魔法世界の混沌   作:逸環

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徐々に精神が若返る主人公。


積み重なる悲劇。

「ラ・ピュセル・メイギス・メイガス!『魔法の射手(サギタ・マギカ)光の三矢(セリエス・ルーキス)』!!」

 

「なっ?!」

 

 

かと思われた。

しかし、真名の頬の傷に注がれるはずだったそれは、傷口から体内に侵入しきる前に、光の矢によって弾け飛んだ。

 

 

「キャスター!貴様ぁっ!!」

 

「………六禄さんの娘ということは、私の娘ということにもなります」

 

 

エヴァンジェリンがこちらを睨み、ジャンヌがそれを見つめ返す。

 

 

「………私たちの娘に手を出すことは許しません!」

 

「……………ククッ!」

 

 

…私たちの娘、か。

ああ、確かにそうだ。

その通りだ。

 

 

「そうだな。俺たち(・・)の娘に手ぇ出すのは、やめてもらおうか?」

 

 

背負っていたジャンヌを降ろし、並び立つ。

そういえば、こいつと並んで戦ったことはなかったな。

いつも、俺の後ろか俺が後から掻っ攫っていったんだった。

 

そう考えると、なんとも感慨深いものがあるな。

 

 

「ククッ!クハッ!クハハハハハハハハッッッ!!!」

 

「………笑い方が悪役っぽいですよ、六禄さん」

 

 

気にするんじゃない。

ま、とにかく、

 

 

「んじゃあ、いきますか」

 

「「「「「「「オオオオオオォォォォオオォオォォォォォォォォッォオォォォォッッッッッ!!!!!」」」」」」」」

 

 

俺の背後に現れる、300の分体たち。

そして、

 

 

「………『自陣鼓舞せし白百合の旗(ラ・ピュセル)』!!」

 

 

あの戦争の中、ジャンヌがずっと持ち続けた旗が光を纏って現れ、手の中ではためく。

旗がはためくのに合わせ魔力の粒子が俺と分体たちに降り注ぎ、その身体を強化する。

 

 

「………私の宝具の能力は、自分の味方全員のステータスを全て2ランクアップさせること。………貴方の眼をもってしても、これからどのようなものを使おうとも、貴方が勝つ術はありません」

 

 

…ジャンヌの宝具が、予想以上にチートだった。

うちの嫁は最高です。

 

 

「………その代わりに、私自身の全ステータスはワンランク下がりますが」

 

 

実際の聖杯戦争じゃあ、殆ど使えないじゃないか。

それでもうちの嫁は最高なんだがな。

実際、強化された俺が戦えばいいだけの話しだし。

 

 

「そぉらっ!!」

 

「ッ?!速い!?」

 

 

ジャンヌの宝具で強化された分体たちが、先ほどとは比べ物にならない速度でエヴァンジェリンを襲う。

この速度なら、詠唱をしている隙は与えない。

ましてや、この物量ならば、

 

 

「眼で避けきることもできねえよなぁ?」

 

 

技でもなんでもない、ただの物量戦。

まったく、500年前を思い出す。

 

 

「~~~ッッッ!!!なっめるなあぁぁぁっっっ!!!!」

 

 

瞬間、理不尽に、凶暴的に、爆発的に噴き出すエヴァンジェリンの魔力。

その余波で大方の分体が吹き飛ばされる。

こりゃあ、大技を出させる隙を与えることになるか?

