近年、『伝統派空手』は『フルコンタクト空手』の影に押され、弱いと思われがちにある。
だが、『当てるから』強いわけでも、『当てないから』弱いわけでもない。
俺が知る限り、『伝統派空手』は世界最速の突きを放つ。
「セリャァッ!」
「ウグッ!」
先ほどまで当たらなかった拳が、『最強の眼』の視認速度を超えて動き、エヴァンジェリンの体に当たりだす。
小学生の頃、兄貴に勝ちたい一心で近所の空手道場に通っていたのが、まさかこういう形で功をそうするとは思わなんだ。
まあ、兄貴に勝つことは、一生できなかったが。
「それでも、お前を殴ることはできたみたいだがな!」
「クゥ…ッ!嘗めるなぁっ!!令呪をもって命ずる!キャスターよ、そいつとともに距離をとれ!」
「ッ!………また!」
令呪によって行動を強制され、ジャンヌが魔力を練り上げる。
その指輪をつけた手が、俺に向けられる。
おい、まさか、
「ラ・ピュセル・メイギス・メイガス!
「オゴゴゴォォォォオオォォォッッッ!!!??」
ダメージはないものの、大量の魔法の矢によって与えられた衝撃は、俺とエヴァンジェリンを引き離すには十分なものだった。
「クッ!」
飛ばされた先で、体勢を立て直す。
クッ、エヴァンジェリンはっ!?
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック
「ガァッ!」
「ふむ、こいつがお前の娘か」
…オイ、
「そういえば、随分ボロボロじゃないか」
ナンデマナノソバニ、
「ああ、武道会に出ていたのか」
オマエガイルンダ?
「一人で戦い続けても、厳しそうなのでな」
コラ、カミヲヒッパルナヨ。
「戦力は欲しいだろう?」
オンナノイノチダゾ。
「これは私が作った賢者の石の原料になった魂たちから、ある感情だけを抽出したものだ」
オイ、コラ、
「お前ならこれが、何か分かるだろう?」
マテ、
「幸い、これを注ぐ傷口にはこと欠かん様だしなぁ?」
ヤメロ。
「そら、ホムンクルス『
「やめろぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉおおぉぉぉっっっっ!!!」
エヴァンジェリンの手に握られた小瓶から、真名の頬の傷に紅い液体が注がれた。
実はネギでやるか、真名でやるか悩んだ展開だったり。