Fate/in UK   作:ニコ・トスカーニ

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狂気

 晩年のころオカルティズムに傾倒していたロバート・ウェブスターはオカルティズムを体現した魔術の館を建てていた。

 妻子の事を慮るだけの思慮は残しており、妻子は居心地の良い邸宅に住ませ、自らは日中、魔術の館にこもって怪しげな治療と奇書の執筆に明け暮れていた。

 そこが件の幽霊屋敷だ。

 

 今は妻のアン・ウェブスターが管理をしている。

 維持のために寄付は募るが、基本的に無料で記念館として開放するつもりらしい。

 私は未亡人の姿勢に好感を持った。

 ロバートとアンはダラム大学の同級生で、二人とも中流の裕福な家に生まれたそうだ。

 育ちが良いとはこういうことなのだろう。

 

「こちらです」

 

 ガンツの運転とアン未亡人の案内で車を走らせおよそ十五分。

 蜂蜜色が美しいバースの市街地を抜け、周囲が閑散としてきたころ、それが見えた。

 

 優雅なバース市街とは対をなすような薄暗い焦げ茶色の建物だった。

 

「では、終わりましたら呼んでください」

 

 彼らは長居したくないらしく、早々に立ち去ろうとした。

 くだらない案件とはいえ、一応仕事だ。

 当事者であろう彼らに、私は「この屋敷で奇怪なことは経験しましたか?」と形だけの質問をした。

 

 ガンツとアンはお互いを見合わせ、アンが答えた。

 

「具体的に何と言うわけではないんですが……」

 

「何がありました?マダム」とここに来てようやくウェイバーが口を開いた。

 

「屋敷の整理をしていた時、終始嫌な感じがしました……。具体的に何かが起きたわけではありませんが、誰かに見られているような感覚でした。気のせいなんでしょうが」

 

 ガンツが続けて答えた。

 

「私もです……。奥様のおっしゃられる通り、気のせいかもしれませんが」

 

 彼らからそれ以上の答えは返ってこなかった。

 「ありがとう。とても参考になりました」と私が答えると彼らは去っていった。

 

 我々は取り残され、閑散とした立地に聳え立つ屋敷と正面から向き合うことになった。

 

 ロバート・ウェブスターの幽霊屋敷はデザインはヴィクトリア朝風だが、歴史は浅く竣工してから三年しか経っていない。

 ナショナルトラストが認定する日は来ないだろう。

 

 まだ日は高かったが、どんよりとした気配があたりを覆っていた。

 優雅なバース市街と赤茶色を基調としたこの異様な建物は心地の悪いコントラストを成していた。

 歴史も何もない建物なのだから神秘も何もないだろうが、確かに超常現象を愛するロマン派にはそそる存在かもしれない。

 

 主な材質は煉瓦だろうか。

 三階建てで、屋根はゴシック建築の尖塔を思わせるデザインだ。

 産業革命後のイングランドで建てられたものでは珍しく無いデザインだが、竣工三年の現代建築となるとかなり異様だ。

 

 今のところ異様なものは感じない。

 未亡人と運転手の発言から少しばかり嫌なものを感じたが、調べればはっきりすることだ。

 

「では行くか」

 

 仏頂面の相棒を引き連れて、私は屋敷の扉を開いた。

 

  〇

 

 内部は「異常」の一言だった。

 ありふれた歴史的建造物風の外側に対し、中は人の生活空間であるとはとても思えなかった。

 壁があり、天井があり、通路があって部屋がある。

 それらの家として当たり前の機構を除けばすべてが異常だった。

 

 まずは一階を検めたが、ある扉を開けるとその扉の先は壁だった。

 複数必要と思えない機構である階段が複数あったが、二階に通じている階段は一つだけで他の階段は途中で途切れているか、行き止まりだった。

 部屋への扉は通常サイズのものと、五歳児しか通れないようなサイズのものが並行で存在し、廊下の一つは先細りして進めない作りになっていた。

 

 まるで呪われた館として名高い、ウィンチェスター・ミステリー・ハウスのようだ。

 

