緊張する帰省。
「さて、どうしたものやら」
「………どうされました?」
「お前の両親に、なんて挨拶しよう」
ヤバイ。
何も思いつかん。
なんでか挨拶の文章を考えていると、結婚は認めないと猛反対される最悪のヴィジョンが浮かんで、まったくもって何も考えられなくなる。
「………大丈夫ですよ」
「何で?」
「………貴方は、私の愛している人ですから」
「………………ククッ!」
まったく。
この根拠のない自信は、いったい何なのだろうか?
これだから、女っていうのは。
「そうだな。じゃ、挨拶の言葉は会ってからぶっつけで良いか」
「………くすっ。ええ、私もその方が良いと思います」
じゃ、腹くくっていきますかぁ。
「………ただいま」
あの後、三日かかって着いたジャンヌの実家。
家を出て行った負い目からか、ジャンヌが遠慮がちに扉を開けると、
「……………ジャンヌか?」
なんか、ジャンヌに似た若い兄ちゃんが形容し難い顔をしていた。
ジャンヌの兄貴か?
「………ジャックお兄ちゃん」
あ、当たった。
「ジャンヌゥゥゥゥッッッ!!!!」
ジャック義兄さんが、全力でジャンヌを抱きしめようとする。
そりゃそうだろう。
だが、
「させん!」
ゴキャッ!
という、人間の身体同士がぶつかる時に出る音。
その顔面に俺の跳び膝が突き刺さっていた。
俺の嫁に抱きつこうなんざ、絶対にさせん。
それから三時間くらい経って。
「………お父さん、お母さん、お兄ちゃんたち、ヨハネ。帰って来ていきなりだけど、私この人と結婚します!」
はい。
結局、全部ジャンヌに丸投げました。
いや、いきなり跳び膝くらわせて、正直いたたまれない空気になった。
ていうのが理由だけど。
「わしは良いと思うぞ?」
「母さんも、貴方が選んだ人なら大丈夫だと思うわ」
ええ?!
あんたらの息子に、初対面で飛び膝をかました相手だぞ?!
良いの?!
「あっしも良いと思うぜぃ?」
次男も?!
確か、名前はピエールだったか?
大丈夫かこいつら?!
「むしろ、あたしに頂戴よ。姉ちゃん」
黙れ次女。
俺の女はジャンヌだけだ。
さっき年齢を聞いたが、この時代の16は嫁ぎ遅れ気味だからって、姉貴の男を狙うんじゃない。
「俺は認めん!!」
「うっさいシスコン!」
「………なんでジャックお兄ちゃんには、強く出れるんですか?」
「あの
「………あー」
もうジャンヌの実家なのに、今だにギョロ目の影がちらつきやがるとは。
もはや呪いのレベルだろ、これ。
「シスコンの何が悪い!妹を想う、兄の優しさじゃないか!!」
「ごめんジャック兄さん。あたしジャック兄さんのせいで、今まで彼氏いなかったんだけど」
「………私は一時期、男性不信になりました」
「どうしようもねえな、おい」
ジャック義兄さんを、俺・ジャンヌ・ヨハネの三人で責める。
あれ?
俺たち、何しに来たんだっけ?
ジャンヌの家族構成。
父:ジャック
母:イザベル
兄1:ジャック(世襲)
兄2:ピエール
妹:ヨハネ
といった構成です。