~聖戦~
ポチャンッ
と、水滴の音が密室に響く。
密室にいるものは、上半身裸の俺とジル二人だけ。
ポチャンッ
また、音が響く。
「………いくぞ」
「………ええ」
ポチャンッ
バッ!
「「デカイのは!この俺(私)だあぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!」」
腰の布が取り払われ、男たちのプライドを賭けた戦いが始まった。
「……………要するに、お風呂での裸の付き合いですよね?」
「ちょっとお客さーん!男湯の盗み聞きは止めてくれんかねー?」
「…………あ、すいません」
ジャンヌは順調に壊れていた。
~カード~
「コール」
風呂から上がって、自分たちの部屋に戻り、俺、ジャンヌ、ジルの三人で始めたポーカー。
カードを配るのは俺。
その内容は、
「ほれ、フルハウス」
「………ストレートです」
「ぬがああぁぁぁっっっっ!!またワンペアですか?!」
とことんジルに運が無い。
まあ、
「そうなるように、イカサマしてるんだけどな」
「何してるんですかあぁぁぁっっっ?!」
イカサマだよ。
そして俺は急に真面目な顔になり、
「いいか、ジル・ド・レェ」
「………なんでしょう?」
一気に真面目な空気にする。
「俺はジャンヌに負けてほしくない」
「もちろん私もです」
「しかし、俺も負けたくない」
「それは分かります」
「なら、お前が負けるしかないだろう?」
「ふざけるのも大概にしましょうか?」
ジルが軽くキレる。
「貴方が負ければいいでしょう?」
「嫌だっつってんだろう」
「私だって嫌ですよ」
「お前さっき、俺に風呂場で負けたよな?」
「魂の大小は、今は関係ないのでは?」
男の魂のことね。
あ、ジャンヌの顔が紅くなった。
「イカサマ抜きで、一対一(サシ)でやりませんか?今度は私がカードを配りますので」
「ん~?まあ、ここまで勝ってるからいいか」
数分後。
「………………ツーペアです」
「………同情する。スリーカードだ」
ジルは、根本的に神から見放されていた。
~酒~
バルコニーで、月を肴にうっかり二人に渡しそびれた酒を飲む。
ちなみに、瓶ラッパで。
「眠れませんかな?」
「ああ?良い気分で飲んでんだ。野郎が話しかけんな」
隣の部屋のジルが、同じくバルコニーに出て声をかけてくる。
反対隣はジャンヌなのに、何故こいつが出てきた。
「聖女じゃなくて不満でしょうが、私もご相伴にできませんか?」
「ふん。ちょっと待ってろ」
部屋に戻り、どうせくれてやる予定だった一本を持っていく。
「ほれ」
「おお、ありがとうございます」
そしてそのまま、お互いに黙ったまま飲み続ける。
「グラスに注がない、このような飲み方もイケるものですね」
「ん?そうか。お前、貴族だからラッパ飲みしないのか」
急にジルが喋りだし、俺もそれに乗っかる。
「ええ。このような飲み方は、下品だと教わりました」
「だろうねぇ」
「しかし、やってみると存外良いものです」
「そうかい」
そのまま会話が続かず、また酒をチビチビと飲む。
「………私は貴方が羨ましい」
「あ?」
急にどうした?
こいつ?
「私は貴族たれ、騎士たれとして育てられました。そのため、我慢したことも多い」
「ほう?興味はないが、気にはなる話だな」
うん。
割とひどい言い方だよね。
「貴方はいつも楽しそうだ。その胸に、空虚を抱えつつも」
「ちょっと待て、何でお前がそれを知っている」
それを知っているのは、俺本人とジャンヌだけだぞ。
「貴方とは二ヶ月以上の付き合いがあるんですよ?その上、密度が濃いから分かります」
密度か?
アシルの時といい、俺の心は時間の密度の前には無力なのか?
「正直、私の青春は貴族に捧げられた詰まらないものです。だからこそ、貴方が羨ましい」
「可愛い彼女、いや、嫁もいるしな」
「私は認めませんよ?」
「お前なんか知らん」
いい加減に、諦めろ。
だからお前はギョロ目なんだ。
「俺もお前が羨ましいよ」
「え?」
こんなことを言うつもりはなかった。
どうやら、予想外に酔っているようだ。
「ジャンヌのおかげで満たされてきてはいるが、相変わらず俺は空っぽ。使命なんてものを持って生きている、お前が羨ましい」
「………………」
「俺のたかだか17の人生は、一度たりとも満たされていない。生きる意味が、理由が欲しいってな」
「…………では、聖女のために生きては?」
「それは無理だ。俺は本質的に、自分のためにしか行動できない。あいつに惚れたからって、それは変わらんさ」
偽りのない本音。
まさか、こいつに言うことになるとは。
「ククッ、どうやら飲みすぎたみたいだ。俺は寝るよ」
中身を一気に呷り、バルコニーから、部屋に引っ込む。
その背中に、ジルの呟く声が届く。
「………大切な者のために動く貴方は、もう空っぽではないと思いますがね。まったく、羨ましい人だ」
うるせぇ。
寝ろ。
いやー。
ギャグって書いてて楽しいね!(めっちゃ良い笑顔)