「うああああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!」
あれから数分。
エヴァンジェリンの慟哭は、まだ止まない。
「………あの」
「ん?なんだ?」
ジャンヌが後ろめたそうに聞いてくる。
「………あの子も、その、食べるのですか?」
「………………いや、それはない。あれの兄貴の遺言でな、俺はあれに手出しができん」
それを守らなければ、俺は奴を喰った資格など無い。
と、エヴァンジェリンが泣き止んだか。
「………………コロシテヤル」
「………そんなこったろうと思ったよ」
まったく、泣き止んで最初に口にした言葉がそれかい。
やるせなえなぁ。
「
「ジャンヌ、俺の後ろにいろ」
「でも!」
「いいから。男には格好付けさせるもんだ」
そうじゃなかったら、男なんて何のために存在してるのかが分からん。
と、そこそこでかい魔法が、ぐいぐい迫ってくる。
「じゃ、ちょっとオリジナルいきますか。『混濁の壁』!」
早い話が、分体四百の結束で作る壁だ。
俺だけならともかく、他にも守らなければいけない対象がいる時のことを考えて作った。
ぶっちゃけ、『創生の土』があんな感じでできるなら、こんなのもできるんじゃね?
ぐらいの軽い気持ちで思いつき、二週間かけて形にした。
そして、『常世の吹雪』と『混濁の壁』がぶつかり合い、
「………ま、こんなもんか」
「…………そんな」
『混濁の壁』には、多少氷が張り付いているだけで何の異常もなく、フランス軍にも被害は出てい無かった。
「………助けてよ、兄様」
「もういない」
エヴァンジェリンに、一歩近づく。
「………いや!こ、来ないでぇ!」
地べたにしゃがみこみ、拒絶してくる。
…………そこまで拒否られると、リアルに凹むのだが。
「………なんもしやしない。俺はガキには興味はない」
「………そういうことでは無いと思います」
そんなことは分かってる。
もう一歩、近づく。
「い、いやぁ!」
「………俺が泣いていいかな?」
心が折れそうだが、もう一歩近づく。
「…………やめて……来ないで………………」
「………………………………………………」
もはや何も言うまい。
それでも、手が触れるとこまで近づく。
ぽすっ
「………え?」
エヴァンジェリンの頭に、しゃがんだ俺の手の平が乗っかる。
別になでたりはしない。
子供が話を聴こうとしない時に使えるだけだ。
こうやって注意を引き、さらにはボディタッチで安心するため、なかなか効果がある。
「な、なんで?私も食べないの?」
「阿呆。ガキなんて喰ったら、今日の晩飯から飯がまずくなるだろうが。…………お前の兄貴の遺言だ」
これだけは、伝えなくてはいけない。
因子を使い、声をカインのものに変える。
「エヴァ、お前だけは幸せに」
「!?」
目を見開き、驚いた顔をするが、それも長くは続かず、
「う、うああああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
盛大に泣き出した。
そこで俺は立ち上がり、
「いつか、俺を殺しに来い。それまでは俺も生きていてやる」
ジャンヌの元に戻る。
「……………何であんなことを?」
「吸血鬼の生は永い。もしかしたら、永劫を彷徨うことになる。………俺もあいつもな」
だからこそ、生きる目的は必要だ。
それがなければ、それこそ俺は混沌になることを選ぶ。
そして、復讐は生きる目的としては非常に強いものとなる。
「……………優しいんですね」
「…………違う。ただ」
「………ただ?」
一息吸い、言う。
「ただ、ムカついたからだ。こんちくしょー」
それが全て。
あのままでは俺の気分が悪い。
だからやっただけだ。
それを聞いたジャンヌは、少し目を見開いた後、
「………ふふっ、なるほど」
「………何で笑ったよ?」
「………乙女の秘密です」
「ならしかたない」
何で笑ったかは知りたいが、諦めてやろう。
5月8日。
オルレアン解放成功。
はい。
オルレアンが解放されました。
………これで次回から、心置きなくギャグが書ける。