小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

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7話 : 運命の橋の上で

 

「通りすがりの………ラーメン屋さんよっ!」

 

 

    ~小池メンマのラーメン日誌外伝

 

         「死闘!砂の里~赤い狐と緑の狸~」より一文を抜粋~

 

 

 

 

 

「うどんやがな!」

 

『急に何?』

 

いや、神からの啓示が。

 

『それよりも、いよいよ大詰めだよ』

 

未亡人を助け、辿りついた希望の橋の上。そこには秘術・魔鏡氷晶を繰り広げる白さんの姿が。凄いです。速いです。

 

でも、鏡の中にいる二人を仕留めきれてない。

 

「おっと、サスケ君ようやく覚醒したか」

 

おたまじゃくしが目の中に。流石、天才(笑)。原作ならお荷物なナルト君がいてどうこうなるけど、現実は非情。むしろここにいるというか。

 

キリハ嬢とサスケ少年、二人とも何とか避けているよう。てかキリハ嬢てば避けるの上手いよ畜生。動体視力と反射神経、それについていけるだけの身体能力もある。

 

危なそうだったら割ってはいる気でいましたが、二人とも大丈夫そうです。

 

え、サクラは? 

霧で見えません。

 

さて、白対サスケ・キリハですが、決着がつきそうにありませんな。

 

(互いに決定打に欠ける、か)

 

白は千本による包囲攻撃。しかしそれは致命打には至らない。キリハとサスケは白の氷の鏡を割れるだけの威力がある術を持っていない。

 

それから数分が経過した。状況は変わらない。ただ避け続けた二人と攻め続けた一人、どちらの息も上がっているようだ。かなり体力とチャクラを消耗しているのだろう。

 

(そろそろ、辺りへの注意力が散漫になってきた頃か)

 

『割って入るなら今だよ』

 

よしきたと、影分身を一体派遣する。気配を殺しながら瞬身の術を使い、一瞬でサスケとキリハの背後を取る。

 

そして首筋に、手刀の一撃。

 

「ガッ!」

 

「えっ!?」

 

避ける間など与えない。サスケとキリハの二人を一瞬で昏倒させた。

 

「な、何者ですか!?」

 

突然の乱入者。全く気づかずこの距離まで詰められたという事実に驚いた白が、まだ鏡の結界の中に居る俺に、混乱しながらも攻撃を仕掛けてくる。

しかし、遅い。下忍にしては上等な部類だけど、俺の目には見えている。

 

「なっ!?」

 

死角からならばともかく、直線的な攻撃ならば反応は可能。

攻撃に来たその腕を掴んだ。

 

(術を出した直後なら、こうも容易く見切れなかっただろうけど)

 

術を行使し続けたせいで、スピードはかなり落ちている。この程度ならば、見切ることは可能だ。

 

「くっ」

 

だがそこで降参するわけもなく。白は経験したことのない事態に陥ろうとも、狼狽えずに即座に反撃に移った。掴んだ腕に白の千本が刺さった―――――が、効果はない。

 

(なぜなら、それは本物じゃないので)

 

煙になって消える体。再度の驚愕に白は硬直する。

 

「影分身、っうしろ――――!?」

 

「隙あり!」

 

同時に、背後に潜んだもう一体の影分身が白に一撃を与える。

さきの二人と同様に、白も気を失って地面に倒れる。

 

『ここまでは予定通りだね』

 

「なら仕上げに移るとしますか」

 

カカシ先生よお、忍法口寄せ・土遁追牙の術は出させないぜ!

建設中の橋に穴開けるとか何考えてんだ!

 

複数の忍犬が小規模トンネル工事とかあんた。

断面欠損でもう、あれである。強度的にぼろぼろになっちまう。

 

補填しても駄目なのである。そこに応力が集中して、荷重が掛かる毎にヒビが入ってしまうのである。前世の店の常連客から聞きました。

 

本格的な立て直しが必要になるそうです。それはダメすぎる。文字通り、危ない橋は渡れませんので。建設物は信用が命ですよ。文字通り命あずけるってのに。

 

(というか、希望の架け橋っつてんだろ! 穴開けるなよ!)

