シンタロー「なにぶつぶついってんだ?」
エネ「あ!いえいえ!なんでもないですよ!!ご不憫!」
シンタロー「おい!誰が不憫だ!」
気づくと僕は真っ白な世界にいた。
本当に死んでしまうのだろうか………ゲームのなかで?
「修哉。」
「姉ちゃ……ん。」
姉ちゃんの声が聞こえる。
「修哉?みんなのとこにいくんでしょ?」
「行きたい………けどもう、体が動かないんだよ。」
今は目と指先を動かせるくらいであとはほとんど動かない。
あのときと似ている。母さんを守りたくてあの犯人に向かっていって、返り討ちにあって。母さんの包丁で刺し殺されたとき。あの時も恐怖が頭を埋め尽くした。今も、また死ぬのかと考えると涙が出そうになる。
「分かった。それじゃあ私がおんぶして帰る。修哉をここで死なせたりなんてしないから。」
姉ちゃんは僕を背中に抱えようとする。しかし、姉ちゃんの筋力で僕をおぶることができるはずもなく。それでも姉ちゃんは僕をおぶろうとしている。
「姉ちゃん………もういいよ。充分だよ……」
「ダメっ!諦めないから!!」
振り向いた姉ちゃんの目は赤く煌めいていた。
「姉ちゃん………」
恐らく姉ちゃんは自分の思いを回りにいるすべての生物に伝えようとしているのだろう。
届くだろうか。この吹雪のなかで。
しばらくすると「ウォーン……ウォーン……」と何かの鳴き声が聞こえてきた。人間ではない何かの声。
その声は次第に大きくなってきた。近づいてきているのだ。
「ウォーン!!」
吹雪のなかから現れたのはポポだった。
ポポは姉ちゃんの目を見て何かを感じ取ったようで、僕を角で引っ掻けた。
「ありがとう!」
姉ちゃんはポポを優しく撫でてそう言った。
「ウォーン。」
ポポもその言葉が分かったようで反応した。
そして、僕をのせたポポと姉ちゃんは吹雪のなかを歩いた。
*
しばらくすると町が見えてきた。
姉ちゃんはしばらく黙っていたが、町が見えたとたんに笑顔になって僕にいつもの笑顔を見せた。
「姉ちゃん。ありがとう。」
「いいんだよ。だって私。修哉たちのお姉ちゃんなんだもん。」
僕にはその言葉がとても暖かく感じた。嬉しくて涙が出てきた。
*
「っ………」
目を覚ますとそこはベッドの上だった。
「お、やっと起きたか。」
ベッドの横にいたのはキドだった。
何だかとても怒っているように見える。どうか気のせいであってほしい。
「あ、キ、キド?どうしたの?そんな顔しちゃってさ。あはは。もしかして心配してた?」
冗談半分でそんなことを言ってみたのだが………
「バカ!どれだけ心配したと思ってるんだ!」
キドは僕を抱き寄せて鳴き始めてしまった。
どうしよう!?これ!!
「キ、キド。僕はもう大丈夫だって。ほら、だから泣かないでよ。」
ガチャ
「キド。ご飯出来た……ぞ…」
ドアを開けて入ってきたシンタロー君は、気まずくなったのか一歩下がってお辞儀をしてから………
「失礼した」
ガチャ
扉を閉めた。これは、キドにとっては不味いんじゃないの!?キド!?
「あ、あの、キド。そろそろ離し………」
ガチャ
「あの…ご飯出来たって……」
コノハ君!?ちょ!キド!!まずいって!!
「あ………」
コノハ君は状況がやっと分かったようで……
ガチャ
無言で立ち去ってしまった。
「キド。そろそろ。」
「あ、そうか。すまん。」
やっと離れてくれたキドの目は泣いたせいで赤くなっていた。
「キド。ご飯出来たってさ。」
「ん?誰がそんなこと言ったんだ?」
やっぱり、聞こえてなかったのか
「あの………まぁ、とにかく行こうよ。ね?」
「あぁ。分かった。立てるか?」
ベッドから降りようとすると足にあまり力が入らなかった。でも、立てないほどではなかった。
「立てるから平気だよ。あれ?キドってそんなに優しかったっけ?」
少しいつもの癖でキドにちょっかいをかけてしまった。
「う………き、今日だけだ……///」
キドは少し頬が赤くなった。
なにこれ!!いつもなら殴ってきて「うるさいっ!」って言ってくるのに!!
