SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第90話 「崩れゆく浮遊城」

 

暴走した『ザ・アンガ・ファンタズマ』を撃破し、ヒースクリフは本来の姿に戻った。

呆然とするプレイヤー達。ため息をつきその場に座るハヤマにその肩をたたくシンキ。

ミケは玉座に座り、持ってきていた肉にかぶりついていた。

キン…シュボ

ミケの肉の食べる音以外で小さく鳴り響く音がもう一つ。オキのライターの音だ。

「…ふー。満足したか? 旦那。」

床に仰向けになって倒れ、広間の天井を見つめ続けるヒースクリフに近づきながらオキは煙を吐いた。

「ああ。」

ヒースクリフは低く、それでいて確かに返事を返した。そしてゆっくりと起き上がり、目の前にコンソールパネルを表示させ、ゆっくりと何かを操作し始めた。

「君たちには…感謝している。」

操作が終わり、再び天井へと首を上げた。

「君たちがいたからこそ、このゲームが出来上がったといっても過言ではない。」

オキはやっぱりかと呟いた。

次の瞬間、天井に大きな文字が現れた。

 

『Congratulations!』

 

「これは…。」

キリトやクラインがお互いに顔を合わせてメニュー画面を開いた。

「ログアウトが…ある!」

その言葉に周囲がざわつく。その直後に声が響いた

『おめでとうございます。アインクラッド城の全てのエリアが解放されました。ソードアート・オンライン攻略おめでとうございます。』

男性の声でどこからか鳴り響いたアナウンス。これにより一瞬息を飲んだプレイヤー達から歓声が湧き上がった。

「「「やったああああああ!!!!」」」

アインクラッドの完全クリアが完了したのだ。オキもゆっくりとメニューを開くとログアウトの欄が追加されていた。

「これで君たちはログアウトができる。おつかれさま。君たちはゲームに勝ったのだ。」

ヒースクリフはゆっくりとオキの方を向きながらそういった。

「そうか。…さて、説明してもらうぞ。最後に答え合わせだ。」

「いいだろう。すまないが、そこをどいてもらってもいいかな?」

王座を独占しているミケに申し訳なさそうに言うヒースクリフ。

「いやなのだ。」

だが、ミケは相変わらず肉を食べながら嫌と断った。ヒースクリフもこれには苦笑い。

「しかたない。…座りたまえ。」

コンソールを操作したヒースクリフはオキの元へと戻り、椅子をいくつか取り出した。

「あーよ。っとその前にっと。おーい。喜んでもらっているところすまんが、一言いいかー?」

喜びに完成を上げる者、涙を流しながら喜び合い、抱きつきあっている者もいるプレイヤー達にオキが声を上げた。

「すまんがこれから俺は旦那にいろいろ聞かなきゃならんことがある。とはいえ、みんなはすぐにログアウトしたいだろう。だから最後に挨拶だけさせてくれ。」

ディアベルやキリト達の前にたち、オキは手を出した。

「協力ありがとう。みんながいてくれたからこそ、俺たちアークスはここまで来ることができた。そして…約束は守ったぞ。」

ディアベル、キリトはお互いに顔を見合わせ、オキの手を握った。

「ああ。こちらからも感謝を。アークスに、感謝を。」

「オキさんたちがいてくれたからこそ、俺たちもクリアができた。ありがとう。本当に、ありがとう。」

頷くプレイヤー達。

「それとアークスの謎については俺も気になる。それを聞いてからでも遅くはない。私も聞いてもいいだろうか。」

ディアベルがオキに言った。オキ達が求めた答え。何故アークスが戦っている、もしくは戦った相手がこのSAOにいたのか。そしてその存在をヒースクリフ、茅場が知っているのかを知りたがっていた。それはキリトをはじめとするプレイヤー達全員がそのようだ。皆が興味を持つようにオキを見ていた。

