小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

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10話 : イレギュラー

「僕の前に麺はなく。僕の後ろに麺はできる。ああ、自然よ。マダオよ。

 僕をこの世界に呼び寄せた壮大なマダオよ。

 僕から目を離さないで見守る事をせよ。常にマダオの気魄を僕に充たせよ。

 この遠い麺道のため。この遠い麺道のため」

 

 

  ~ 小池メンマ風雲伝序章 「ど、童貞ちゃうわ!」 から抜粋 ~

 

 

 

 

 

 

「しっ!」

 

大蛇○から放たれた草薙の剣による斬撃を、呼気と共に掌の外側で捌く。草薙の剣の横刃だ。

それを捕らえて円を描く軌道で外側に弾くと同時、こじ開けた隙へ掌打を差し込んだ。

 

狙いは、急所である脇腹、肝臓への一撃。だが相手もさるもの。体勢を崩されながらも、咄嗟に身を捻り直撃を避ける。

 

(あれでも無理なのかよ)

 

返ってきた手応えに、内心で舌打ちをした。10を越える合を交わしたが、いまだにクリーンヒットは無い。こちらといえば、草薙の剣によって掠り傷程度だがダメージを受けている。

 

剣を繰り出してくるタイミングが絶妙すぎるのだ。芯で捕らえられてはいないが、斬撃の切っ先を完全に外すことができない。浅く刻まれた傷口が、動くたびに痛みを訴える。

 

(流石にやる!)

 

忍界に轟く名前、三忍の一人、大蛇○。

このオカマは今まで対峙してきた奴らとは桁が違った。

 

(………ならば!)

 

「ワガメちゃん!」

 

「………了解じゃ」

 

合図した声と共に、ワガメちゃんことキューちゃんは、心底疲れた顔をしながらも印を組み(実際は全然そんな事しなくてもいいのだが)帯状の炎を出す。

 

火遁・狐火の術。だが、大蛇○の方も印を組み、術を発動させる。

土遁・土流壁の術。

 

狐火はその巨大な土の壁に阻まれた。表面はこんがりと炎に焼いたが、破壊するまではいかなかった。

 

だが、まだ焔は持続している。消えるまで数秒だろうが、これでやれる。

相手の視界は防げた。今ならば、ひっかかるだろう。

 

「いくぞ!」

 

この機は逃さない。すかさず影分身を使い、その分身対に土の壁を駆け上がらせる。

足のチャクラで吸着する、木登りの術の応用だ。

 

囮である分身体を前に。俺は忍具口寄せを発動させると同時に、次なる術を使うために印を組んだ。

 

「一度殺されても 今に見る夢は同じなり 愛してる 愛してる 愛してる 愛してる。この輝きは何も奪わない。麺を想う我が意志の元、ただ愛を具現するが如く、包み込むその抱擁の意味を知れ」

 

焔が消えたと同時、影分身が壁を登り切って跳躍。意識を若干だが逸らさせる。

だが、その一瞬の陽動で十分。

 

掌にチャクラを集中。アレンジにアレンジを重ね、あれ、それもう別物じゃね?

と言われた術、とくと見よ!

 

「完成せよ、精霊麺!」

 

口寄せされたもの―――白く光る布の束が、大蛇○の身体を包み込んだ。

 

追尾型捕縛術。封印術を組み込んだ布が、先ほど掌打と共にマーキングした大蛇○の身体の方に殺到する。上方に意識を逸らされた大蛇○。壁の左右から急に現れた布を見てから逃れようとするが、遅い。

 

布は大蛇○を追って上昇し、やがてその身体を捕まえた。

 

そして、優しく慈悲なく容赦なく、その全身を覆い隠した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、ありがとう御座います」

 

「礼はいらない」

 

全てこっちの都合なのだから。

 

「あの、それであの下忍は………」

 

サクラは、繭に包まれた変態の方を見て、不安そうに呟く。

 

