魔法世界の混沌   作:逸環

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魔法世界の混沌、始まります!


プロローグ的なの。
死んだ。


思えば、俺の人生は散々だった。

 

いや、散々ではない。

 

無為だっただけだ。

生きているとも言えず、死んでいないだけの毎日。

普通に学校に行って、普通に部活をやり、普通に帰って、普通に遊ぶ。

その繰り返し。

 

ああ、いや。

喧嘩も割りとしょっちゅうやってたか。

一人で、大勢で、タイマンで、一対多で、多対多で。

腐るほど場数を踏んで、その数を少し下回る程度勝ってきた。

勝つための手段は、一切選ばなかったが。

おかげで、今のところ兄貴以外に負けたことがない。

 

え?

勉強しろよって?

無理無理。

俺の辞書に勉強なんて言葉は載っていない。

たぶん昔は載ってた筈だが。

今の高校に入れたのも、奇跡が五回くらい起きたからだし、講義なんて睡眠時間になっている。

 

まだ足掻いていた頃は違ったが、それも何時しか平和で尊い日常の中で、遅効性の毒を盛られたかのようにジワジワと忙殺されていった。

変わらない日常を変えようとしても、何時までも変わることはなかった。

平和は時として毒になるってことが、よく分かった。

 

そして気付けば17歳。

善人でもないから、道で困っている婆さんを見ても助けないし、目の前で子供がトラックに轢かれそうになっても見ているだけ。

それが今の俺という人間。

 

 

 

 

……………そのつもりだったんだがなあ。

なんで、あのガキを助けちまったかなぁ?

 

良心なんて咎めない。

そんな心は持っていない。

そのはずだったのに。

 

…ああ、わかってんよ。

そんなテメエが、

 

 

「ムカつくからだ。こんちきしょー」

 

 

そう呟くと同時に、誰かが駆け寄る足音が聞こえてくる。

痛む身体を無理やり動かし、首を向けと、

 

 

「…あ、ありがとっ」

 

 

そこには、目に涙を溜めながら、精一杯の感謝の言葉を言う少女がいた。

 

………ククッ。

なるほどなるほど。

これまで人に感謝されるような生き方はしてこなかったが、

 

 

「…悪くは…ねえなぁ………」

 

 

ただ、こいつを泣かせてしまうことが、残念といえば残念だ。

俺は、女をベッド以外で泣かせたくはないんだよ。

 

しょうがない。

 

薄れる意識の中、残った力を全部使い口元を歪める。

感覚が消えつつあるから分かり辛いが、おそらくは笑えているはずだ。

もう目も見えなくなっているが、これでお嬢ちゃんが僅かでも背負い込まないようになれば御の字。

 

ああ、ちくしょう。

できるならば、ちゃんと生きて、死にたかった。

 

暗闇に閉ざされ薄れ行く意識の中、最後に聞こえた泣き声が、やけによく聞こえた。

 

 

 

 

 




以前にじファンさんで投稿していたときより、地味に良くなっている第一話。
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