 

と言っても、やることは変わらず。まずは影分身を複数体だし――――

 

(包囲完了)

 

まだ戦っている二人から離れた位置に、半円に囲むように影分身を複数配置。

そのまま遠くからクナイを投げる。投げる。投げる投げる。

 

投げ投げイェイ。投げ投げイェイ。

 

気配でサクラとタズナの場所は大体分かるので、そこは避けて桃地君とカカシに向けてクナイというクナイを投げ続ける。

 

不意打ちかつ常軌を逸した一斉射攻撃に、やがて二人の動きが止まった。

 

『うん、それでいい』

 

万全の状態ならともかく、疲労した再不斬とカカシなら正面から戦えば勝てる。

でも、時間がかかる。流石にこのクラス二人を昏倒させるのは容易ではない。

 

というか、橋が傷つく。それは避けたいので搦め手で目的を達成する。忍者は裏の裏を読め、っていうしね。

 

ガトーの方の仕込みは成っている。影分身からの報告はあった。

 

それまでは投げる投げる。当たらないけど――――意味はある。

 

「くそ、この、誰だぁ!?」

 

「チィ!」

 

叫ぶ桃地君に、舌打ちするカカシ。カカシの方は焦っているように見える。三人の気配が消えた事に気づいたのだろう。

 

それはともかく、投げる。やれ投げる。それ投げる。

やがて、辺りに漂っていた霧が晴れはじめる。

 

(隠れるか)

 

霧隠れの術の効果が薄れていることを感知し、俺は“クナイに変化した”。

 

そして――――霧が晴れる。

 

そこには弾き飛ばされたクナイの群れがあるばかり。

木を隠すなら森である。

 

「………クナイだけ、だと?」

 

「キリハ、サスケ?!」

 

襲撃者の姿が消え、クナイしか見えないせいか、再不斬は混乱し。

 

写輪眼を俺に向ける余裕もなく、昏倒して横たわっているキリハとサスケに注意を向けるカカシ。

 

そこに、向こうから武装した一団がやってきた。

いいタイミングだ。

 

「みつけたぞ、鬼人!よくもやってくれたなあ」

 

「………何?」

 

「とぼけんな! ガトー社長殺ったの、てめえだろ!」

 

激昂しながら、汚い言葉を並べ始める。何でも、雇われた用心棒達が依頼を受け、再不斬・白以外の抜け忍を殺して―――――でもガトーの拠点に戻ってきた時には既に社長の首と胴体は別れていたらしい。

 

「チィ、どういう事だ?」

 

横目で再不斬を見るカカシ。だが、違うと思ったのだろう。抜け忍にしろ、依頼人を何の理由もなく裏切るのはあり得ない行為だ。

 

そんなことをすれば信用を失い、二度と仕事がこなくなってしまう。忍者は意外なことに、依頼主に対する信用が第一なのだ。

 

しかし無頼の用心棒達は気づかない。否、金を受け取れないことに頭が沸騰して血の巡りが悪くなっているのだろう。

 

「取りあえず、手前らは死ね!」

 

話をしても埒があかないと判断したのか、再不斬は用心棒の群れに飛び込んだ。

 

カカシも同時に動く。

このまま用心棒の一団が橋に殺到すればキリハとサスケが危険だと判断したのだろう。だから先に戦闘不能にする。ここらへんの判断の速さは流石の業師といったところか。

 

さて、上忍二人対用心棒だが――――所詮はチャクラも使えない荒くれ者。

しかもはたけカカシと桃地再不斬と言えば、忍界でも歴戦の勇に数えられる強者。

 

他国に名が知れ渡っている程に強い二人だ。端から勝負にもならない。用心棒達は触れることもできずに一人、また一人と倒されて――――

 

(準備よし、位置もいい)

 

用心棒の最後の一人が倒されたと同時に俺は変化を解いた。

 

(機を作り、会えば逃さず敏となれ!)

 

「なっ?!」

 

変化を解くと同時、無防備になっている再不斬を背後から一撃。

有無を言わさず、昏倒させる。

 

「………何者だ?」

 

静かにこっちを見るカカシ。今の攻撃を見て、こちらを手練と思ったのか、その目には写輪眼を浮かべている。

 

雷切で一気に間合いを詰めて仕留めようというのか。

 

(対処は可能だろうけど、しくじれば傷になる――――でも、こうすれば動けないよな)

 

と、俺は倒れているキリハとサスケ、タズナと彼を守っているサクラ。

とどめに、“地面に落ちているクナイ”に視線を向けた。

 

「クッ………!」

 

『流石に、瞬時に察したようだね』

 

強者は頭の良い奴が多いから助かる。こちらの視線の意味を正確に理解したカカシは、重心をつま先ではなく、踵に戻した。

迂闊に動けないこと。そしてカウンターを狙う方が良いと判断したのだろう。

 