「あと一時間くらいなら大丈夫だろう。この隙に、逃げなさい。あれは化物なんて可愛いものじゃない。外に出てきたら殺されるだろうから、ここに残ってはいけないよ」

 

繭の表面に、『発禁』の札は張っている。あれならば誰も触ろうともしないだろう。

逃げるのには十分だ。封印術を兼ねた無駄に高性能なあの術は、あと最低二時間ほどは解けないのだから。

 

そのままシベリアにでも郵送したいが、この世界にはシベリアは無いのである。残念。でもあの物体をよそ送りつけるって一種のテロだよね。宣戦布告にとられかねないというか。

 

「あの、それであなたは一体………?」

 

おずおずと訪ねるサクラに、俺は名刺を渡す。

 

「天に輝く七星の元、友情の可能性を求め流離う紳士です」

 

キリハ嬢・サクラの二人が、さしだされた名刺を見て、不思議そうな表情をする。

 

「"七星食品(セプテントリオン)、麺'sワーカー、ロジャー・サスケ"ですか・・・」

 

苦笑された。あ、そうか。忍者に名刺は無いのか。ちなみにそんなもあるかとツッコミ入れてきそうなうちは少年は、あちらで絶賛昏倒中。うめいているが、無視する他ない。そりゃあ、キスマーク付けられたら悪夢も見るだろうしなあ。

 

今はそっとしておいた方が彼のためである。

 

と、いうことでこの場は去ろう。

 

「いけません、そろそろ時間のようです」

 

「え?」

 

「それでは、美しいお嬢さん方………縁があれば、またどこかで」

 

 

颯爽と、その赤いマフラーを風にたなびかせて、去る。

 

 

 

 

 

 

 

「ロジャー・サスケね………格好良いってああいうのを言うのかな」

 

「ちょ、サクラちゃん正気に戻って!?」

 

サクラは混乱している!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、二人と合流した俺は、元の姿というか変化体(春原ネギ)に戻り、さっき負った傷を治療する。

 

「あー終わった終わったきもかった。で、どうする?」

 

取りあえず変態の危機は去った。まあ、キリハ嬢その他一行だけだが。

少しだけ様子をみるか。

 

またイレギュラーがあるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死の森の中を疾駆する。

 

先ほどの消写顔を使われた、草隠れの下忍の死体。あんな術を使うのを、私は一人しか知らない。

 

大蛇丸。

 

………戻ってきているのだ、奴が。かつては師とも呼んだ彼が。

ならばかつては弟子であった私が始末をつけなければならない。

そう決意して、私は全速で森をかけていた。

 

(………ん?)

 

その時だった。森の一角、ひらけた場所に立っている、変な物体を見つけたのは。それは、白く包まれた、蝶の繭のような塊だった。どうしたことか、近づくと同時に、白く発光している。

 

その様は、凄く綺麗だった。

 

数秒後、その輝きは収まった。そしてゆっくりと、繭が破ける。

 

 

「………蝶々?」

 

まさに芋虫から蝶になる様相。思わずつぶやいてしまった私の前で、まゆの何かが現れた。そのあまりにも神々しい光景に、私は一瞬時間を忘れた。

 

 

 

 

―――――でも。

 

 

 

 

 

そこに現れたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、大変な目にあったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全裸の大蛇丸だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はクナイを持ち、叫びながら突進した。

 

………色んな意味で、裏切りやがって!

 

大蛇丸がこちらに気づき、慌てて構える。

 

「なっ、アンコ!?」

 

だが構うことなく、私は突進しながら叫ぶ。

 

 

 

 

「この、変態が―――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから少し離れた場所。

 

 

「サスケ君、起きないね」

 

「あの大蛇丸ってやつに、術を……見たことも聞いたこともないけど、何かを仕込まれたんでしょ? 取りあえず、目を覚ますまで待つしかないね。迂闊に動かすと危険かもしれない」

 

「うん。えーと、キリハってあの大蛇丸って変態なおっさんと知り合いなの?」

 

