「ああ、ムカつく」
何もない、ただ広いだけの空間で呟く。
思い出すことは、生前最後の記憶。
そう。
ガラにもなくトラックに轢かれそうになったガキを助けてしまった時の記憶だ。
「ああ、ムカつく」
もう何度目かも分からない言葉を呟く。
どれだけ時間が経ったかも分からない。
延々と呟き、うずくまり、呟き、立ち上がり、呟き、横になり、とりあえず寝る。
その繰り返し。
ここがどういうところかは分かっている。
俺みたいな、死んでからもまだ馬鹿みたいに生きたがっている連中を諦めさせるための場だ。
「ああ、ムカつく」
こんな何もない空間。
寂しくて、狂いたくて、そして死にたくなってくる。
けれど、
「死にたくねぇなぁ」
生前、俺は生きていたとは言えなかった。
ただ、惰性に流されていただけ。
生きてすらいなかったというのに、なぜ死にたいと思えるのか。
「生きたい。生きて生きて生きて、そして逝きたい」
こんな何もない空間でも色褪せることなく、より彩度を増す想い。
「まだ生きてねぇのに、死ねるわけねぇだろうっ!!!!」
「強情なやつじゃのう。とっとと死んで楽になればいいものを」
「………………あ?」
なんか、明らかにヅラをかぶった爺がすぐ横にいた。
「いつの間に?!」
「いつの間にって、お主がぶつぶつ言い始めたときからじゃけど」
「え?」
てことはなんだ?
俺はずっとぶつぶつ呟いているところを見られていたのか?
恥っず!
俺恥っず!
「まあ、お主が恥ずかしいとかは割りとどうでもいいんじゃよ」
「よくねーよ」
いや、マジで。
「もう分かっているとは思うが、わしは神じゃ。神には、いつまでも死にきらないでウダウダしている魂をあの世へと送る役目がある」
「ほう?」
「お主は先ほど、『まだ生きてねぇのに、死ねるわけねぇだろうっ!!!!』とか言っておったがのう。しかし、確かにお主は、『生きて』、『死んだ』んじゃよ。命は一人に一つ。これが鉄則じゃ
」
…………………………。
「第一、最近の人間たちは命を軽く見すぎておる。ただ毎日を漫然と生きおってからに」
「…………………………がれ」
「せっかくの命がこれでは無意味。お主もその例に漏れない」
「………………り…………がれ」
「分かったら早k「黙りやがれヅラ爺ぃぃぃっっっっっ!!!!!!!!」ほっ?!」
爺の胸倉を掴み、叫ぶ。
「さっきから聞いてりゃぁ偉そうに」
「いや、実際偉いんじゃけど。つーかヅラて」
「黙れ。そりゃああんたの言うとおり、俺は毎日毎日ただ生きていただけだよ。でもなあ、それじゃあ『生きて』ねぇんだよ」
「むぅ」
「けどよぉ、そんな自分にムカついて、イラついて、変わりたいと思ったら死んじまうしよぉ……………ヒック…………。俺、どうすりゃあズズッいいんだよぉ…………………………」
言葉とともに、涙と嗚咽が漏れる。
「……………お主は、後悔しとるのか?」
「ヒック……………当たり前だ…………………」
じゃなかったら、『生きたい』なんて思わない。
「ふむ。ならばお主、『魔法先生ネギま!』の世界へ行ってみんか?」
「……………………………………………………は?」
…………………………何のことだか分からん。
「お主は自分を変え、『生きる理由』が欲しいのじゃろう?ならばこのまま生き返らず、これまでの世界にはない新たな法則がある世界で、より多くの選択肢に触れてみる方が良いのでは?」
「いや、まあそりゃあな」
「大丈夫。すぐに死んでしまったら仕方がないから、死にづらいようにするからのぉ」
「え?いや、ちょ?」
あの?
勝手に話が進んでいるんですが?
「では行くがよい!汝の人生に、幸多からんことを!」
「ちょっとぉぉっっっ?!」
振りかぶられた神の右腕。
それに握られた金槌が脳天に叩き落された瞬間、そこで俺の意識は途絶えた。
「…………………………んあ?」
意識を取り戻すと、俺は森の中で倒れていた。
【無事に転送が成功したようなので、能力の開示をします】
「は?」
頭の中に、機械的な声と文章が流れてくる。
【能力1・獣王の巣
混沌の固有結界。
原点は月姫に登場したネロ・カオス。
666の生命の因子が混濁し渦を巻く混沌の世界。
内部の生命因子を使い魔の如く使役する。その形状は現界の瞬間に決定しているため、何が出るかは本人にもわからない。しかし、幻想種や小動物といった強弱、種類など、ある程度の決定はできる。666という数はあくまで「因子」であり、それをもって小規模な生命の系統樹を再現しているため、現れる生物の「種類」は666という数以上のもっと多数にわたる(例えば、因子を2つ以上用いた獣を作ることも可能ということ)。
666の使い魔で武装している、などとも言われるが、獣は発動者と同意であり同位。本来従者である使い魔が、発動者と同格、発動者=使い魔、という存在にもなっている。
普通に殺されても混沌に戻るだけで獣の因子そのものは失われず、発動者の体に戻せばまた復活する。このため、殺すには666の生命因子全てを一気に葬る必要がある。混沌の性質上、それは非常に困難。
自身の体内を固有結界としているため、抑止力による修正を受けないという特性がある。
能力2・
ランクB以下の攻撃をシャットアウトしてしまう上、11の代替生命ストックがある。さらに一度受けた殺害方法では二度と殺せないので、本気で倒すにはAランク以上の攻撃かつ12通りの方法で殺さなければならない。(しかし、オーバーキル級のダメージを受けるとダメージ分の生命ストックを消費するようで、この通りにはならない)
あなたの能力は以上です。それでは、あなたの生が良きものであることを】
「………………………はあ?!」
主人公、転生完了しました。
能力の説明は、両方とも『TYPE-MOON Wiki』さんより出典しました。
『獣王の巣』
http://hiki.cre.jp/typemoon/?NrvnqsrChaos
『十二の試練』
http://hiki.cre.jp/typemoon/?Berserker_Heracles