「ったく、そこまで付き合わなくてもいいんだがな。ま、俺たちからすれば隠すこともない。いいな? だんな。」

「ああ。構わない。」

オキはヒースクリフの椅子を避けて、シリカやフィリア、ハシーシュに手招きをした。

「おいで。シリカたちもよければ。」

「はい!」

「ええ。わかったわ。」

「私も、聞く。興味があるから。」

そういって3人はオキの周りに座り込んだ。

ほかのプレイヤーたちもひとり残らずその場に座った。

「ではどこから話そう。」

ヒースクリフが語り始めた。彼がまず話し始めたのはSAOの開発が始まってすぐの頃だった。

SAOの開発に伴い、いままでにないRPGをつくる。ここまではよかった。だが、作るにつれ、ありきたりの敵、ありきたりの設定になりつつあった。惑星スレア、そのなかの一つニホン。ゲームの作成量はスレア1の量を誇っていた。そのため、物語は多く語られ、どうしてもどれかに似てしまう。ヒースクリフは納得がいく作品を作りたかった。そして彼には野望があった。

「私はVRシステムを利用してある事を行いたかった。それがファンタジーの世界の力を自由に操る。もちろん簡単ではない。システム、設定、それらに縛られない思ったものが実現する世界。それを作りたかった。」

彼が実現したかった世界。VRを利用してプログラムに縛られないシステムを考案した。だが、世界設定、物語がありきたりではそれらも在りきたりになってしまう。だから納得が行かなかった。SAOの開発は難航した。

「聞いたことがある。SAOの開発が難航していた時期が初期にあったとか。」

キリトが呟いた。

「うむ。だが、ある時を境にそれが一転し一気に開発が進んだとかいう話も私は聞いたことがある。」

ディアベルがキリトに向かって言った。何人かのプレイヤーも頷いていた。

「噂が飛んでいたのも私は知っている。そのある時というのが…君たちアークスに関係するモノだった。」

「当ててみようか。」

オキがタバコをふかしながらヒースクリフを睨みつけた。

「どうぞ。」

ヒースクリフが手を前にだし、答えを言わせた。

「ルーサー。」

ヒースクリフの口がゆっくりと曲がった。

「さすがだね。そのとおりだ。そのときは名前までは知らなかったが、後に彼の名前を知ることになった。」

ヒースクリフ、茅場晶彦の前にある男が現れたそうだ。白い全身に着た服。見たこともない美形の男性。身長は高く、なにより目を見張ったのは人間にはないながい耳だった。

その男はヒースクリフにある玉を渡しこういった。

 

『知恵が欲しいかい?』

 

オキの眉が歪む。アインスは目をつむったまま黙り込み、ハヤマやコマチはオキをみた。

「私はどんなものでも欲していた。彼が私たちのすむ世界の人間でもないことは一瞬で分かった。だから欲した。」

 

『ああ。欲しいな。』

 

その男は黙ったまま口を歪ませ、茅場に一つの玉を渡したそうだ。

「それがこれだ。本物は既に外の世界では無くなっている。私が受け取り、元々開発していたカーディナルへとインストールした時に割れ、消えてなくなってしまった。ここにある玉はあくまでグラフィックに過ぎないが、彼の渡した『知識』は全てここにある。それを具現化させたものだ。」

オキがゆっくりと煙を吐いた。

「…受け取ってもいいか?」

「ああ。どうぞ?」

ヒースクリフから受け取ったオキは眉間に皺を寄せて、空いている左手にエルデトロスの片方を具現化させた。

「それが…君たちの武器だね。」

嬉しそうにヒースクリフが微笑む。反面オキは相変わらず機嫌が悪そうな顔をしていた。

「おい、だんな。知識がこの中に入っているといったな。こいつがどれだけの代物か…分かってんだろうな? ああ?」

広間にオキの声が響いた。かなり起こっているのが誰にでもわかった。

「ああ。わかっているつもりだ。心配しなくてもこれの扱いは知識として…。」

「だあほが。知識もクソもねーよ。ど素人が。ダーカー因子。間違えればおっさんだけじゃない。みんな、スレアの星があぶなかったのに気付かなかったのか!?」

ヒースクリフはオキの目を見つめ、ゆっくりと口を開いた。

「分かっていたさ。だが、私には自信があった。それを扱う術を。」

「ったく。たしかに旦那は扱いきったさ。さっきの暴走はその反動だろうが、ダーカー因子が外に出ることはなかった。…っち。やっぱり持っていたか。」

オキがそれを放り投げ、エルデトロスを振った。

 

キキキキキン!