おっさんって、と呟きながら私は苦笑を返す。

 

「あの人は………元だけど、木の葉の三忍の一人だよ?」 

 

知らないのと聞くと、サクラちゃんは知らないと首を横に振った。まあ、仕方ないのかもしれないけどね。

 

「有名な忍びだよ。今は抜け忍になってる。私も、自来也先生のおじちゃんが話しているのを聞いたことがあるだけで、どういう術を使うのかはよく知らないんだけど」

 

「やっぱり強いの? 波の国で会った、あの再不斬って抜け忍よりも」

 

サクラちゃんは先ほどの事を思い出し、身震いをしている。死をイメージさせられるほどの殺気だったらしい。それは、私にも分かった。遠くからでも分かる醜悪なチャクラと、異質な存在感。

 

「うん。桁違い、と言っていいかも。私達じゃ………例え相手が両目瞑って両足縛られてても勝てないと思う。純粋な力量でいえば、今の三代目のおじーちゃんより上かもしれない」

 

最盛期ならともかく、チャクラ量も衰えしかも実戦から遠ざかっているおじーちゃんでは、きっと勝てないだろう。昔にあったとある事件が原因で、その衰えが進んだと言われているし。もっとも、その事件については箝口令がしかれていて、私でもその詳細は分からなかったのだけど。

 

(何なんだろうな………私が知ることのないよう、特に注意を払っていたようだし)

 

カカシ先生も、自来也のおじちゃんも、火影のおじーちゃんも。

そして、猪鹿蝶のおじさん達も。私の顔を見て、辛そうな顔をする時があった。

 

その答えが、その事件がなんだったのか。あの大蛇丸が言っていた事が本当ならば、全ては繋がる。繋がってしまうかもしれない。

 

そう考えていると、サクラちゃんに大丈夫?と言われた。

顔に出ていたのかもしれない。

 

「キリハ………もしかして、大蛇丸が告げたあの戯言を信じてるの? キリハにお兄さんがいたってこと」

 

「ん………困ったことに、そう考えれば納得できる部分もあるんだよ」

 

大蛇丸は言っていた。兄は、木の葉の暗部に殺されたのだと。

 

「まさか、でしょ? だって、キリハのお兄さんってことは、四代目の息子じゃない。そんな事あるわけ無い」

 

「そうだね………まあ、それはともかく」

 

「え、急に立ち上がってどうしたの?」

 

気配に気づいたと同時。私は傍にある石を掴み、その方向へと投げつけた。そして、告げる。

 

「そこの人達、いい加減に出てきたら? 女の子の話を盗み聞きするなんて、マナーがなってないよ」

 

聞こえる息遣いとわずかに見える姿は3つ。私でも分かるぐらいだから、手練ではないようだけど――――

 

「いやいや、流石は四代目火影の御息女。バレバレでしたか」

 

―――額当てを確認。一次試験でちょっかいをかけてきた音隠れの忍びか。特別、強いと思えるような気配は感じられない。数年前に模擬戦で対峙した、日向のネジ君にも遠く及ばない。

 

「へっ、こんな甘い奴ら俺一人で十分だぜ。なあ――――」

 

雑音は無視して、考える。なぜ私たちを狙ってきたのだろう。タイミングと言葉から、推測してあたりをつける。状況、時、そして言動。

 

つまりは、このタイミングで来る、ということは答えは一つか。私は自分を無視したのが気に入らないのか、目をしかめる単純そうな男の言葉に口を挟む。

 

「大蛇丸の差金ね?」

 

相手が更なる言葉を発する直前、差し込むように言葉を入れたのだ。会話の呼吸を読んだその一言。黒髪のツンツンは即座に反応できず、一瞬硬直した。

 

その顔に浮かんだ驚愕の色に、私は確信を持った。

 

「当たり、か………音隠れの里って、新しい里のようだけどもしかして創設者は?」

 