(そう、橋の上にクナイが多く転がっていて。先ほどのように変化した俺が、そのどれかに潜んでいれば――――)

 

人質を取られる可能性がある。そうなれば、カカシに勝ち目はない。つまりは、後方にこそ注意を向ける必要があるいのだ。ここで突っ込むのは愚の骨頂。

 

カカシであろうとも、この状況を前に一人では対応仕切れまい。俺の力量を察しているのなら、もうその場から動けないはず。

 

(うまくいったな)

 

『うん。裏を読ませて動きを封じる。勝っても得られるものはない。無理はする必要ないよ』

 

戦わずに目的を達する。重しがあるので、それをつつけば動けなくなるのは道理だ。

事実、同時に2ヶ所を守るのは不可能。

キリハ・サスケと、サクラ・タズナ間の距離は開きすぎている。

 

どちらもカカシにとっては失えない大切な存在だ。後は黙って去るだけでOK。

もう、俺を追ってこれない。発案は元師匠のマダオだが、流石元火影。あくどいね。

 

『君も戦いたくなかったんでしょ?』

 

(ああ、木の葉の業師………いざとなったら、何やってくるか分からんしな)

 

千の術とか真正面から対応するの嫌です。

戦わずに済むのなら、それに越したことはない。

 

(退散しますか。目が怖くなってきたし)

 

白はもう、移動させたのでいない。

 

俺は倒れる再不斬を無言のまま抱え、何も告げずにその場を去った。

 

 

 

 

後方で、安堵の息をこぼし、膝から崩れ落ちるカカシの気配がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごたいめーん。睨むなって怖いから。

 

「で、何者だてめえ?」

 

「九尾の人柱力です」

 

いきなりぶっちゃける。再不斬はいきなりの言葉に固まった。

 

「あの、人柱力とは一体なんでしょう?」

 

知らないのだろう。白が戸惑うように訪ねてくる。

 

「その名の通り、人柱みたいなものかな。尾獣と呼ばれる妖魔を憑依させる事によって、莫大なチャクラを持つ化け物みたいな存在を作り出す………一言でいうと、人間兵器?」

 

白の顔が真っ青になる。過去の事を思い出したのだろう。

すまんね、嫌なこと思い出させちまって。

 

「証拠は?」

 

信じられない、と睨んでくる。まあ、当たり前か。四方に結界を張り、最小限だが九尾のチャクラを引き出す。何かこのチャクラ黒くないし、純粋な九尾のチャクラっぽくないんだけどね。でも威圧感はそう変わらない。その圧力に、二人は圧倒されているようだった。

 

「………本物か。あの野郎に似てやがる」

 

「それで、どうです?」

 

「一応は理解した。でも解せねえな。九尾と言えば木の葉隠れが保持する尾獣だろう。何故、木の葉の忍びであるあいつらを襲う。そもそも、俺たちをここに連れてきた理由、そしてあそこにいた理由は何だ?」

 

おお、頭の回転が早い。用意していた答えを返すだけでいいとは。

嘘のないよう、率直に、端的に、言葉を重ねる。

 

「昔に、とある暗部というか、里の忍びに危険視されてね。殺されそうになって何とか生き延びて、それで今現在まで絶賛逃亡中なわけ。木の葉隠れの暗部とかは、今頃血眼になって俺の事を探してるだろうけど、見つかってやる義理もないし」

 

白の顔がまたまた白くなる。うーん、トラウマというか古傷抉っちゃうなあ。

 

「ま、取りあえず盲点突いて木の葉の中で生活してるから見つからないんだけど」

 

「木の葉に? ………どうやってだ」

 

「百聞は一見にしかず、と――――変化」

 

といって、また別の姿に変える。

とはいっても、まだ小池の姿は見せないけど。

 

「これは四代目火影が発案した特製の変化術でね。影分身を応用している。まあ、馬鹿みたいにチャクラを食うから使用者は限られるよ」

 

白眼でも見切れない影分身を応用したこの変化は、滅多な事では見破れない。

 

その上、最近だけど変化を補助する術を組み込んだ札の開発も成功した。

短時間だが、姿を変えられる優れものである。

 

「ちょっと待て。四代目火影といえば12年前に死んだはずだ。何故、手前が四代目火影の忍術を使える?」

 

「ん? 精神の中に入り込んでるから。封印術式の中に組み込んだんだろうねえ」

 