 

粉々に砕かれた玉は一瞬で微塵に切り刻まれた。

「ダーカー因子消滅確認。侵食されずに済んでよかったな。ったく。ほんとうに微量。微かに残り香ていどのモノでよかったぜ。どーせルーサーの力で作った代物だろうから、知識を貯めるだけのちからだろうからな。それですんだのかもしれんが…。」

納得できない顔をするオキだが、ヒースクリフの話を続けさせた。

「どうせ続きがあるんだろ? どーぞ。」

「ああ。彼から手にれた知識はとてつもないものだった。まさに私からすれば宝箱のようなものだった。アークス、オラクル船団はもちろん、過去にあった出来事、そして原初の星、彼の求めた全知の存在まで…彼の持つ知識が詰まっているかのように見えた。」

「っは。なーにが全てだ。あいつからすれば一部分だろうよ。」

オキが消えたタバコを結晶化し、再び新しいタバコに火をつけた。

「それでもいいさ。私が求めたもの。新たなる物語。それらが頭に大いに広がった。私は夢を実現できる場所がある。そのことに喜びを感じた。」

茅場はその知識をもってSAOの開発に再び取り組んだ。そして新たなる野望が生まれた。

「SAOが作られ、運営が開始され、プレイヤーが集まったところで、これは私の思いついた設定だと思われるのが関の山だろう。それでは彼らのことが伝えられない。これだけ求めた場所がある。もっと上を行くことができる。この星はまだ発展することができる。今で満足することはない。VR技術がなんだ。ヘッドギアを使い、寝転がってようやく仮想世界に行くことができる? それではダメだ。もっと上の技術がある。システムがある。世界は広がる。だから私はそれをより現実味のある世界に、この知識を伝えるために、このゲームを開始した。」

SAO事件の動機。それが、アークスの存在と宇宙の知識。それを茅場はカーディナルのブラックボックスへと詰め込んだ。

「それがさっき君が破壊したモノだ。カーディナルの全てだといってもいい。」

「野望は消されたぜ。なんでそんなに嬉しそうなんだよ。」

ヒースクリフは微笑んだままだ。彼の全てを賭けたモノをオキは壊した。スレアに残るものは何一つ残っていない。

「まさか、まだ残ってるんじゃ…!」

「いや、あれが全てだ。なぜ嬉しいのか? 当たり前じゃないか。私が求めたモノが目の前にいるのだから。」

オキは一瞬なんのことかを理解できなかったが、すぐにソレがなんなのかを認識した。

「俺たちが加入したからか…。」

「そのとおり。まさか君たちがほんとうにアークスだとは思ってもいなかった。だが、それはログインの状況、君たちの行動と言動。全てが知識から得たモノと一致した。私はすごく嬉しかった。きみたちから こちらに来てくれるとは。君たちのことは全て記録され、今ではアーガスはなくなってしまったが、レクトに運営が移り、外では君たちの言葉、動き全てが記録されているだろう。アークスの存在がスレア中に知れ渡るのも時間の問題だろう。そうじゃないのかね?」

オキは黙った。たしかにアークスシップの一隻がスレアの衛生軌道上で姿を隠しているとシャオから聞いている。ルーサーが関わった形跡も確認した。これはスレアに干渉しなければならない事項である。

「ダークファルスのひとり、【敗者】との接触をしたんだ。その時点でアークスがこの星に干渉するのは確定していた事になる。俺たちはルーサーの作った装置によってこのSAOに強制ログインしてしまったのも、ルーサーのその玉っころのせいだと今理解した。」

オキの頭の中で全てが繋がった。ルーサーはSAO事件の事を調べていた。スレアをモデルにしたのが偶然だったとしてもSAOの事柄が自分が干渉している事に気づき、実際に手を下したのだ。そしてそれがどう変わっていくのかを調べようとした。彼の興味を引いた時点でこの事件が起きるのは確定していたということになる。

「っち、死んだ今でもての上で転がすか。ルーサーめ。」

悪態を取りながらもオキはまとめを頭の中で行い、ヒースクリフに認識があっているかを確認した。

萱場はSAOを利用し、プレイヤー達に命を賭けさせ、極限状態に追い込み、思念の具現化を目指した。だが、ルーサーの出現と知識を得たためにそれをする必要がなくなった。なぜなら、彼が求めたモノはそこにあったからだ。

