お互いに吸血鬼となったこの二人は、どのような結末をたどるのでしょうか。
「『転輪する勝利の剣』!!」
『転輪する勝利の剣』
『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』の姉妹剣。
柄には擬似太陽を封じてあり、その出力たるやエクスカリバーに匹敵する。
エクスカリバーが星の光によって両断する剣ならば、ガラティーンは太陽の灼熱を以て敵を焼き尽くす剣。
まあようするにだ。
「あ、やべえ。死んだくせえ」
つーか、アレは神造兵器じゃなかったのか。
なぜ投影できる。
いや、ある程度劣化した上でなら、模倣できるんだったか?
しかし、あんなものを複製できる『無限の剣製』も大概だが、『約束された勝利の剣』といい、『無毀なる湖光(アロンダイト)』といい、円卓の騎士どもの武器はそろって化け物か。
しっかし、吸血鬼が吸血鬼退治に太陽の剣を使うとは、ふざけた話だ。
「覚悟しろ。混沌の転生者」
おや。
わざわざ『転輪する勝利の剣』を投影した時点でうすうす気付いてはいたが、俺の能力が分かっていたか。
まあ、黒い獣が無数に出てきて、その種類に統一性がなければ気付くか。
しかし、覚悟をしろとは。
「やなこった。パチモンの『正義の味方』」
「ッ!オオォォォッッッッ!!この剣は太陽の映し身!もう一振りの星の聖剣!!『エクスカリバー・ガラティィィィィイイインンンッッッ』!!!!!」
気合の入った口上のあと、太陽の灼熱そのものとも言える剣線が、回避や迎撃をする間すら与えずに俺を飲み込もうとする。
俺と奴に挟まれるようにして展開されていた分体たちは、既に焼き尽くされたようだ。
大体2ランクは落ちているのだろうが、それでも姉妹剣に当たる『約束された勝利の剣』のランクがA++であり、真作が同じランクだとしてもAランク。
ん?
ランクの扱いってこれで正しかったか?
まあ、いいか。
どっちにしろ、これは俺を殺すのに十分な威力だ。
なるほど。
これが『聖剣』。
これが『オーバーAランク』
これが『対城宝具』。
一撃で雌雄を決することのできる威力とは、まさにこのことか。
なるほどなるほど。
光り輝く剣線に全身を飲み込まれる瞬間。
ポケットに手を突っ込み、薄く笑いながら、俺はそんなことを考えていた。
~Sideカイン~
太陽の如き剣線が、相手を飲み込む。
相手の最後は、諦めたように両手をポケットに入れ、薄気味悪く笑っていた。
「フフッ!フハハッハハッハッッッッ!!!!」
だがやはり、この力は最強だ!
あの『獣王の巣』を一撃で葬った!
前世ではいじめられ、それを苦に自殺したが現世では違う!
私が最強だ!
「ハハッ!…………しかし、さすが神造兵器。この威力は使用を自重せねばな」
剣線の跡は、森に長い長い直線を刻んだ。
劣化したものとはいえ、この威力のものを使い続けては、世界が滅びてしまう。
………劣化してこれなら、真作はどれほどの威力を有するのか。
そんなことを考えていると、
パキィッ
という音が。私の右腕から聞こえてきた。
いや、正確には右腕に握られた『転輪する勝利の剣』か。
さすがに、神造兵器の投影。
劣化品とはいえ完璧とは言いがたく綻びがあったようで、たった一回の真名解放であっという間に全体に皹が入り砕け、魔力に還っていった。
「まあいい。戦場に戻って、エヴァに加勢せねばな」
神造兵器の投影のことは、追々解決していけばいい。
そう思い、戦場の方向を向くと、
「戦場だと気を抜いた奴が、真っ先に死ぬらしいぜ」
振り向きざま、私の顔面に拳が叩き込まれた。
~Side六禄~
「グァガガァアァアアアッッッ!!??」
俺の足元で、顔面を押さえて転げまわるマクダウェル兄。
まったく、大の男が情けない。
「な!なぜ生きている?!お前は間違いなく、『転輪する勝利の剣』で死んだはずなのに!?」
「正直ヤバかったぜ?なんと2回も死んだ」
俺の言葉に、マクダウェル兄の顔が驚愕に染まる。
『Fate/stay night』では、バーサーカーの命を7個刈り取ったものよりも同等、もしくはそれ以上の一撃だったが、『獣王の巣』によりこの身を殺すことは今や、一つの世界を壊すこととと言ってもいい。
