魔法世界の混沌   作:逸環

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…時間が、時間がほしい。


当てない拳を当てる。

さて、どうしたものやら。

あれは動体視力を最高レベルまで引き上げる眼だ。

どれだけ速く動こうとも、下手に奇襲をかけようとも、背中から刺そうとしても、その動きを見切られて避けられる。

 

 

「困ったもんだ」

 

「………どうしましょう?」

 

 

耳元で聞こえるジャンヌの声。

鈴のようなその声に耳を傾けつつ考える。

如何にして、あの眼から逃れ攻撃を加えるか。

 

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック『火よ灯れ』」

 

「ま、考える時間なんてくれねえよなあっ!?」

 

 

エヴァンジェリンの詠唱終了と同時に来る火線。

それを体を捻りながら回避し、懐から一枚の札を出して握りつぶす。

 

 

「『六合大槍』」

 

 

煙とともに現れたのは、菫と戦ったときに壊れた槍に代わり作った、新しい槍。

 

 

「なにやらおかしなものが出てきたな?…世界樹の枝で作った槍とは」

 

「これが一番頑丈なんでね」

 

 

壊れない素材を求めて、行き当たったのがこれだ。

これなら敵の攻撃で損壊する心配も、

 

 

「本気で動いて壊しちまう心配もない」

 

 

言い終わるのと同時に、一気に踏み込む。

槍の穂先は、その左目に付きつけて。

 

 

「ハッ!それがお前の本気か!」

 

 

エヴァンジェリンの影から、一振りの刀が出てくる。

女の華奢な体では振れないような刀だが、魔力で強化しているのか問題はないようだ。

 

 

ガキィッ!

 

 

と、お互いの得物がぶつかり合う音がする。

刀の腹で上手いこと突きを受け止められたか。

しかし、この刀はいったい何だ?

これまでの流れでいくと、これも相当な代物のはずなんだが。

 

 

「この刀が気になるのか?」

 

「まあな」

 

 

今度はもう、動揺したりなんてしない。

俺が奴の一挙一動に気を使っているのなんて、分かりきったことだ。

 

 

「ならば見せてやろう。…万象一切灰燼と為せ」

 

「…おい、ちょっと待てや」

 

「『流刃若火(りゅうじんじゃっか)』」

 

 

奴の言葉の後、姿を変え、炎を吹き上げる刀。

BLEACHに出てきた斬魄刀の中でも、屈指の攻撃力を誇るそれ。

たしか、他人の斬魄刀で卍解にまで至った奴もいたから使えるのは分かるが、あえて言いたい。

 

 

「お前は『氷輪丸』を使えよ!」

 

「氷というイメージだけで決めるな。私が使うものは、私が決める」

 

 

まぁ、それもそうだが。

釈然としない。

 

 

「ま、そんなことは、どうでもいい」

 

 

バキンッ!

 

 

「ッ?!なんだと?!」

 

 

吹き上げられた炎がお互いの姿を隠した一瞬。

その奴が俺を死人できない瞬間を狙い、超至近距離下に入って刀の腹を両手で押さえ込み、梃子の要領で折った。

手は火傷したが、すぐに治る。

柄さえあれば直るとマッドサイエンティストが言っていた気がするが、修復が終わるまではそれなりに時間もかかるだろう。

これでもう、この刀は使えない。

 

 

「割と切り札だったんだが、なぁっ!」

 

「おっとぉっ!」

 

 

折れた刃の残りで、そのまま突きに来るエヴァンジェリン。

それを避けつつ、まだ空中に在った槍を掴み、振り回してエヴァンジェリンを弾いて槍の間合いに持ち直そうとする。

が、眼の力か身を屈んで避けられ、今度は、

 

 

「『ヘアロック』!!」

 

「…トリコかよ」

 

 

極細の髪によって、雁字搦めに縛られ動けなくなる。

これって要するに、その気になったら『フライ返し』もできるってことじゃ?

この髪って、一本あたりの張力はいくつだったけか?

普通なら120g程度だったと思うんだが。

いや、それは蜘蛛の糸だったかな?

 

 

「まあ、そんなことは、どうでもいい」

 

 

手首を回し、槍で拘束してくる髪を全て切る。

よっぽどテンションを高くしていたのか、随分とあっさり切れたな。

 

 

「そぉらっ!」

 

 

そのままの勢いで、エヴァンジェリンの首めがけ槍を振るう。

 

 

「フン」

 

 

それを気にせず、さらに踏み込んでくるエヴァンジェリン。

なるほど。

確かに穂先さえ触れなければ、切れることはない、貫かれることもない。

 

だが、槍とは元々敵を叩き潰すのが目的のものなんだよ。

 

 

「りゃぁっ!」

 

 

さらに力を込め、槍を加速させる。

狙うのは頭部でも首でもなく、的の大きい側胸部。

それを、

 

 

「『魔法の射手・氷の三矢』!」

 

 

即時発動できる魔法で弾かれ、俺の手から槍が離れていく。

そのまま、口の端を歪めたエヴァンジェリンが拳を構え------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チッ

 

 

「………え?」

 

「ん?なんか違うな?」

 

 

咄嗟に止まったエヴァンジェリンの額を、俺の拳が掠めた。

まあ、とりあえず、

 

 

「こうか?」

 

「ッ!ォオッ?!」

 

 

ピシッ

 

 

今度は、軽くだがヒットする。

なるほど、思い出した。

 

 

「こうか」

 

 

ゴッ!

 

 

「ガ--------ッッ!?」

 

 

エヴァンジェリンの豊満な胸に突き刺さる、俺の拳。

本当ならこれで胸骨が折れそうなものだが、その様子は見受けられない。

 

 

「胸か。胸なのか」

 

「………怒りますよ?」

 

「ごめんなさい」

 

 

背中から来るジャンヌの怒気。

それに思わず、謝ってしまう。

 

 

「…カハッ!………何だ、今のは?私の眼でも…、見切れなかったぞ」

 

 

蹲りながら、睨み付ける様にして問いかけてくるエヴァンジェリン。

ふむ、教えても別に良いか。

 

 

「『伝統派空手』。それが今の突きの正体だ」

 

 

 

 

 




あれ?
おかしいな?
本来の予定ならとっくに決着がついている筈なのに、書くシーンがどんどん増えていくぞ?
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