続く私の言葉を聞いて、ツンツンとくのいちの方は動揺を隠せていない。いや、包帯を顔に巻いたやつも動揺している。三人とも、未熟だね。これなら、サスケ君が目覚めなくて2対3になっても勝機はあるか。

 

「キリハ」

 

サクラちゃんが立ち上がる。先ほどの大蛇丸との対峙で、随分と消耗していたけど………その疲労から、若干だが回復はしているよう。

 

私は無言で、サクラちゃんは後ろの方向をちらりと見る。サスケ君はまだ起きる様子はない。つまり、ここは自分たち二人でどうにかしないといけないってこと。

 

目配せをして、頷き会う。そして、二人揃って、拳を突き出す。

 

そして『倒す』という意志を乗せた、戦闘開始の言葉を告げる。

 

 

「準備OKよ?」

 

「私達に勝てると思うのなら、かかってきなさい・・・!」

 

 

背後で未だ眠る仲間を守るために。

 

私たちは、武器を取り出し戦うための体勢に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木の葉の死の森の中。ウチらは、大蛇丸さまの緊急指示で捜索をしていた。

 

「……大蛇丸様、随分と怒っていたな」

 

「珍しくな。それよりもクソネズミ共を速く見つけようぜ、デブ。長居しても意味無いしな」

 

「多由也………いつも注意しているが、女がそういう言葉をあんまり」

 

「いいから、行くぜ二人共」

 

命じられたのは一つ。波風キリハを襲っていた、大蛇丸様の口寄せの蛇を倒した下忍を追えとのこと。大蛇丸様が言うには、蛇は何かに怯えていたらしい。ともすれば中忍をも倒せるあの蛇があれほどまでに怯えることはあり得ない。

 

もしかしたら、他里の者も入り込んでいるかもしれない、とのこと。他に原因があれば、それを見つけないといけないのだ。木の葉崩しを控えている今、余計な因子は取り除いておかなければならない。

 

数分ほど気配を探って、森の中を探し回る。やがて、ウチらはある気配を察知した。

 

「お、もしかしたらあいつらか?」

 

何故か森の中で競歩をしている二人。そして、ため息を吐きながらその後ろを歩く、着物を着た童女を発見した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気配を感知する。異様なチャクラだ。だけど気づかない振りというか今は競歩に夢中なので無視して、俺はその人物が登場するのを待った。

 

「おい、そこのクソ馬鹿共」

 

「「何でしょう」」

 

マダオと一緒に即答する。突っ込み待ちだったので、その突っ込みの言葉に即座に反応してしまったのだ。

 

木の枝の上に立ちながら声を発した女の子は、俺たちの返答に変な顔をした。

やがて、ため息をついた後、そこから地面に降り立った。

 

「親方! 空から女の子が!」

 

「待て、パ○ー、よく見ろ。残念な事に男つきだ」

 

マダオの言葉に待ったをかける。後ろに、デブと片目を髪で隠した男がいる。

え、もしかして音の4人衆?何でこんなところにいんの?

 

そんな俺の混乱をよそに、左近らしき男が酷薄な笑みを浮かべる。

 

「けっ、こんな間抜けじゃあり得ねか………次郎坊」

 

「何だ?」

 

「こいつらの始末を頼む。姿を見られたからな。一応、始末しておいてくれ」

 

いや、姿見せたのそっちじゃん!?

と突っ込むが、華麗にスルーされた。おのれ左近にうんこ。

 

「………なんかすごい弟がムカついているんだが。お前なんか言ったか」

 

「いえ、何も」

 

「まあ、いい。どのみちお前はここで終わりだ。多由也、ここはほっといて先に行くぞ………どうも、あっちの方で戦闘をしているらしい」

 

「一応、見に行かなきゃならねーか。仕方ねえ」

 

そういって、口の悪いくのいちと鬼太郎な顔色悪い忍びの二人は去っていった。

残るのは、腕を組んで自信満々そうに俺たちと対峙するデブ。

 

「悪いが、お前達にはここで死んでもらう。何、一対三はハンデだと思っていい」

 

自信満々にチャクラを解放する次郎坊。これもう、どうしようもねえんじゃね?