萱場が次に行ったのはSAOで事件を起こし、世間の目を向けさせ、オキらアークスの存在を見せる為だった。

「まとめるとこんなかんじか?」

「ああ。間違ってはいない。」

「っち。ったく。いくら話をしたところで現実性がないと言われるのがオチだからって1万人の他人を巻き込むんじゃねーよ。」

舌打ちしながらオキはヒースクリフを睨み付けた。

「言い訳はしない。私の夢はかなった。それだけで満足だ。」

ヒースクリフは満足そうな顔で立ち上がった。

「さて、私からの答えは以上だ。最後にオキ君。君に見せたいものがある。できれば付き合ってほしい。待っているよ。」

ヒースクリフはコンソールを操作し、テレポーターをその場に転送した。

そして、彼はそのままその先へと行ってしまった。

「ったく。いくらファンタジーの世界を夢見ていたとはいえ、ここまでやるかふつー…。さって…。」

ぶつくさと文句を言いながらオキはプレイヤー達の方を向いた。

「俺は最後にあの男のもとに向かう。答えもわかった。これ以上付き合う必要もないだろう。」

ゴゴゴゴ…

地面が大きく揺れた。広間の窓から見える外をみると、城の一部が崩れ落ちている。

「アインクラッドの最後だ。もうここにいる必要もない。お前たちは自由だ。外の世界に戻るといい。」

「オキさん…。」

シリカが心配そうにこちらを見てくる。軽く頭を撫でたオキはニコリとほほ笑んだ。

「そんな心配そうな顔をするな。大丈夫だ。安心しろ。ディアベル、キリト、みんな。お疲れ様。」

「ああ。さっきも言ったが、ありがとう。私含め、皆から、感謝を、礼をいう。」

ディアベルがオキをはじめ、アークス勢全員を見渡した。

「オキさん。いままでありがとう。」

「本当にありがとうございます。」

キリトとアスナも何度目かわからない礼を言ってきた。

「ゆいちゃんのところか?」

キリトがそわそわとしていたのをオキは見ていた。彼と彼女の大事な娘を残してログアウトする気はないのだろう。

「ああ。一度、下に戻ってユイにあってくる。しばらく、会えなくなるから…。」

「パパー! ママー!」

その時、入り口から大きな声が聞こえ、その声の主が走ってキリト達の元へとやってきた。

「ユイ!?」

「ゆいちゃん!!」

抱き合う3人。

「あー。ずるいー! わたしもー!」

ストレアも交え、家族がそろった。

「ぱぱ、ママ。攻略おめでとうございます! アインクラッドのすべてが解放され、エネミーもいなくなっていました。ログアウトの制限が解除されたので、ここまできました。」

