そこは広い広い、百合の花が咲き、大樹がそびえる平原。
『送生の樹』で、俺と明日菜は戦っていた。
「ハァァッッ!!」
「無駄ァッ!!」
「キャッ!?」
俺の拳が明日菜の剣を弾き、そのまま腹部へと突き刺さる。
そして、ここでお披露目をする、この空間限定での俺の新技でありネタ技であり必殺技。
両手を広げ、発動する。
「『
瞬間、世界はモノクロとなり、俺以外の全てが止まる。
漫画を読んでたら吸血鬼繋がりでやりたくなり、久しぶりに真面目になって習得したこの技。
『送生の樹』の能力で、自身に『時間操作』の概念を付与して初めて扱うことのできるこの技。
まさに気分は、最高にハイッてやつだ。
「さて、止めていられる時間は5秒まで…。遊ぶにしても急がなくちゃな」
急いで吹き飛ぶ瞬間だった明日菜の身体をうつ伏せで地面に下ろし、その背中に馬乗りになる。
そして足を折り曲げて俺の両脇でホールドし、後は腰を逸らす。
そこで5秒経過。
「そして時は動き出す」
「ッッッ!?イッッタァァァァァァィィイイイィイィイイイイッッッッ!!!??」
そう。
この体勢は俗に言う逆えび固め。
とても簡単にできるプロレス技の一つであり、同時に普通に痛い技の一つでもある。
「タップ!タップタップ!!」
「ククッ!もうちょっと粘れよ、女子中学生」
手で地面を何度も強く叩く明日菜の足を解放し、背中からどいてやる。
それと同時に、『送生の樹』の維持も限界が来たらしく景色が元いた教会に戻る。
「ちょっと神父さん!実戦形式の訓練とか言ったけど、今のはダメじゃないの!!?」
「クハハ!師が黒いと言えば白も黒くなるのがこの世界!俺に弟子入りしたのが運の尽きだ!!」
「あんた神父よね!?」
神父ですとも。
エセがつくけどな。
まあ、それはともかくとして。
「しっかし明日菜ちゃん、センスはあるよねぇ」
「え、本当!?」
「神父さん、嘘は吐く」
「嘘吐くの!?」
そりゃそうだよ。
元々嘘吐きなんだから。
嘘吐きを売りしてたんだから。
「でもまあ、センスが良いのは嘘じゃないけどな」
「良かったぁ…」
「まあ、現状センスだけとも言えるが」
「あう…」
絶対的に経験値がないんだよなぁ。
戦闘なんてセンス2割、経験6割、運と気合いが1割ずつなのに。
これまでは体質のおかげで大丈夫だったけど、これからはそうもいかない。
実際、今俺と戦った際には手も足もでなかった。
言っちゃあなんだが、底が浅い。
それを補うためにこうして相稽古してるわけだが、もしかしたら地力の向上を先にした方が良いかもしれん。
確か原作だと、『感卦法』仕込んでたな…。
タカミチに教えさせて…、いや、時間がないな。
『ダイオラマ魔法球』があれば年単位で仕込めるんだがな…。
いや、身体に叩き込めばどうにか…?
この子、確かちょっとだけなら今でもできるんだし。
…よし、決まりだ。
「うん。これからしばらく、『感掛法』を極力維持したまま生活して、それが自然になるように勤めてみな」
「ハァッ!?」
ドラゴンボールの、サイヤ人親子の様に頑張るといい。
目指す最終地点はあのレベルだ。
いや、戦闘力がではなく。
「『感掛法』を維持したまま料理を作り、バイトをし、授業を受け、訓練を行い、風呂に入り、排泄をし、歯を磨き、就寝する。これができれば、ツーランクは現状からレベルアップできるだろうな」
「高畑先生でも難しい技術なのに、無理よそんなの!!というか、物凄く目立っちゃうじゃない!!」
「大丈夫大丈夫。認識阻害の魔法があるから、みんな『ああ、明日菜だからね』って思ってくれるって」
「ぶっ飛ばすわよ?」
むしろやってみてくれ。
今後のためにも。
「まあでも、やってみな。今後、絶対にお前の助けになるから」
「むー…。…分かったわよ」
「ククッ!よしよし!」
「わわっ!?」
明日菜の頭をガシガシと撫で、立ち上がる。
さて、と。
「俺は後の奴らの稽古付けにいくから、もう『感掛法』生活始めてみな」
「…はーい」
どこか不満げな明日菜を教会に残し、外に出る。
次は小太郎と刹那、楓に古だな。
あいつらはいっぺんでも大丈夫だろう。
明日菜は素人だし、特異性も高いからマンツーマンだったが。
…そういえば、ジャンヌに任せた魔法組はどうなっているんだろうか。
まあ、こっちはこっちで集中しないと、な。
固有結界で訓練をしてたのは、そこそこ広くて安全な場所を確保するためです。
主人公の当初の予定では、ネタ技のためではありませんでした。
ええ、決して。