「お、はるくんだ。おっはー」
学校に着くとちょうど登校してきた東雲が挨拶をしてきた。
それに挨拶を返し、共にクラスへと向かう。
「でさ、トーコちゃんがねー」
最近のこいつは
「……なぁ、東雲。小森ってどんな奴なんだ?」
「……またその質問ー? 何回するのさ」
小森のことを聞くのは何回目になるのだろうか、自分でも分からない。
だが返ってくる答えはいつでも誰でも同じものだ。
「ーーーーだから
これだ。
まるで魔法にでも掛けられたかのようだ。
「……そか。そうだったな、悪い」
「もー! はるくんだってよく話してるでしょ? トーコちゃん、可哀想だよ」
そう、何故か俺は小森によく話し掛けられる。
いきなり何もないところから声が聞こえるから、慣れない頃は心臓が止まるかと思った。
「そ、れ、にぃ! トーコちゃん、もしかしたらもしかするかもしれないんだからぁ!」
「はぁ……? ないない」
彼女が見えていない俺では完全には否定できないのだが、とりあえず否定しておく。
こいつは事あるごとに色恋沙汰に結びつけるのだ。
アリ相手に言い出したときは本気で気が触れたのかと思った。
「えー? そうかなー?」
「そうだよ」
教室に辿り着く。
頬を膨らます東雲を適当にあしらいながら扉を開けた。
「ーーーーあ、おはよう! ゆりちゃん、明石くん!」
「おっはよう、トーコちゃん!」
「……よう」
やはり見えない。
彼女の姿も、着ているであろう服すらも。
「ねぇねぇ、トーコちゃん。昨日のテレビ見た?」
「あ、見たよ~!」
二人が話し始める。
俺は自分の席に座り、小森のいるであろう場所を見つめる。
(……なんで俺だけが彼女を見れないんだ?)
小森を見えていないのは俺だけで、他の人間はしっかりと認識できているらしい。
鏡や携帯越しに彼女を見てみたが、効果はなかった。
「……あ、あの」
「……ん? あ、あぁ、どうした小森?」
最近は慣れたものだ。
小森が俺に話しかけているのかどうかすぐに分かるようになった。
「そのぅ……そんなに見つめられると……!」
「あ、わ、悪い!」
「あれあれ~? はるくぅん?」
ニヤニヤして東雲が近寄ってくる。
「……なんだよ」
「ひょっとしてぇ、もしかするのははるくんの方なんじゃないの~?」
「ゆりちゃん、それってどういう……?」
また東雲が阿呆なことを言い出した。
ガシッと頭を鷲掴み、力を込める。
「あいだだだだだっ!? 割れる! 割れちゃうよ、はるくん!」
「割るんだよ」
「ちょっと!?」
「……フフ、仲良いですね」
恐らく小森は俺と東雲の様子を見て笑っているのだろう。
俺には分からないが。
「ちょっ!? 笑ってないで助けてよトーコちゃぁぁぁあんッ!」
「割れても良いってことだろ」
「ち、違うよゆりちゃん!?」
「いいから助けて!」