グレート=ブリッジが『混沌』に襲撃されてから一年後。
この一年の間に事態を重く見た、連合・帝国両陣営、さらには『完全なる世界』が表立って休戦条約を結び、『混沌』の抹殺のため協力体制をとっていた。
そして舞台は最終局面。
『墓守人の宮殿』へと移る。
「………なんだよ、ありゃあ」
連合の最高戦力とも言える少年が、喉の奥から搾り出すように言う。
その視線の先には、
「「「「「「「「ウオオォォォォオオォオオォオオオオオォォォォォォ……………………」」」」」」」」
『墓守人の宮殿』を飲み込むかのように覆い尽くす『混沌』と、既に絶命し、今まさに飲み込まれている『造物主』がいた。
「……………あんだけ強い『造物主』が、やられたってのか?」
「ナギ!呆然としている暇はありません!どうやら、『造物主』との戦いで、奴は弱っています!叩くなら今です!!」
「!!………ああ、そうだな、アル!」
仲間の叱咤に、闘志を燃やす少年。
全ての元凶に顔を向け、
ギョロォォッ…………!!
「(ゾクゥッ!)」
いくつもの、本能による一つの思考しかない目と、目が合ってしまった。
いや、それは思考と呼べるほど複雑なものではない。
ただの欲求。
最もシンプルで単純なそれが、最強と冠される少年に恐怖を抱かせた。
「「「「「「「「ガアアアアアアァァァァァアァァァァッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」
「くっ!?」
地が裂け、岩盤が捲れ上がる。
ただの咆哮が、もはや一つの攻撃として成立する。
そんな馬鹿げた現象を、少年は身をもって体感した。
だが、
「だからなんだってんだ!」
少年の心は折れず、あまつさえ、さらに奮起する。
震える手で、拳を握る。
不遜な表情で、敵を見据える。
その姿はまさに、『英雄』と呼ばれるに相応しいものだった。
「行くぞ皆!これが最後の戦いだ!!」
「「「「応(はい/うむ/ああ/ええ)!」」」」
彼らが挑むは、かつての英雄の成れの果て。
「クッソ!何で攻撃が通らねえんだよ?!」
「前にも言ったでしょう!何かしらの守護がかかっていると!」
『紅き翼』のメンバーたちは、何をしても効果がないことに焦り始めていた。
「おそらくですが、一定以上の強力な攻撃でなければ傷つけることもできないと思われます!!」
「一定って、どのくらいだよ?!」
「少なからず、『千の雷』クラスである必要はあるかと!」
『混沌』の攻撃を回避しながら、現状の把握に努める。
そして、その答えはもはや、絶望に類するものだった。
「俺の最強の魔法が『千の雷』だぞ!?詠唱の時間もあるし、そんなにポンポン出せねえ!!どうすんだよ!?」
「それを考えているんです!!」
たとえどんな絶望下でも、諦めたりなどはしない。
しかし、想いとは裏腹に、身体は疲弊し続ける。
その結果は、
「!?避けろ!詠春!!」
「え?」
仲間の危機という形で訪れた。
背中から、まっすぐに狙いを定めた一撃。
ユニコーンの角と思わしきものが、彼を貫かんとしていた。
「詠しゅぅぅぅんっっ!!」
「『
角と青年の間に一振りの、歪に捻れた剣が入り込み、爆発した。
その爆発で角は四散し、青年は爆風の勢いで離れることができた。
「だ、誰だ?!」
少年は戸惑う。
誰が仲間を助けてくれたのか。
なぜこの戦いに参戦したのか。
振り返って見る、数百メートル後方。
そこにいたのは、長い金髪をなびかせる美丈夫。
「『カイン・A・T・マクダウェル』。『あの男』に借りのある、ただの真祖さ」
かつての敗者、参戦。
実はあのまま詠春が亡くなる展開だったのを、この世界ではアベルが生存していることに気づいて変更したという経緯があったりします。