魔法世界の混沌   作:逸環

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エヴァンジェリン視点からスタートです。


あの日から。

「ああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

それは、私に残された、たった一人の家族だった兄様が殺された日。

あの日流した涙を、溢れた慟哭を、私は今でも忘れてはいない。

 

兄を殺した男に生かされ、生きる理由を与えられた。

誇りなど捨て去り、あの日から復讐を遂げることだけを考えて生きてきた。

ある人間はそれを、『戦場なのだから殺し殺されは必定だ』と、『道理を弁えないことだ』と言った。

 

ふざけるなッ!!

 

家族や使用人全ての血を吸い尽くして殺してしまったあの夜から、私には兄様しかいなかった。

世界で唯一、私のそばに居てくれた。

強く、特別で、同じ境遇で、最愛の存在だった。

 

それを殺されたんだ!

 

戦場だから?

道理?

 

そんなもの、知ったことか!!

そんな上っ面だけの、理屈だけの、正しいだけの言葉で、この気持ちも、この苦しみを()くせとでも!?

 

300年程前に遭った、とある転生者の男はこう言った。

 

 

「そんなのはお前ではない!お前は『誇り高い悪』ではなかったのか!?」

 

 

と。

誇りなんて、復讐を誓ったあの日に捨てた。

目的のためには、そんなものは邪魔なだけだった。

 

第一、魔法が使えるというだけで、真祖の吸血鬼だからとはいえ子供の姿のままの私が、独りで生きていくには余りにも障害が多く、そして険しすぎた。

隠れ暮らすだけならば、人の居ない場所に身を隠せばよかっただろう。

しかし、私は復讐を誓っていた。

それを遂げるためには、力をつける他にも、情報や物資が必要となる。

そうすると必然的に、人の近くに居る必要があった。

 

町に滞在したとしても、最初の一年は良かった。

問題はその後の二年、三年、十年。

一向に姿の変わらない私に、町の住人たちはその正体を感づき、攻撃してきた。

そのたびに逃げ、反撃し、そして男も女も子供も老人も関係なく、死体の山を築いた。

 

時には情報を、時には金を手に入れるために、身体を売るようなマネもした。

そして気がついた時には、私の身体は血で、浅ましい欲望で、余すとこなく汚れきっていた。

 

そうまでしてこの500年。

ずっと殺したかった男が、復讐を遂げたかった男が今、私の目の前に立っている。

 

 

「………ククッ!クハハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!」

 

「…ハッ!ハハハハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!」

 

 

今にも触れ合えるこの距離まで近づき、思わずお互いから出た哄笑。

それがなぜ出たのかは、いまいち分からない。

ようやく殺せると、復讐を遂げられると実感したからなのか。

それとも、二度は殺したはずの男が生きているからなのか。

 

ああ、もうそんなことなど、どうでもいい。

 

 

「…コロス」

 

「ククッ。あの時みたいだなぁ」

 

 

500年前のあの日から望み続けた悲願を、叶えるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

~Side主人公~

 

 

「令呪を持てキャスターに命ずる!私を支援しろ!」

 

「ッ!…ラ・ピュセル・メイギス・メイガス!風の精霊17人(セブテンデキム・スピリトゥス・アエリアーレス) 縛鎖となりて(ウィンクルム・ファクティ) 敵を捕まえろ(イニミクム・カプテント)『魔法の射手・戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)』!!」

 

 

令呪によって命ぜられ、おんぶのまま俺に風の捕縛魔法を使うジャンヌ。

確かに、この状態では動けない。

無効化されるため、無意味な攻撃魔法を使わないあたり、令呪の命令はしっかりと機能しているんだろう。

大雑把な命令では対して拘束力もないというのに、エヴァンジェリンの技量の高さが窺えるな。

 

 

「まあ、その程度じゃあ止められないわけだが」

 

「うぉっ?!」

 

 

今度は分体任せにはせず、力で戒めを破り真名を小脇に抱えて駆ける。

そのままこっちに駆け寄ろうとしていたネギたちを、

 

 

「「「「ほぐぅっ?!」」」」

 

「邪魔になるからすっこんでろ」

 

 

結構離れたところにまで蹴り飛ばした。

 

 

「と、父さん?まさかと思うが、私も蹴り飛ばしたりしないな?」

 

「もちろんだとも」

 

 

安心しろ。

蹴り飛ばしたりはしない。

 

 

「そぉいっ!」

 

「ふぎゅっ?!」

 

 

ネギたちのところに投げ飛ばすだけだ。

 

 

「いいかお前ら。危ないから絶対に、これからの戦いに参加しようとかするんじゃないぞ」

 

「で、でも!」

 

「でもじゃない」

 

 

ここから先は、…いや、最初からそうだったな。

 

 

「これは俺たちの問題だ」

 

「………だからあなたたちは、そこで待っていてください」

 

 

500年の因縁に、決着をつけよう。

 

 

 

 




どんなに格好つけても、結局おんぶのままの夫婦。
しまらねえ。
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