「出鱈目もいいところだな」

 

 内部を検めながらウェイバーが評した。

 屋敷の内部には様々な魔道具も収められていた。

 

 呪い袋の作り方は正しかったし、太極図も正確だった。

 しかし、この屋敷にあるものにはまるで統一性が無かった。

 所狭しと様々な魔道具が並べられていたのに加え、床や壁には多くの陣が描かれていた。

 陰陽道の五芒星から密教の曼陀羅風の模様、ヘカテのホイール、ケルティックノットなどのシンボルもそれらもまるでバラバラだった。

 

「ロバート・ウェブスターが魔術師の家系だと聞いたことは無いが、少なくとも一つ一つは正しい。相当な執念で学習したのだろうな」

「ああ。加えてこの建物、歴史もなければ何の神秘も感じない。ファルコの情報ソースはここを訪問したロバートのファンクラブの会長だったらしいが、これは

東洋の諺で言えば鰯の頭も信心というやつだろうな。お使いもあるし、写真だけは撮って帰るか」

 

 設計者が魔術師ではなかったとはいえ、こちらは本物の魔術師だ。

 間違いがあって何かが起動してはまずい。

 我々は魔道具には極力触れないよう、陣は踏まないようにしながら移動し、お使い通りにデジタルカメラに画像データを収めていった。

 

 一階を一通り見終わり、二階に進む。

 二階も似たような作りだった。

 同じように検分しながら写真を撮り、陣と魔道具をよけながら進む。

 見て周りながら気づいたことだが、どうやらこの屋敷には数秘術の仕組みも組み込まれているらしい。

 各部屋に番号が割り振られているらしく、一階にある部屋はそれぞれの部屋に「11」「22」「33」の数字が刻まれていた。

 これらはカバラで重要な意味を持つ数字だ。

 二階は「13」と「4」と「666」だった。

 13はキリスト教圏における不吉な数字、4は日本で縁起が悪いとされる数字、666は「ヨハネの黙示録」における獣の数字だ。

 

 偉大なる時計塔の講師は「一つ一つの数字には意味があるが、組み合わせが出鱈目もいいところだな」と評した。

 少なくとも本当の意味での魔術的な意味合いは無さそうだ。

 

 屋敷の醸し出す雰囲気は異常だったが、今のところ何も顕著な現象は起きていない。

 私の魔術回路も全く無反応だった。

  

 屋敷は窓の数が多く、真昼の日差しが差し込んでいる。

 数えていないが、窓の数にも主だったロバート・ウェブスターなりの意図があったのかもしれない。

 だが、恐らくそれも屋敷全体の組み合わせとしては無意味なのだろう。

 二階をすべて見終わってもやはり何もなかった。

 

 そして、当然の帰結として我々は三階に向かった。

 

 三階も同じように異様な作りだった。

 他の階と違うのは、人がいたらしい部屋があったことだ。

 どうやらロバートの書斎だったらしい。

 晩年のロバートは日中ここにこもって執筆をしていたのだろう。

 

 書斎は広かったが、怪しげな魔道具と陣で溢れかえっており足の踏み場は殆どなかった。

 陣と魔道具を避けて通り、窓際のデスクに向かった。

 

 ボロボロの状態だった若き作家は晩年、どのような精神状態だったのだろうか。

 狂気か、狂気の一歩手前まで近づいていたのだろう。

 机にはマルチリンガルの私でもわからない文字のような何かが彫り込まれていた。

 二語の単語のように見えたが、これにもやはり意味は無いのだろう。

 今まで見た陣や魔道具は組み合わせこそ出鱈目でも一つ一つに意味があった。

 晩年に彼が辿り着いた境地は意味すら消失していたのかもしれない。

 

 そのデスクを写真に収めると、我々は部屋を出た。

 

 情報元が情報元だけに期待はしていなかったが、それでも拍子抜けするほど何もなかった。

 私とウェイバーは三階を周り終え、「当然の結果だな」という感想を述べると、早々に館を後にすることにした。

 

