「とうとう…、今日か」
「………あの子達を、信じましょう」
「…ああ、そうだな」
7月中旬のとある日。
教会の中は、重苦しい雰囲気が漂っていた。
俺とジャンヌによって。
「…期末試験か………ッッ!!」
「………そうですね」
「いや、お二人とも、そんなにシリアスにならなくても…」
「シャークティーちゃんは子供がいないからそう言えるの!!」
今日は期末試験当日。
うちの娘どもの、頑張りが出る日だ。
小太郎?
あれは小学生だから関係ない。
しかし、問題がある。
うちの娘たちは揃いも揃って阿呆だ。
テストの成績に関しては。
何故か。
四六時中男のケツを追っかけ回して、勉強をしないからだ。
まあ、男と言っても家族なんだが。
そこで、この事態は流石に不味いと感じた俺は、試験一週間前にこう言っておいた。
「期末試験で全教科80点以上取れたら、度が過ぎない程度に好きなご褒美をあげます」
と。
そしたらビックリだよ。
無言で真名と刹那が部屋に戻ったかと思うと、机に向かって勉強を始めたんだから。
今まで見なかったよ、そんな光景。
驚いた分、何を要求されるのかが怖くてしょうがないんだが。
まあ、片方は俺に実害はないだろうし、それは良いんだけど。
問題は真名だ。
奴はヤバイ。
俺をまだ狙っている。
夫婦仲を引き裂くとこまでは行かないが、狙ってきている。
時々深夜に寝室へ入ってこようとするから、本気で拙い。
時計を見ると、17時ちょっと前。
そろそろ帰ってくる頃だ。
「…ジャンヌ、何があろうと俺は、お前を愛しているぞ」
「………私も、貴方を愛しています」
「いや、そこまで深刻になるようなことではないですからね?あと、私の前で惚気ないでくれますか?」
無理。
「「ただいまー!」」
「「「おかえり」」」
あの会話から僅か数分後。
問題児2人が帰ってきた。
「父さん!ご褒美は確実だぞ!」
「そっかー。とりあえず、何が欲しいんだ?」
真っ先に俺に駆け寄ってきて、自信満々に報告する真名。
嬉しいけどッ!
嬉しいけど…ッッ!
怖い!
「ふふ、私が欲しいのはね-------」
「父さん」
「はいはい」
「母さん」
「………はい?」
「ふふ!」
それから数日が経った夜。
俺とジャンヌと真名は、同じベッドで寝ていた。
俺とジャンヌで、真名を挟んだ川の字で。
「本当に、こんなので良いのか?」
「ああ」
真名は本当に、全教科80点以上を成し遂げた。
俺の娘ながら、凄いと本当に思う。
その前の中間試験は、60点以下だったのに。
その真名が欲しがったご褒美は、親子で川の字で寝ることだった。
そんなもので良いのかと何度も聞いたが、一貫してそれが良いと、真名は言い続けた。
刹那?
小太郎を部屋に連れて行ったよ。
「…ずっと、こうしたかったんだ」
「…そっか」
嬉しそうに囁く真名を、俺とジャンヌで両側から抱きしめる。
しばらくはくすぐったそうにしていた真名も、じきに穏やかな寝息を立てて眠りについた。
ずっと父子家庭で育った真名たちは、母親というものを知らなかった。
いや、知っていても、理解できていなかった。
真名と刹那は幼い頃には母親の姿を知っていたが、今となっては幼過ぎた。
小太郎も、母親を知る機会はなかった。
「…おやすみ、真名」
「………おやすみなさい、真名さん」
真名の額にキスをした後、ジャンヌと軽く唇を合わせて眠りにつく。
明日も、良い日であるように。
「……ふふ」
楽しげな夢を見ている真名を抱きしめながら、そう、願った。
初めての『両親との』川の字でした。