撃により混乱していた。アキラのまえに1機のサザーランドが現れアキラはライフルを構えた。
『アキラ!? 無事か?』
「その声、アレクか?」
『アキラ、腕に乗れ!こちらアレクセイ、アキラを確保!全員退却!!』
アキラを腕に乗せたアレクセイ、そしてイゴール、ジェノムは早々にその場から退却をした。
「だ、誰だ? ブリタニアとは思えんが……。」
「将軍、基地からの連絡でアレクセイ・ヤゾフ、イゴール・グリンカ、ジェノム・ロイ以下3名の所在が不明との連絡が…。」
「まさか……奴らが!」
アキラ達は雪で埋もれた廃墟の中にいた。
「はっはは!アキラ、これでトンモでの借りは返したぜ。」
「あぁ……すまない。だがどうやって居場所を……。」
「俺が見つけたのさ。」
大型トレーラーの運転席から1人の中年の男性が降りてきた。
「とっつあん!!」
「はっはは、アキラ無事で何よりだ。こいつは軍のものだからな。無線を傍受してたらお前を護送しているって聞いたんだ。」
「いつ戻ってきた?」
「まぁいろいろあってな。今戻ってきたところだ。」
「皆、ここもいつ発見されるか分からない。すぐに出立しよう。」
「アレク、行くあてでもあるのかよ?」
「まかせてくれイゴール、心当たりがある。」
皆、大型トレーラーに乗り込み、アキラはもう1人いることに気づいた。
「よかった~、無事だったんだ。」
レイナが座っていた。
「…………どうしてお前がいる?」
アキラのその言葉にレイナはガクッと肩を落とした。
「あんた達に巻き込まれてこんなところまで来たのよ。あんたが連れて行かれるって聞いたから心配したけど心配して損した。」
「アレク、お前達はどうして………。」
「それは俺が代わりに話そう。俺がハバロフスクに着いて商売相手を通じて色々聞いたんだがな、ブリタニアの奴らが王国の政府恭順派と共謀して政府を乗っ取ろうと共謀していたんだ。」
「それでこの騒ぎか。」
「ところが今度は俺の商売相手の役人や軍の御偉い共が次々に逮捕されたんだ。政府や義兵団に金や武器弾薬の横流しがバレてしまってな。危く俺も捕まるところだった。それで連中はトンモに送られたんだ。」
「トンモ!?」
「あぁ、そうだ。俺達は奴らの処理の手伝いをさせられたんだ。」
アレクセイの考えの通りあの作戦は逮捕した要人達をおとりにして自分達を誘い込んだ罠だったのだ。
(だがだとすればどんな目的で俺たちを……?)
「んでこいつは俺が逃げる時、こんなことがあるんじゃねぇかと思って商売相手から譲ってもらったもんだ。サザーランドも揃って武器も最新式のもんだ。」
「全てはとっつあんの思惑通りって訳か。」
「がっははは!!義兵団のトラウトマンもグルだったからな。お前の事だ派手にドンパチやるんじゃねぇかって思ってな。こっそり入国してみたら偶然アレク達に会ってな。お前も捕虜になって逃げて生きて帰れたんだ。お互い悪運が強いな。それとお前達に会う前に知ったことだがな、占領下に入ったサドナ王国に元国王のマクシムが来ているみたいだ。」
「国王が!?」
アレクセイは驚愕の顔を浮かべた。坂口は車に搭載してあるテレビをつけた。画面から映し出されたのはマクシムであった。
『今日よりこのサドナ王国は神聖ブリタニア帝国により統治されることになった。国の名称もエリア15とし既存する法律、文化全てを破棄し神聖ブリタニア帝国の名のもとに新しい国家として生まれ変わることになる。それに反対する者達は帝国に対する反逆と捉え逮捕、鎮圧の対象とする……。』
この会見をみていたアレクセイはワナワナと身を震わせて拳も強く握り締めていた。
「あなたが……あなたが目指していた国とはこの事だったのですか!?強者に服従し自分達の国、誇りを捨てることが………!!」
アレクセイは声を押し殺し涙を流している。この姿に皆誰も声をかけることができなかった。
-サドナ王国、官邸-
「国王、お待ちしておりました。」
会見を終えたマクシムを迎えたのは政府の恭順派の官僚たちであった。
「首都の混乱も収まりつつあります。抗戦派共を押さえてあります。」
「それ以外に何かあったか?」
「はっ、それが義兵団の中から脱走兵が数名おり、連中は連行される途中の流崎アキラを乗せた護送車を襲撃し共に逃亡したようです。 脱走兵の名はイゴール・グリンカ、ジェノム・ロイ、アレクセイ・ヤゾフです。」
その時マクシムの表情が一瞬強張った。
「……そうか、では流崎アキラ、その3人を指名手配にし捜索をさせるんだ。」
「はっ!」
官僚達の姿が消え1人になり窓から町を眺めた。
(アレク……お前はやはり。)
-ブリタニア ハバロフスク基地-
「閣下、準備は整いました。」
「うむ。」
井ノ本は出立の準備をしていた。サドナ王国から更に北、北極の近くにてある場所へと行くためである。
「明日にはエリスの専用機と新たに部隊に配備させる予定の試作機が来る。お前達は流崎達が動きが確認次第行動に移せ。」
ここの陽炎部隊指揮官に今後の指揮を任せることにし井ノ本は基地を経つことにした。
「閣下。」
「エリスか……。」
「お聞きしたいことが……。」
「何だ?」
「何故、アムール川支流の周りに配置するのです?」
「流崎が現れるからだ。」
「何故言い切れるのです!?」
同じ頃首都ヤールンから数百キロ離れた古びた小屋にアキラ達はここでこれからの事について話していたがアキラは坂口から少し話があると外へと呼び出された。
外は雪が降っており、心身ともに冷え込む寒さであった。
「こんな時にお前に伝えようかどうか迷ったんだがな……。」
「何だ?悪い知らせか?」
「いや、逆にいい知らせなんだがな……これを見てくれ。」
坂口から渡された写真に写る人物を見てアキラの鼓動が2度3度と早鐘を打つ動機に襲われた。
エリスは井ノ本から1枚の写真を渡された。
「彼女は!?」
「今、この女が近くにいる。」
映し出された写真には赤い髪を帽子で隠す女性が写っていた。
「紅月カレン!」
カレン達が中華連邦に潜伏したとの設定にしました。そこまでの経緯は次回というわけで。
第1章も終盤に向かっています。なんとか今年中には終わらせたいと思います。