故に、俺が吸血鬼で太陽が苦手であっても、太陽の聖剣とはいえ劣化した状態では俺を殺すのは、2回までが限界だったらしい。
「ま、感謝するよ。おかげでどうやら、太陽に対して耐性が持てたようだからな」
日の下に出ているのに、肌を刺す痛みが無い。
たぶん、普通に太陽に焼かれて死んでも、同様の現象が起きたはずだが、アレは痛すぎる。
しかし、今回は一瞬で焼かれたので痛みは無かった。
本当に感謝する。
「ああ、それからもう一つ」
むしろこれが本題だが、
「俺の勝ちだ」
「な?!こ!これは!」
何もしないマクダウェル兄に、混沌が絡みつく。
「対真祖用。『創生の土』」
まあ、姫君とでは真祖の格が違うが。
「クッ!まさか、『十二の試練』も搭載しているとはなあぁっっ!!」
「おう。驚いたか」
全身を包む混沌から逃れようとマクダウェル兄がもがいているが、それは『創生の土』。
お前では無理だ。
『創生の土』
かの教授さんが『アカシャの蛇』に伝授された術。
五百匹の獣の因子を束ね、対象を捕縛し咀嚼する。
その破壊は、大陸を一つ破壊することと同義。
「とまあ、素晴しく身動きの取れない状態になったわけだが、なんか言うことはあるか?」
「私を解放して死んでくれ」
「よし、咀嚼スタート」
捕らわれの状態で余裕だなこいつ。
あ、そうだ。
「今となっては意味が無いが、あんたの弱点教えといてやるよ。あんたさ、筋力ないだろ?」
「ッ?!」
何で分かった?!
て顔をしてるけど、両手で剣を使ったり、弓を使わないのを見れば分かる。
弓を引くには割と力が必要だし、夫婦剣を振るならなおさらだ。
筋力がないから、投影した剣を振れない。
筋力がないから、剣に蓄積された経験を十分に使えない。
それがこいつの弱点だ。
まあ、今となっては、どうしようもなく意味の無い情報だが。
しかし、実際のところ俺としてはそんなことはどうでも良くて、真祖の因子を取り込めればいいだけだ。
「あんたほどの意識体を取り込むのは骨だろうが、それもまた喜ばしい」
いや、本当に助かった。
真祖の因子を取り込むことで、将来的にただの混沌にならなくて済む目処が立った。
これほど早期に解決するとは思わなかったが、これで余程のことがない限り自我を失い混沌になるようなことはなくなっただろう。
「グアアッ!ガアァァッ!!」
しかし、痛みに耐性が無かったようで、何もできなくなっているのには助かる。
これが本家本元だったら、この状態から固有結界発動とか有りうるからな。
こうやって叫んでいてくれれば、詠唱もできないだろう。
さて、どうするよ?
まだ手はあるのか?
なあ、もう一人の転生者よ。
~Sideカイン~
痛みで思考ができない。
またか?
また私は弱者なのか?
あの時と同じように、また私は死ぬのか?
第二の人生は、素晴しいものであると信じたのに、これがその終わりか?
嫌だ!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
私が前世の死後現れた悪魔と契約してまで望んだものは、素晴しき第二の人生。
しかし、それを阻むものは必ず現れると思い、第二の人生の死後、魂を売り渡すという契約のもと手にした能力。
それすらも、通用しないのか。
いや、まだだ!
まだ最後の一つが残っている!
私の身体は今、右腕が肘の辺りまで、左腕と下半身は既になく、顔の一部も失われている。
これなら、あの条件を満たしている!
これは、前世の死の間際、頭をよぎったあの願い。
その体現。
「アアアッッ!!混沌!お前も道連れだ!!」
「っ?!まだ何かあったのか?!」
今までずっと、余裕だった敵の顔が変わる。
フフッ。
戦場では、気を抜いた奴から死ぬのではなかったのか?
さて、これは私の本質そのものとも言える、私ができる最後の一手。
「『
私の最後の望み。
それは、
『僕を死までに追い込んだあいつらに、報復したかった』
だ。
いじめの果ての自殺。
何度聞いても嫌なものです。
次回はジャンヌ視点となります。