「そうか…。ユイ。ぱぱとママはしばらく会えなくなる。だけど、いい子にして待っていられるな?」

「はい! ストレアと一緒に待っています!」

「うん。お父さん、お母さんとまた会えるって信じてるから。」

4人が涙を流しながら抱き合う。

「うぉぉぉ…ワイ、ワイ…こういうの苦手なんやぁぁぁ…感動やぁぁぁ。」

キバオウもあまりの感動で涙を流している。少しうるさい。

キリト、アスナ達は手を振りながらゆっくりと消えて行った。

「お兄ちゃんも帰ったことだし、私もかえろっかな。」

キリトのログアウトを見届けたリーファはシンキの近くへと駆け寄った。

「シンキさん! 今までお世話になりました!」

「ううん。構わないわ。とても、楽しかったわ。」

リーファを抱きしめるシンキ。リーファは恥ずかしそうだ。

「わぷ…! も、もー。みんな見てますし…!」

「ふふふ。シノンちゃんも、お疲れ様。」

シンキはシノンにも手招きをした。だが、シノンは恥ずかしがって首を横に振る。

「もー。遠慮しない! えい!」

「っちょ! シンキさん! …もう。」

諦めたのかシノンはおとなしくなる。シンキはそれを見て二人の頭を撫でた。

「うんうん。二人とも泣かないの。別に会えなくなるわけじゃないでしょう?」

二人の目には涙がたまっていた。

「いい子いい子。ほら、いきなさい。私まで涙が出てきちゃいそうだから。」

ニコリとほほ笑むシンキは彼女たちを離した。

「シンキさん。いつか…いつかスレアに!」

「ありがとう。また…。」

そういいながら二人は消えて行った。

「ええ。また、会いましょう。」

「ハヤマ殿…。えぐ…えぐ…。」

シャルは大号泣していた。ツキミも軽く目を赤くしている。

「そんなに泣くことかよ。どーせうちのリーダーがそっちに無理やりにでも行くんだから、その時に会いに行くよ。だから泣くなよ。」

ハヤマが彼女の背中をさすった。少しは落ち着いたのか、ゆっくりとハヤマに近づいた。

「おっと…。」

「すまぬ。少しだけこうしていてくれ。」

ハヤマの腰に手を回し、胸に顔を押し付けるシャル。恥ずかしそうにしていたハヤマだったが、ため息をついて彼女と、付き人の頭を軽く撫でてやった。

「お別れ…じゃないのよね?」

「あ? 多分な。」

フィーアはコマチの隣に座りこみ、お礼を言っていた。ぶっきらぼうに答えるコマチの態度はいつも通りだ。

「また、会えるかしら。」

「多分な。どーせうちのリーダーが動くさ。その時に嫌でも巻き込まれるさ。」

タバコの煙を天井に吐くコマチ。フィーアはそうと一言だけ言って、立ち上がり、コマチへと手を差し伸べた。

「いつか、あなたを招待するわ。私の国へ。」

「ふん。めんどくさいのは嫌いだからな。」

「ええ。」

ニコリとほほ笑むフィーアの手を握ったコマチは立ち上がり彼女の肩をポンと軽くたたいた。

「じゃあ、リーダー。俺は先に行ってるぜ。」

「皆、ありがとう。本当に、感謝するわ…!」

そういってコマチとフィーアはお互いに手をたたきあい、消えて行った。

「みけ…。」

「お別れなのです。」

玉座では悲しそうな顔をしている双子の少女が…。

「お別れじゃないのだー。みんな一緒なのだー!」

ミケを囲んで捕まえようとしていた。

「ヒナ!」

「なのです!」

「にゃにゃにゃ!」

ヒナが玉座へと手を伸ばし、ミケはそれを回避。空中へとジャンプした。

「それ!」

その瞬間にその場所に飛ぶであろうと予測していたハナがミケへとロープを投げた。

「とった!」

感触を得たハナは一気にロープを手繰り寄せた。しかし…。

「残像なのだな。」

「また逃げられたー!」

「くやしいのです。」

残念ながら捕まえたと思ったのはミケの残像。最後の最後まで彼女らはミケを捕まえる事が出来なかった。

「あーもう! 必ず、必ず捕まえて見せるんだから!」

「覚悟するのです! 今度こそ! 絶対に!」

そういいながら笑顔で光の粒子とんまって消えていく双子姉妹。笑顔でミケとお別れ。

「次も…逃げ切るのだ。」

ニヤリと三日月状に口をゆがませるミケも天井を見ながら消えて行った。

アインスは怪物兵団のメンバー達と一時期の別れの挨拶をしていた。

「隊長。今までお世話になりました。」

ソウジがチームを代表して挨拶している。

「ああ。こちらこそ。いろいろ勉強になった。」

広報では女性陣が泣いて別れを惜しんでいる。

「ははは。泣くな。これで出会えないわけではないとキリト君達にもいったばかりだろう。」

「そうですけどー!」

「やっぱり寂しくなります。」

相変わらずの人気度である。

手を振りながらログアウトしていくメンバー達。残ったのはシリカ達と一部アークスメンバー達だけだった。

「じゃあ私もいくわね。」

シンキがゆっくりと広間を見渡しながらシリカの方へと近づいてきた。

「オキちゃん達と会えなくなるけど。心配しないで。また、会えるから、ね?」

「はい…。いろいろありがとうございました。」

ふふっと微笑んだシンキはニヤリと笑いオキの方を向いた。

「再開したあと、ヤったら話し聞かせてね?」