そこらへんは天才と言わざるを得ない。

本人見ると甚だ疑問に感じる時が多々あるが。

 

「何なら、教えてあげるけど?」

 

「………待て。お前、一体何が目的だってんだ」

 

話がうますぎる。それに話過ぎていると思ったのだろう。

眉なしさんのチャクラが危険な色を帯びてきた、そこで次の一手だ。

 

「ちょっと頼まれて欲しい事があるんだけど」

 

「……聞くだけなら聞いてやる」

 

「暁、って組織知ってる?」

 

「いや、聞いたことがないが……」

 

やっぱりか。自来也でやっとだからな。知らないのも無理ないか。

 

「構成員全員がS級指名手配の化け物集団なんだけどね。何とその組織には、かの霧隠れの怪人も所属しているとか」

 

「何、あの野郎が!?」

 

水の国の大名を暗殺した、S級指名手配犯。忍び刀七人集の一人である。

 

「変化しながら動向探ったけど、どうも人柱力狙ってるらしいんだよね。そこで、僕としては少しでも護衛が欲しい」

 

嘘を混じえて提案をする。だが再不斬はけんもほろろにノーを返した。

即答である。誰の下にもつく気は無いということか。

 

「なら、取りあえず前金で五十万両」

 

「断る」

 

「任務持続の中払いで、四代目火影の術三個」

 

「………」

 

「そして成功報酬は――――先代水影の正体でどない?」

 

「!!?」

 

再不斬はその言葉に劇的に反応する。

一瞬で首切り包丁を振って、こちらの首筋にぴたりと添えてきた。

 

それでも臆さず、正面から見返した。

 

「何のつもりだ………あの野郎の正体、だと?」

 

「うん、正体。その言葉の意味には気づいているんでしょ?」

 

「………どういう事だ、何故知ってやがる?」

 

「それを話す程、僕は間抜けに見えるのかな?」

 

カマをかけてくるが、乗らない。あえて誤解させる。

言葉に断定的なものは出さない。まだ交渉の途中だ。

 

「さて、これ以上続けるには明確な返答が必要なんだけど――――」

 

最終通告の意味を兼ねて、目を見る。

再不斬はしばらくの間こちらの目を観察して、やがて息を吐いた。

 

「……受けてやる。どうせ、コレ以外に道はないしな」

 

流石に乗ってくるか。まあ、依頼主のガトー社長殺したので、信用がた落ちだからね。

受けるしかないんだけどね。え、あのグラサン誰が殺したかって?

 

お察し下さい。抜け忍組織のブラックリストにも入っていたようだし、一石二鳥ってやつです。下衆に情けをかけるほど博愛主義者でもありません。

 

『ふん。言わずに、誤魔化して協力を得るって方法もあったと思うのじゃが』

 

(それはちょっと。別の意味もあるし)

 

これは、いわば保険である。裏切らないための、保険。

旨味を見せれば、人は黙る。それ以上の不満が無い限り。ラーメンと一緒だね。

 

「じゃあ、自己紹介といこうか。桃地再不斬と、白嬢で良いんだよね?」

 

さりげなく白さんの最終確認。

 

「ああ」

 

「はい」

 

 

キタァ━━━(゜∀゜)━( ゜∀)━(  ゜)━(  )━(  )━(゜  )━(∀゜ )━(゜∀゜)━━━!!!!!

 

 

 

『でも、ねえ』

 

(ん?)

 

『いや、ね。どう見ても白って娘が………恋する乙女にしか見えないんだけど』

 

(何が? 誰が? 誰に?)

 

『ほら、白ちゃんと桃地君、見てみたら?』

 

「………………………ふんぐるい」

 

「何を言っている」

 

「いえ、何にも」

 

SAN値チェックに失敗しまして。

 

(くそ、そういうオチか! ちくしょう!)

 

神は死んだ。死んでないなら俺が殺してやる。

 

ともあれ、本物の看板娘で、かつ癒し系は確保できたから良しとしよう。

修行しながらでも、店にも出て貰うつもりだし。

 

まあ、当初の予定はクリアしたか。血涙が止まらないが、ひとまずは良しとしよう。

 

という事で変化を解く。

 

そういえば、人前で元の姿になるのは本当に久しぶりだ。

 

 

 

「うずまきナルトこと小池メンマだ、よろしく」

 

 

 

どう見ても白より年下である、子供な俺の姿を見て。

 

二人の新しい仲間は、その場に呆然と立ちすくんだ。

 

 


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