 もし相当に時間がかかるようならバースで一泊していくつもりだったが、まだ日は高い。

 その必要は無さそうだ。

 

 ロンドン行きの列車が止まっていないことを願いながら、二階への階段に向かった。

 

 その時、何かが起きた。

 

 あたりが暗闇に包まれていた。

 我々の足は確かに三階の床についている。

 暗闇の中でぼんやりと、屋敷の調度品が確認できる。

 

 それにも関わらず、その実在感が不確かだった。

 床は床で無いように感じられ、壁との距離感は不確かで、自分が呼吸し、脈動している感覚すらあやふやだった。

 確かにバース郊外の館にいる筈なのに、そこがバースではなく、イングランドでもなく、地球ですらないように感じた。

 

「……何だ、これは」

 

 私以上にウェイバーが混乱していた。

 彼は理詰めで事を進める、感覚より理性を優先するような人物だ。

 だからこそ、魔術師として凡才でありながら、教師として優秀と言う稀有な存在になっている。

 術師としては平均以上に優秀で、彼より感覚が優先するタイプの私と比べても、彼の混乱は相当に大きいのだろう。

 

 暗闇で頭の中に何かが流れ込んでくる。

 それはどうやら言葉らしい。

 だが、その言葉が何なのか全くわからなかった。

 私は母語の英語のほかに、日本語と広東語を解し、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語も堪能と自負している。

 ロシア語と普通話は日常会話なら何とかなるし、齧った程度の言語ならば数知れない。

 それにも関わらず、その言葉らしい何かが何の言葉なのか全くわからなかった。

 地の底から聞こえてくるような単調な響きで、戯言としか受け取れない謎めいた音だった。

 分かったのは、それが「理解不能な何か」で二語の単語のようにという聞こえるということだけだ。

 

 五感を極力遮断し、魔術回路に全力で集中を流し込む。

 私の五感は「恐怖」を示していたが、魔術回路もまた「恐怖」を示していた。

 そして、異常な恐怖が這い寄ってくることを私の直感が感じ取っていた。

 

 この怪現象を起こしているものの正体はまるでわからない。

 地球の多くの文化圏を知る私でも、恐怖は既知のものと大きくかけ離れていた。

 あえて言うならば、宇宙を前にしたような恐怖だった。

 

 だが、この館を作ったのがロバート・ウェブスターであることは分かっている。

 作ったのが人間なら人間業の魔術で対応できるはずだ。

 

 また、彼が東西を問わず様々なオカルティズムを試していたことも分かっている。

 ならば、こちらも片端から試すまでだ。

 

「エオロー」

 

 まず試したのは借り物のルーン文字だ。

 唱えながら中空に描いた文字には「守護」の意味がある。

 しかし効果は認められなかった。

 暗闇は暗闇のままだった。

 

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダンマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン」

 

 私は不動明王の真言を唱えた。

 だがやはり効果は認められなかった。

 

「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」

 

 縦に五度、横に四度、手刀で空を切る。

 九字護身法だ。

 やはり効果は無い。

 

 ……手持ちの破邪法はどれだけあっただろうか。

 私は焦り始めた。

 

「めでたし……聖寵充ち満ちてマリア、罪人なる我らのために、今も臨終のときも祈り給え……」

 

 頭の中を手当たり次第に漁り、次に取り出したのはカトリックの悪魔祓いだった。

 カソックも聖水も無いが、教皇庁も認めている正規の典礼文だ。

 

「聖ミカエルよ、我らのために祈りたまえ。聖ガブリエルよ、我らのために祈り給え」

 

 奇蹟がもたらされる気配はない。

 恐怖の気配は強くなっている。

 

「聖ラファエルよ、我らのために祈り給え……」

「………」

 

 誰かが何かを言っている。

 しかし、その何かは恐怖に覆い隠され意識に届かなかった。

 

「………」

 

 誰かが何かを言っている。

 次の天使の名前を唱えようと思ったが、口が上手く回らない。

 意識が遠ざかっていく感覚がある。

 このまま闇に呑まれそうだった。

 

「マクナイト!」

 

