1430年5月23日。
とうとうこの日が来た。
え?
一気に日付が飛んだ?
気にすんな。
「………落ち着かないんですか?」
「………ちょっとな」
史実では、この日ジャンヌはフィリップ善良公のブルゴーニュ軍に捕えられる。
これを回避しないと、俺とジャンヌの安息はない。
目を瞑り、鳥の分体30を使ってブルゴーニュ軍を探索する。
「ふーん。あのヒョロイのが、フィリップ善良公ねぇ」
「………また分体を通して、遠くの光景を見ているんですか?」
「そうさ」
今はとにかく、情報が欲しい。
情報の有無は、戦場で大いに関係する。
特に、今回のようなどうなるのかを知っている場合では。
結果を知っていても、過程を知らなくてはこいつを守れない。
まあ、鳥の因子で出した30の分体の内一体が、また鶏だったのには脱力したが。
だから、何でお前が出てくるよ。
「………………ま、いざとなったら俺が動けばいいか」
歴史との真っ向勝負。
分が悪すぎるが、惚れた女のためなら悪くない。
「ククッ!俺が誰かのために、ねえ」
まったく、人間変われば変わるものだ。
いや、死んだあの時、気まぐれを起こしたとき、自分にムカついたあの時。
あの頃から、俺は変わってなどいないか?
「………少なからず、今の貴方の目は空っぽではないと思いますよ?」
「………ジルといい、お前といい、何で俺の周りの奴らは心が読めるんだ?」
酷く強くなる疑問。
が、ジャンヌの笑顔の前では、そんなものどうでも良くなる。
「ジャンヌ」
「………何でしょう?」
「俺から離れるな」
眼前のコンピエーニュ。
そこにいるのはブルゴーニュ軍。
さあ、歴史に喧嘩を売ろうか。
数時間後、兵士たちの怒号が響く戦場。
それをすり抜けるように、ブルゴーニュの兵が一部こっちへ向かってくるのを、分体を通して確認する。
ん?
俺たちの後方には、ありゃイングランド軍か?
どうにも裏っかわの力が働いているような、絶対にうちの軍の上の人間がこの場所のネタを垂れ流したような動きだが。
どうやら、狙いは最初っからジャンヌのようだ。
ま、どうせ指示したのは、あのお姫様だろうが。
あの女の目は、どう見ても徹底した野心家の目だったからねぇ。
高校の副校長の目が、あんな目だった。
大方、自分の秘密を知った人間の、口封じをしたいんだろう。
ちなみに、副校長の口癖は「この学校の校長となり、経歴に箔をつけ、ゆくゆくは有名私立校の理事に」だった。
そんな彼は過去四回、校長になるための試験に落ちている。
ついでに、俺の通っていた高校は県下有数のヤンキー高(公立)だったから、校長になっても絶対に箔は付かなかったと思う。
「あ~あ、やだやだ。女一人相手に、男の矜持はどこ行ったよ?」
命令とはいえ、あの兵たちにプライドはないのかね?
まあ、そんなことは置いといて、
「分体300解放」
まずはイングランド軍。
ジャンヌの身柄の、引渡し先のお前たちから消えてもらう。
様々な思惑が動くこの歴史の分岐点を前に、主人公はどのような選択をし、どのような行動をとるのでしょうか。