目配せをすると、二人は処置なしと首を振った。

 

「さあ、かかってこい!」

 

…………沈黙せざるをえない。どうも彼、1対3とはいえ、下忍風情に負けるとは微塵も思っていない様子。ならもういいかあ。

 

「どうした、怖じ気づいたか―――――って速ッ!?」

 

ボコ、ガス、ドカ、ドン、ゴス、ドキャ、ポン、ポカ、メメタァ!

 

取りあえず、しばらく起きられないように三人でボコっておきました。

まあ、殺してませんよ一応。あとあと面倒になりそうなんで。

 

「うん、仮にも忍びなら、相手の力量を見定めてからものを言おうね!」

 

「見た通り、アホとしか思えなかったんじゃろ」

 

「「ごもっともだね!」」

 

マダオと二人で親指を立てる。キューちゃんなにやら疲れた様子。ま、それは置いといて、向こうの方でドンパチしてるそうですから俺たちも行ってみますか。

 

っていうかまたイレギュラーかよ。勘弁してくれよ。

 

 

間もなく、現場に到着した。高い樹上から、戦場を見下ろす。

マダオとキューちゃんは下で待機中。

 

辿り着いた時、決着がついていたのは、一人だけだった。

 

一人は犬神家の一族のような格好で、地面に突き刺さっていた。見るに、音隠れの下忍の一人らしい。もしかしたら表蓮華が完全に決まったのか。原作通りに眉毛君ことロック・リーが助けにきたのか。でもリー君は術の反動か、膝をついて立ち上がれないよう。

 

なんか、シュールな光景だな。

 

残りの二人は、まだ戦闘中。キリハ 対 トンガリ。名前なんだっけ。ともあれ右手で幻想を打ち殺しそうなトンガリコーンな黒髪君が、両腕から衝撃波を乱発してます。

手から放屁?

 

それを華麗に避けながら、衝撃波の影響範囲をさけるように弧を描く軌道で手裏剣を放ち、当てるキリハ。華麗だ。というか、初見で影響範囲と弱点を見抜いているとか、どんだけ才能あんだよぅ。

 

あと、キリハの華麗な立ち回りに、下のマダオが静かに興奮している模様。

ちょ、うるさいよ。見つかるだろ。

 

残る一人は、サクラと正面から殴り合いの戦闘中。地味すぎる。

 

多由也、左近・右近の二人はまだ潜んでいるようで、戦闘を観戦中。

割り込む気は無いのか――――と思っていた所、動いた。

 

ある程度回復したのか、リー君がサクラの援護に入ろうとした時。

 

多由也、左近と彼の中に融合している右近がようやくといった感じに動いた。

 

「くっ、新手………!?」

 

キリハが嫌悪感を顕に叫んだ。口寄せ蛇くん、大蛇○という嫌な相手との連戦の少し後だから仕方ないね。疲労がピークに達しているのだろう。それはサクラも同じらしく、肩で息をしている。

 

そこで、新たな登場人物が。

リーのチームメイト、ネジとテンテンが応援に駆けつけた様子。

 

………これは、不味いことに。

片方は木の葉の下忍最強。片方は、ともすれば特別上忍相手に勝ちを拾える手練。

 

このままでは、双方に相当な被害が出る様子。あまり、原作の展開から外れるのは不味い。特に音の四人衆だ。こいつらがここでやられると結界がどうなるか分からない。

あるいは、木の葉崩しの作戦に影響しかねない。

 

 

(ここは一肌脱ぎますか)

 

 

激突は避けた方がいい。そう思って、懐からあるものを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、新手………!?」

 

 

気づかなかった。この距離で全く気取らせないとは、かなりの手練であることは疑いようがない。

 

リーさんの仲間も来たようだけど………この新手、なにか嫌な感じがする。

肌にひりつくような、『どこか違う』気配とチャクラ。先ほどの大蛇○ほどではないけど、上忍や特別上忍とはまた違う、でも同質の“外れた”気配を感じる。

 

容姿から、年はそう変わらないと見ていい。

それでも、ただの下忍ではない。勘だけど、間違ってないと思う。

 

(少なくとも中忍レベル。まったくもう、次から次へ、と……!?)