「ほ、ほら行くぞ。」
「あ、うん。」
*
リビング的な場所でシンタロー君とコノハ君………そして姉ちゃんが座って待っていた。
「お、お帰り。カノ。」
シンタロー君が僕を哀れむような顔で見つめてくる。すごくやめてほしいっ!
「おかえり………ご飯食べていい?」
僕のことをチラ見してすぐにご飯に目を向けたコノハ君。
「おお!我が弟よっ!起きたか~っ!」
席から飛び出して僕に飛び付いてきた姉ちゃん。
「わっ!ちょっと!姉ちゃん!?」
「おっと~!ごめんごめん。つい嬉しくなっちゃって。」
姉ちゃんは離れて席に戻った。
「さてと。あぁ。カノ、席に座れ。」
キドも自分の席につきながら僕にそう促した。
僕は言われた通り空いていた席に座った。
「それじゃ!みんな一緒に!!」
姉ちゃんの呼び掛けでみんなが一斉に手を合わせる。
「「いただきます!!」」
僕はこのあと料理を美味しくいただいた。
まぁ、ほとんどコノハ君が食べたんだけどね。
みんなと食べた食事は美味しかった
*
「ところで姉ちゃん。どうしてあんなとこにいたの?」
僕はお箸を置きながら姉ちゃんにそう聞いた。
姉ちゃんもお箸を置いて僕を見た。
「あのね。私が始めにこの世界に来たときは、村にはいなかったの」
そう言えば。始めにシンタロー君もはじめは『神の領域』という場所にいたらしい。
「俺は高原で目を覚ましたんだ。」
キドは箸を持ったままそう言った。高原と言えば僕とシンタロー君とキドて初めてモンスターを倒した場所だ。
「俺は神の領域ってとこだ。」
シンタロー君も自分が目を覚ました場所をいった。
コノハ君は食べることに夢中でしゃべる気配は無さそうだ。
「ほら。みんなも村じゃなくて狩場で目を覚ましてるでしょ?」
「確かに………え!?まって!それじゃあ姉ちゃんは凍土で目を冷ましたの!?」
普通に考えればそういうことになる。
「そう言うこと。」
姉ちゃんはまた微笑んだ
「アヤノ、今日は冴えてるな。」
「それほどでも~!」
シンタロー君に誉められて姉ちゃんはとても嬉しそうにしていた。
「それじゃあ、セトやマリーもどこかにいるってことか。」
キドが顎にてを当てて考え始める
「ううん……セトとマリーは…農場っていうとこに……いるよ。」
ご飯を食べ終わったコノハが話に入ってきた。
「そうなのか?」
シンタロー君がコノハ君にそう言った。
「うん。」
コノハ君は頷いた。
「そうか!なら、明日ぐらいにでも行ってみよっか!」
そう意気込んで姉ちゃんは立ち上がった
*
…………嘘とか偽りとか、必要なときもあるよね。
でも、誰かを泣かせる嘘はつかない。絶対に。
窓の外を見る。
夜が更けてきた。満月も黒い雲の影へ隠れ始めた。
「ふわぁ…………」
そろそろ眠くなってきたな。何時くらいなんだろうか。
それにしても………僕が倒したあのモンスターは、死ぬ前に何を考えたろうか。
あのモンスターのことを色々と調べようとしたけど。結局、行き当たったのは『異常種』という部類だけだった………………
まぁ、今はそんなことを考えないて寝よう。
僕は目を閉じた。疲れのせいか、すぐに眠りにつくことができた………………
カノ「いやぁ。それにしても姉ちゃんが来てくれなかったら。僕はどうなっていたことか。」
アヤノ「家族なんだから。助けるのは当たり前でしょ。それに、あの場所にいたのは偶然だよ。偶然に感謝だよ。」
シンタロー「運命だったのかもよ。」
カノ「おっ!シンタロー君がいいこといった!」
シンタロー「わ、悪いかよっ!」