 強い呼び声が私に意識を取り戻させた。

 

 ウェイバーは正体不明の恐怖と暗闇の中、思考だけは放棄しなかったようだ。

 彼は叫んだ。

 

「壊せ!」

 

 彼は自身に言い聞かせるように叫んだ。

 

「この屋敷そのものが術式だ、何でもいいから壊せ!」

 

 そこまで言われてやるべきこと悟った。

 よく見えないが、私の足元にも陣があったはずだ。

 

 私は詠唱を止めると、懐からナイフを抜き、床に突き立てた。

 ナイフに全霊を込めて魔力を注ぎ込んだ。

 

 このナイフは楔だ。

 意味が無いように見えた陣でも、壊すことは出来る。

 ナイフに込めた魔力を楔に術式の破壊を試みる。

 

 感じる。

 術式に綻びが出来た。

 目を閉じて綻びに意識を集中し、全力で念じた。

 

 目を開けると暗闇は去っていた。

 後に残されたのは、趣味の悪い屋敷と情けなく腰の抜けた大の大人二人だった。

 

  〇

 

 暗闇のせいで感覚がおかしくなっていたが、屋敷を出るとまだ日は高かった。

 私は冷静さを取り戻しており、連絡を入れて迎えを呼んだ。

 

 運転手のガンツは「十五分でお迎えにあがります」と返答し、きっかり十五分で彼の運転するプリウスが視界に入ってきた。

 さすがはスイス人だ。次に時計を買い替えるときはスイス製にしようと思った。

 

 アン未亡人に挨拶を済ませ、ファルコに連絡を入れると、ちょうどいい時間に列車が来ることが分かった。

 「せっかくですし、少しバースを観光して行っては?」と未亡人に勧められたが、我々は双方一致で一刻も早く帰路に就くことを選択した。

 

 あの館から出来るだけ離れたい。

 情けないが心底からそう思った。

 

  〇

 

 ロンドンに着くと、我々はパディントン駅近くの雰囲気がいいとは言い難いパブに入っていた。

 パブではアーセナルとチェルシーの試合がテレビで放送されており、熱心なフットボールファンが「ジーザス!」「シット!」「ファック!」のコーラスを奏でながら試合を見守っていた。

 普段なら店を変えているところだが、暗闇とも静けさとも遠い場所にいたかった。

 この手の店を嫌うウェイバーからも店を変える提案は出なかった。

 

「ロバート・ウェブスターについてだが……」

 

 彼はいつも以上の仏頂面だったが、普段よりも飲酒のペースが速かった。

 ロンドンプライドを一パイント飲み干すと、二パイント目に口をつけていた。

 私は二パイント目を飲み終え、ジョニー・ウォーカーのロックを飲んでいた。

 

「ウェブスターは晩年のころ、主流医学に見切りをつけ、オカルティズムに傾倒していたそうだ。そこまではお前も知っているな?」

 

 「ああ」と私は答えた。

 

「私は多少の興味を持って、ウェブスターの遺作になった作品を読んだ。世評に聞く通り、奇書と呼ぶにふさわしい内容だった。魔術師とはまるで関係の無い家系のはずだが、魔的なものを感じたほどだ。それで、まさかと思いつつも同行を申し出た。……依頼元がくだらな過ぎるので、迷いはしたがな」

 

 偉大なる若きロードは私の思いもよらないところで想像を働かせていたようだ。

 

「これは結果論に過ぎないし、正直なところ私にも明確な根拠が説明できないが……あの屋敷は屋敷中に陣が書かれていたが、陣を避けてもどうにか人が通れるように作られていた。それで、推測した。……もし、魔術師があの屋敷に踏み入ったら、念のために陣を避け、魔道具には触れないようにして歩くだろうと。陰陽道には禹歩(うほ)と呼ばれる魔よけの歩行法があることはお前も知っているだろう?あの屋敷は、陣を避けて魔術師が歩くことを計算に入れて作った、歩行法も込みの術式なのではないか、そう考えた」

 

 彼の言うことにはいつも腹の底から納得させられる。

 しかし、今回はどうにも引っかかった。

 