 

この場をどうするか。それを考えていた時だった。

 

空から、笛の音が聞こえてきたのは。

 

 

 

 

 

 

ピロリーリリ、ピロリリリリー。

 

 

間の抜けた音に、場が硬直しました。

 

 

 

「チャルメラ!?」

 

 

 

サクラちゃんも気づいたようです。風に乗って、笛の音が聞こえてくる。

 

何故かわらび餅が食べたく………いや、違う。落ち着け私。

 

敵も、その笛の方角を見ている。ということは、新手ではないのかも。

音の忍びらしき赤髪のくのいちの方が何かを呟いています。

 

え、何、この笛の音は、って何か分かったの。是非とも教えてください。もう今日はいっぱいいっぱい。

 

「っ、あそこだ!」

 

赤髪の新手さんがいち早く音の発信源を探り当て、樹の上の方向を指さしました。

 

そこには、静かに笛を吹く、春原さんの姿がありました。

 

 

やがて春原さんは笛を吹くのを止め、こちらを見つめます。

 

 

「え、なにを―――――っ?!」

 

 

そして、その場を飛び降りました。

 

 

「とうっ!」

 

 

一瞬のためらいもなく、掛け声と共にって、あんなに高いのに!

 

 

 

 

 

 

そして、どこかの英雄のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

回転しながら地上へと舞い降りてくる春原さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、着地した彼は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バナナの皮を踏んで、盛大に転びました。

 

 

 

 

 

 

「大骨折したァ――――! 痛すぎるぅぅぅぅぅゥ! ってお前何すんだマダオ!」

 

私は見ました。着地点に投げ込まれたバナナの皮を。

 

(見事なバナナ投擲術………! って違うよ私、落ち着け私、逃げるな私)

 

現実逃避しようとする本能を抑えこむ。しかし、続く言葉には黙らざるをえなかった。

 

「いや、ネタ振りかと思って」

 

「……………」

 

ぎゃーぎゃ言いながら喧嘩する二人と、その傍らで沈痛な面持ちを浮かべながら眉間を抑える可愛い少女。

 

あまりにも、あまりに過ぎる光景。

 

誰も、言葉を発せません。

 

 

「なにコレ。え、ドッキリ?」

 

 

サクラちゃんが、その場にいた全員の心の声を代弁しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室の中。部下からの報告を聞いたワシは、心の動揺を抑えきれなかった。

 

「………何?」

 

部下からの報告に、本当なのかと聞き返す。

 

「はい。どうも、幻術では無い様子で」

 

「そうか………大蛇丸が」

 

部下がいうには、みたらし特別上忍からの報告とのこと。まず最初に、消写顔の術を使われた下忍の姿を確認した。そして先ほど入った報告では、直接の戦闘を行ったと。最終的には逃げられたらしいが、アンコは瀕死の状態だったらしい。

 

と、すれば間違いはないだろう。大蛇丸がこの試験に潜伏しているのは。

 

「どうやら、覚悟を決めねばならぬか」

 

一時だが、四代目に火影の座を渡して。そして、火影を辞してからだ。ワシには、何も成せなかった。四代目とクシナと九尾。うちはも、大蛇丸も…………そしてあの二人の忘れ形見である、うずまきナルトの事も。

 

(だが、弱音を吐いてはおられん。一つでも多く、片を付けねばならん)

 

時代に遺す者として、それだけはしておかなければならない。今だ消えてはいない、火の意志が胸にあるのを感じ。

 

ワシは来るべき時のために、すべき事を胸に刻み込んだ。

 


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