 

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!バビロニアの宝物庫(バビロニアス・ジーサラム・セリア) 疾く開きて(アペルエロ・モックス) 王の財を放て(レイス・リーギス・ボーナ)!!『王の財宝(ポータ・バビロニス)』ッッッ!!!」

 

「ッ?!…ククッ!『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を魔法で再現したか!!」

 

 

エヴァンジェリンの背後に展開される、夥しい数の黒い黒い闇の波紋。

そこから覗く無数の切っ先が、俺たちに狙いをつける。

それぞれから感じさせる圧力は、どれもこれもがAランク以上であることを理解させる。

 

まったく、どこからあれだけの代物を集めてきたのだか。

例のアリアドネーの墓標(ガラクタ置き場)だけじゃないのは確かだな。

 

 

「と、ん?」

 

 

よく見れば、武器のいくつかに何やら刻まれているのが見える。

あれは………。

 

 

「ルーン文字か」

 

 

ソウイル、テイワズ、ウンジョー。

ざっと見えるだけこんなところだが、なるほど。

どれも勝利や戦を表すルーンだ。

そういえば、『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)』をルーンでガチガチに強化すれば、五次バーサーカーにも通じると聞いたことがある。

奴がやったのはそういうことなのだろう。

 

Aランクの宝具は数少ない。

故に、俺に通る攻撃を行う手段は限られてくる。

しかし、Bランクの宝具を強化し、その量の水増しを行うなら話は別だ。

実質的に、最初からAランク宝具が揃えられたのと変わらないからな。

 

 

「まったく、どうしたもんかねぇ」

 

「………勝てば、良いのではないでしょうか?」

 

 

思わず、ボソッ、と出た言葉にジャンヌが返す。

随分と軽く言ってくれるが、それが現状では難しいんだぞ?

 

やれやれ。

 

 

「ああ、その通りだ」

 

 

だが、一言に集約してしまえば、そうなる。

そう、勝てば良い。

ああ、そうだ。

久しく忘れていたが、

 

 

「俺は、兄貴以外には負けたことがないのが自慢だったんだ」

 

 

負けられない理由が、また一つ戻ってしまった。

娘のため、息子のため、妻のため、自分のため、その他のため。

負けられる道理など、最初からないよなぁ。

 

 

「最後の言葉は済んだか?祈りはもういいか?」

 

「俺の最後の言葉も祈りも、まだまだ早えよ」

 

 

ポケットに手を入れ、泰然自若と構える。

そして、

 

 

「なら、その言葉を最後の言葉にしてやる!!」

 

 

エヴァンジェリンがその右手を高々と上げ、振り下ろしたと同時に、余りある宝具たちが射出された。

 

ククッ!

なんだろうねえ、この感じは。

まるで、兄貴の前に立っているみたいだ。

まあ、兄貴は高々この程度ではなかったが。

 

分体どもを使い、宝剣宝槍の軌道をずらす。

分体たちに剣が、斧が、槍が突き刺さるが、それだけだ。

貫通しそうな物も、刺さった分体の動きにより脇に逸れる。

射出された一本たりとも、俺たちにあたることはない。

 

 

「…ふむ。これでは埒が明かんな」

 

「諦めるか?」

 

 

エヴァンジェリン声に、そんなことはありえないと分かっているが聞いてみる。

返ってきた言葉は、

 

 

「ッ!!そんなわけがないだろう!貴様は殺す!絶対にだ!!」

 

 

重く、悲壮な激昂だった。

 

 

「令呪をもって命ずる!」

 

 

チィッ!

今度は何をs「キャスターよ!自害せよ!!」ッッッ!!?

 

エヴァンジェリンの右腕が輝き、令呪が消費される。

咄嗟にジャンヌの方を向けば、

 

 

「………あ」

 

 

その胸に、エヴァンジェリンが放ったものであろう一条の剣が刺さっていた。

 

 

 

 

 




物語の流れとは関係ないですが、実は密かに私の中で何人か、主人公たちのテーマソングが決まっていたりします。
例えば、

水無月 六禄:『走れ(KEI氏)』,『ペテン師が笑う頃に(梨本P氏)』
ジャンヌ:『恋率方程式(蝶々P氏)』
カイン:『インビジブル(kemu氏)』
閃日 菫:『拘束プレイ(ぼいじゃあ氏)』

といった感じですね。
ちなみに、全曲ボカロなのは私の趣味です。
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