「しかし、あの陣も魔道具もまるで組み合わせが出鱈目だ。僕ですら出鱈目さがわかる。そんな術式が成り立ち得るのか?」

「ああ、確かに出鱈目な組み合わせだった。あんなものはまるで無意味だ。……少なくと我々にとってはな」

 

 私はウェイバーが意図することがわからず困惑した。

 困惑したのち、意図することに気付き、絶句した。

 

「この先は、推理ではない。憶測とすら言えん。敢えて言うなら妄想に近い」

 

 理性的な男はビールを煽って続けた。

 

「ウェブスターの遺作は、ラヴクラフトを思わせると評されている。……ラヴクラフトは出自のはっきりした近代のフィクション作家だ。彼の作った神話体系も一般には出自のはっきりしたフィクションとして受容されている。……しかし、もしも、その神話体系が実在したとしたら?……ラヴクラフトが描いたのが太古の地球を支配した神々だとしたら?」

「……」

「我ながらどうかしていると思う飛躍した発想だが、ラヴクラフトがそうだったように、ロバート・ウェブスターが病に侵された狂気の淵で太古の神々と交信し、その結果生まれたのが遺作の奇書だったとしたら?そして同時に生まれたのがその奇怪な館だとしたら?奇怪な館に組み込まれたものが太古の神々を呼び出す術式だとしたら?もしも、そうなら術式がまるで意味不明だったことにも説明がつく。太古の神々にとって意味のあるものが、我々にとって意味があるとは限らない」

 

 アーセナルとチェルシーの試合は前半のロスタイムに突入していた。

 インターセプトからトマーシュ・ロシツキーにボールが渡り、ロシツキーの華麗なパスがオフサイドラインすれすれから飛び出したティエリ・アンリに渡っていた。

 

「しかし、もしそのような巨大な存在が背景にあるなら、なぜ、術式は我々二人に小便をチビらせる程度の恐怖しかもたらさなかったんだ?」

「……これも所詮は妄想レベルの話に過ぎんが、ロバート・ウェブスターの狂気はそれほど濃くは無かったのだろう。未亡人のマダムも、『理解できない』とは言っていたが、亡き夫を嫌悪する風でも恐怖する風でもなかった。太古の神々にとってウェブスターの狂気は少しちょっかいを出す程度の魅力しかなかったのだろう」

 

 ティエリ・アンリが二ゴール目を挙げた。

 アーセナルファンは歓喜していた。

 チェルシーファンは「ファック!」と叫んだ。

 

「まったく、我ながら酷い妄想だ。私の話は忘れろ。私も忘れることにする」

 

 背筋におぞましいものが這いまわるような気分だった。

 私は努めて忘れるようにしようと決意し、事件とは別の疑問を口にした。

 

「しかし結果はともかく、なぜ迷いながらも今回のような下らないお使いにわざわざ同行を申し出たんだ?まさか、僕への友情などとは言わないよな?」

 

 ウェイバーは私からあからさまに視線を背けた。

 

「……長年の知人であることは変わりないだろう」

 

「ほう……」と私は目を細めた。

 

「……我ながら寒気のする理由だ」

 

 そう言い終わると、以降、彼はこちらを見ようとしなかった。

 さして興味があるとも思えない、ハーフタイム中のコマーシャルを見つめていた。

 私は彼の後頭部に向けて言った、

 

「素直じゃないな。僕たちはマブダチだろ?友情の証に梯子酒(パブクロール)して、立小便しないか?」

 

 彼は知人の葬式を五件ほど梯子した後のような仏頂面を浮かべた。

 

「やめろ」




というわけでちょっと捻った幽霊屋敷ものでした。
アンリとロシツキーが出てきたのは2006年から2007年ごろを舞台として想定しているからです。作者は熱心なフットボールファンではないので、間違いがあったらごめんなさい。
オカルトと言えば、最近、こんなのを書きました。
https://mirtomo.com/fantasy-majic/
興味があればどうぞ。
明日はオマケを投稿する予定です。
では、また。
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