「うっせ!」

つい手を出したオキだったが、シンキはゆっくりと消えていった。

「っち逃げたか。」

「オキさん。」

「オキ君。」

残っているのはハヤマとアインスだ。

二人もログアウトするらしい。

「名残惜しいけど、この冒険も終わりだね。」

「そうだな。隊長とも戦えて自分の力を再認識できたし。」

「ああ。向こうでもできるように、言ってみるかな。」

楽しかった思い出を思い返す3人。そして二人はゆっくりと消えていった。

「さって、向こうに行きますかね。」

「はい。」

「じゃ、私も帰ろっかな。」

「私も。」

フィリアとハシーシュがふたりが転送門に向かおうとしたところで立ち止まった。

「ん? 聞いていかないのか?」

「うん。ここはシリカちゃんだけでいいよ。」

「私たちは…あとで聞くから。二人だけで。最後くらい。」

どうやら二人きりにしてくれるようだ。まぁヒースクリフもいるのだが、最後くらい二人でいろということだろうか。

「フィリアさん。ハシーシュさん。お世話になりました。」

ペコリと涙を流しながらお辞儀をするシリカは頑張って笑顔で別れようとしていた。

「泣かないでよ。私まで…涙、出ちゃうじゃない。」

「うん。楽しかった。」

3人で抱き合う。オキはフィリアとハシーシュの頭を撫でてあげた。

「ありがとう。こんな優柔不断な俺と一緒にいてくれて。」

「ううん。大丈夫。みんなで話したんだもん。オキが誰を選んでも、選ばなくても皆を選んでも。」

「私たちは…オキが、大好き。」

フィリアとハシーシュはオキの頬にキスをした。

「アークスは男女比が女性が圧倒的に多い。だから一夫多妻が可能。」

「だから私たちは、オキが嫌いにならない限り、ずっと想ってるよ。」

フィリアとハシーシュは手を振りながら、笑顔でログアウトした。

「みんな優しいなぁ。」

「ふふふ。…いきましょう。オキさん。」

「ああ。」

オキとシリカはヒースクリフの向かった先へと飛んだ。

飛ぶ瞬間、ある一点が気になったオキはその一点。玉座の隣に光るなにかを見ながら転送した。

 

「ここは?」

「わっ! わっ!!」

足元は空。オキとシリカは空中に浮いていた。

「別れはすんだかい?」

ヒースクリフの声をした一人の男性がオキの目の前に現れた。

「あんたが…茅場か。」

「そうだ。あそこを、見せたくてね。」

指を指した方向にすこしずつ崩れていく浮遊城の姿があった。

「君たちが、2年かけて攻略した場所だ。ゆっくり見ていくといい。」

「…あんたは、これからどうするつもりだ?」

光の粒子となってすこしずつ消えていっている茅場にオキが聞いた。

「私は…まいた種が成長することを、祈っているよ。」

「種?」

彼の言葉から新しい単語が出てきた。種とは一体何なのか。それを機構としたが、既に茅場はいなくなっていた。

「おい! 茅場! どこにいった! 種ってなんだ! おい!」

しかし茅場はそれ以降現れることはなかった。

だが最後に一言だけ、オキの耳に聞こえた。

「君たちに会えたことに感謝を。」

オキはそれを聞いて崩れゆく浮遊城を睨みつけた。

「ったく。最後の最後に変なことをいって消えやがって。」

オキはシリカと向き合った。

「さて、しばらくお別れだ。」

「…はい。」

シリカの目に涙が溜まっている。しかしそれをこぼさないように頑張っている表情も見える。

「泣くな。笑え。そして俺が来るまで待っていろ。必ず向かう。」

「待ってます。ずっと…ずっと!」

オキとシリカは抱き合い、そしてシリカは消えていった。

「…あーあ。終わっちまったか。そういやさっき…。」

 

コツ…コツ…

 

後ろから人の気配がする。オキはカヤバが戻ってきたものかと思い振り向いた。

「てめぇ…どこに…。お前は…!?」

オキとの因縁がある男。ここにいるはずない。いや、いてもおかしくないと思った。

「…ったく。そんな顔して出てきやがって。幽霊かと思ったぜ。」

男はゆっくりと微笑みながらオキへと言葉を放った。

「やぁ…久しぶりだね。アークス。」

「ルーサー…。」

フォトナーの最後にして、ダークファルスとしてオキ達の前に立ちはだかり、オラクル船団を乗っ取り壊滅寸前まで追い詰めた男。そしてオキ達が全力をかけて倒した男。ルーサーがその場に現れた。




みなさまごきげんよう。
最後の種明かしといきましょう。
茅場の思惑、原作では幼少時から夢見ていた「異世界」へと旅立つことを狂的に渇望しており、元々VR技術もそのために生み出されたものだった。
しかし、今作ではその異世界に近しい存在、アークス達の世界を知って彼は夢をアークス達の世界を世間に知らせ、スレアにアークスを招く、もしくは探し出す事を認知させようとした結果、このSAOでの事件を開始した。
そしてその原因を作ったのが、ルーサーだった。
さて、そのルーサーがどう動いたか。次回に続きます。
それでは次回、またお会い致しましょう。
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