鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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二話

残念なことに。

非常に残念なことに、ガキンチョとはあの夜の二日後に再会した。

町の往来のど真ん中で。

 

「あ……」

「……げっ」

 

どうやら顔を覚えていたようだ。

どこかに向かっていたのだろうか、足を止めて俺を見つめる。

 

「……あの」

「……ッ!」

 

ガキンチョが口を開こうとする。

その前に俺は『でんこうせっか』で来た道を逆走した。

 

そう、奴との二度目の遭遇は無事に事なきを得たのだ。

得たのだが……問題は三回目のエンカウントだった。

 

 

 

 

 

「あの……生徒手帳、落としましたよ」

「ん? あ、どう……も…………」

 

振り向くとやつがいた。

その手には俺の生徒手帳。

先ほどの声はこいつのか……!

 

「なん……!?」

篠崎(しのざき)チヒロさん……ですか。変わったお名前ですね」

 

名前を知られてしまった。

いや、まだだ。まだ焦るような時間(タイミング)じゃない。

名前だけ知られたところでーーーー

 

「へぇ……あの高校に通っているんですか。すごいですね」

 

オワタ。

 

「あ、あぁ、拾ってくれてアリガトウ! 拙者用事があるのでこれにて……」

「あ、待ってください!」

 

ガシッと腕を捕まれる。

何この子……力強い。

 

「あっ……その……申し訳ありません!」

 

顔を真っ赤にして腕を離す。

そして姿勢を正すと頭を下げた。

 

「申し遅れました。私、St.ヒルデ魔法学院中等科一年、アインハルト・ストラトスと申します」

 

ガキンチョはストラトスちゃんと言うらしい。

ストラトスちゃんは頭を下げたまま続けた。

 

「先日は手当てをしていただきありがとうございます。ただ……恥ずかしながら意識が朦朧としていたので、手当てをして下さったのがあなただという確証がないのです。その確認も含めてご挨拶に……」

 

ゆっくりと顔をあげ、そして固まる。

 

「……え?」

 

ーーーー俺はとっくに逃げ出していた。

 

 

 

 

 

「そこから俺とストラトスちゃんの追いかけっこが始まったんだ。それはまるで……そう、三世ととっつぁんのような……!」

「そろそろ現代に戻ってきてください」

 

あぁ、現実逃避もここまでか。

このまま過去編とか突入しない?

 

「やりません。今日という今日はきちんと話をしましょう」

「えー……」

 

やだよぅ。

ボクおうち帰りたいよぅ。

 

「今日はちょっと用事が……」

「ないですよね? 今日はこのまま自宅に帰り夕飯までネットゲームをして、その後に生物と数学の宿題をしてから入浴、就寝する予定のはずです」

「待って待ってストラトスちゃんちょっと待って」

 

え?

なに? どういう事?

なんで知ってるの?

 

「調べましたから。チヒロさんはすぐ逃げてしまうので情報は貴重な戦力です。数日、後をつけた甲斐がありました」

「知ってるかい? 世間一般ではそれをストーキングと呼ぶんだぜ?」

 

どうやら話を聞いてやらないとマジでヤバいらしいな。

俺のプライバシーが。

 

「ふぅ……わかった、わかったよ。話を聞いてやるから……その前に汗を拭け」

「……わかりました」

「あ、いや待て。拭いてやるから目ぇ閉じろ」

 

ストラトスちゃんは額に汗をかいていた。

まぁ、あれだけ全力疾走すればそうなるだろうな。

ポケットからハンカチを出す。

 

「あ、その……」

「人の好意は素直に受け取れよ、ガキンチョ」

「……で、では、その、お願いします。……それから子ども扱いしないでください」

 

ストラトスちゃんはそれだけ言って目を閉じる。

 

「よし、拭くぞ?」

「は、はい……」

 

俺はハンカチをストラトスちゃんの顔にーーーーめがけて投げつけた。

ついでに彼女の靴紐をほどいてから走り出す。

 

「わぷっ!?」

「ワハハ、愚かなり!」

 

ストラトスちゃんはハンカチを顔から取り、走り出そうとした。

だが靴紐がほどかれていることに気付き、こちらを恨めしそうに見つめる

 

「じゃーなー、ストラトスちゅわん! もう学校来んなよ!」

「待ってください! 私……私!」

 

もう遅い。

貴様ではとうてい追い付くことはできぬ。

我は帰る。何者も干渉することのできない約束の地へと。

いざ、(エルドラド)へ!

 

「私! ーーーーあなたの家の住所知ってますからね!」

 

くっそぅ。

 

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