『もしも主人公がただの混沌になったら』です。
お楽しみください!
封印と白髪。
魔法世界某所の、とある洞窟内。
そこに『俺』はいた。
今になって思う。
なぜ、あの時あいつを取り込めなかったのか。
なぜ、少女の顔がチラついただけで、喰えなかったのか。
「マア、今トナッテハ遅イカ」
百年ほど前から、自我の消失が急激に加速し、だいぶ自我も薄れてきた。
そろそろ、『俺』という存在も消えるだろう。
だが、最愛のあいつが愛した人間たちのために、せめてこの身を封印することにしよう。
自我の維持を諦めたあの時から、ずっと研究してきた封印魔法。
この術式は、『俺』の自我が消失すると同時に作動するようになっている。
ああ、願わくば、
「コノ身ヲ蘇ラセテクレルナヨ?人間タチメ」
【
あの機械的な音声が脳内に流れ、封印式が発動する。
つまりそれは、『水無月 六禄』がこの世から消えたという証。
これは、もはや語る意味を持たない、ありえたかもしれないお話。
「これが、『オルレアンの英雄』と呼ばれ、『獣の王』と呼ばれ、そして『不死の混沌』と呼ばれた男の封印か」
今回、この僕『地のアーウェルンクス』がこの地に来た理由は他でもない。
ありとあらゆる吸血種たちの中でも、『不死』とまで称された男を、僕たちの仲間に引き入れるためだ。
なぜ、彼が封印されているのかは知らない。
だけど僕たち、『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の目的を知れば、かつて最愛の女性と死別した彼ならば、喜んで協力してくれるだろう。
しかし、これは、
「この封印を解除するのは、骨が折れそうだね」
分厚い、堅牢な氷に覆われ、その肉体を見ることすらできない。
これだけの封印式を維持するために必要な魔力は、魔法世界そのものから持ってきているらしく、魔力の供給を絶つこともできない。
そんなことをすれば微妙なバランスが崩れてしまい、ここ一帯を中心に魔法世界が消失し始めてしまう。
僕たちの計画の都合上、どうしても魔法世界の消失は避けられないが、今はまだ早すぎる。
「だけど、解除できないわけじゃない」
どうやら、この封印式ができたのは、少なからず今から百年前。
その百年の間に、魔法は進歩して来た。
この封印の式の法則に、新たな法則を組み込む。
それで解除ができるはずだ。
「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト」
始動キーを唱えて、式に法則を組み込む。
ピシッ
「できたみたいだね」
硬質の、氷が罅割れる音が、洞窟内に響く。
そして罅割れはどんどん広がってゆき、
「「「「「「「「ガアアアアアアァァァァァアァァァァッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」
氷の砕ける音すらかき消す咆哮を最後に、僕の生は終わった。
無数の獣に喰い散らかされるという、『
この小説中、登場から最速で死亡したのが初代白髪という事実。