魔法世界の混沌   作:逸環

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三人称視点が、意外と難しいと感じるIFルート第二話。


それの名は。

「た、たすけっあああああああああぁぁぁぁぁあぁあぁぁっっっっ!!!!!!!!!」

 

「ば、化物だあぁぁ!!」

 

「や、やめて、食べないで……………それ、私の足よ…………?」

 

 

周囲に広まる、濃厚な血の臭い。

メセンブリーナ連合の、とある一つの都市を襲った悲劇は、そこに在った命全てに向けられていた。

 

 

「これでもくらえ!『魔法の射手・火の百一矢』!!!」

 

 

人を殺せる威力を持った一撃が、悲劇の元凶へと叩き込まれる。

もうもうと立ち込める土煙が、その威力を物語る。

しかし、

 

 

「な?!ぶ、無事だと?!や、止めヒギュッ?!」

 

 

それは健在であり、魔法使いは頭を食われて絶命した。

 

 

 

「「「「「「「「ガアアアアアアァァァァァアァァァァッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」

 

 

それは吼える。

その腹は、未だ満たされていないと主張するかのように。

 

 

 

悲劇は、ヘラス帝国とメセンブリーナ連合が大戦を繰り広げる中行われた。

この悲劇の犠牲者は数千人に及び、メセンブリーナ連合はこの悲劇を、ヘラス帝国の仕業と断定する。

それが、まったくの見当違いであるとも気付かずに。

 

 

都市に在った命を喰い尽くしたそれは、新たなる餌を求めて動き出す。

その先にあるは、グレート=ブリッジ。

 

 

 

 

 

 

 

グレート=ブリッジでは、両軍による戦争が行われていた。

いや、少々語弊がある。

 

片方は僅か、五名による蹂躙なのだから。

 

紅き翼(アラルブラ)』。

それが彼らのチーム名。

 

 

「これだったら余裕じゃねえか!?」

 

 

赤毛の少年が、仲間に声をかける。

 

 

「いえ、油断は禁物ですよ。ナギ」

 

「そうじゃ。このバカ弟子め」

 

 

それに返す仲間二人。

片方はなぜか変態の臭いがし、もう片方は年寄り言葉の少年だ。

あとの二人は、声の届かない場所で戦っている。

 

戦場という特殊な状況にあって、尚この余裕。

彼らの力量が、良く分かる光景である。

 

だが、それが崩れる時が来た。

 

 

 

 

「「「「「「「「ガアアアアアアァァァァァアァァァァッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」

 

「な、なんだぁっ?!」

 

 

戦場に響く咆哮。

それは捕食に現れた。

 

 

「帝国の実験兵器か?!」

 

「いえ、どうでしょうか?アレだけのものを、生み出せるわけがありません」

 

 

現れたそれの姿は、正しく異形。

その巨大な体躯には、あらゆる獣たちの一部が蠢き、時折よく分からない混ざり物が皮膚から分離をして、帝国・連合の区別なく咀嚼する。

 

 

「や、やめろ!マンマンテロテロ『雷の暴風』!!」

 

 

膨大な力を持った雷が、それに当たる。

しかし、何事もなかったかのように、それは無傷。

 

 

「あれはいけない!ナギ、逃げますよ!!」

 

「なんでだよ?!まだ『千の雷』だって!」

 

「それでも威力が足りません!あれはなにか、特別な守りが働いています!でなければ、今ので無傷はありえません!!」

 

 

「で、でもよ!」

 

「ああ!もう!」

 

 

なおもごねる少年を、仲間たちが無理やり連れ出す。

その光景をを確認し、それは無数の腕を伸ばすが届かない。

豊富な魔力を持つ、極上の餌を逃したそれは、自棄喰いをするかのように兵士たちを喰い尽くす。

 

 

その様から、化物と以外に形容しがたいそれに、あえて名をつけるならばこうだろう。

 

 

 

 

 

 

『混沌』、と。

 

 

 

 

 




IFルートは、全四話で終わる予定です。
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