「なあ、本当に良いのか?」
「良いんではないでしょうか?」
あれから一ヵ月後。
ある教会の一室、俺とジルが一緒にいた。
「本当に良いんだよな?大丈夫なんだよな?」
「大丈夫ですから、そんなにソワソワしないでください」
これが落ち着けるか!
「俺、本当にジャンヌと結婚していいのかなぁっ?!」
「マリッジブルーも大概にしなさい!!」
俺こと水無月 六禄、ただ今絶賛マリッジブルー中。
え?
なんでジルがいるかって?
式をあげるから呼んだだけだ。
こいつの城宛に手紙を送ったぞ。
分体の伝書鳩で。
鳩が出るまでに、鶏が二十四回、ダチョウが二回、絶滅種のディアトリマが一回。
節操なさ過ぎるだろ。
つーか、飛べるもん出てこいや。
「大体、既に入籍は済ませたのでしょう?」
「おう。お前が着くまでの間に、ここの教会に申請しといた」
この時代、結婚するときには教会に申請しないといけないんだよね。
「しかし、貴方も人の子なんですね」
「どういう意味だ、おい」
化物してるが、人間を辞めた覚えはねえぞ。
「いえ。ただ単に、自分を絶対に押し通す貴方の、そんな姿が珍しいだけですよ」
「………………しょうがねえだろう。………俺も人の子なんだ」
あー、こっぱずかしい。
俺今、絶対顔紅いわ。
「………ププッ、ククッ、あっはははははははっっ!!!」
「笑うなや!」
ゴドッ!
「鈍器っ?!」
「ったく」
手近にあった燭代で、ギョロ目の頭をカチ割る。
しかし、なぜ断末魔が「鈍器っ?!」なのだろうか?
最後の言葉が、それでいいのかお前は?
「ジャンヌ。貴方は今、このムロクを夫としようとしています。貴方は真心から、このムロクを夫とすることを願いますか?」
「………はい」
神父の前、ウエディングドレスを着たジャンヌが宣誓をする。
本当に、綺麗だ。
「貴方は、この結婚が神の御旨によることを確信しますか?」
「………はい」
「貴方は神の教えに従い、清い家庭をつくり、妻としての分を果たし、常に貴方の夫を愛し、敬い、慰め、助けて、死が二人を分かつまで健やかなときも、病むときも、順境にも、逆境にも、常に真実で、愛情に満ち、貴方の夫に対して堅く節操を守ることを誓約しますか?」
「………神と証人の前に謹んで誓約いたします」
ジャンヌの宣誓が終わり、俺の番となる。
だが、
「ムr「ちょいと待ってくれや神父さん」…なんでしょう?」
神父の言葉を止め、出席者たちの方を向く。
義両親は泣き、ジャック義兄さんとジルが肩を抱き合って泣いている。
………お前たちは、いったい何時仲良くなったよ?
まあ、良い。
「式の最中になんだが、まずはお集まりの皆に礼が言いたい。感謝する。」
出席者たちは、俺が何をするのかと思ってソワソワしている。
いや、ギョロ目の野郎だけ、笑ってやがる。
テメーは泣いてんじゃなかったのか?
「今、こうやって宣誓をしているんだが、俺はあえて言いたい。神様になんざ、誓いはしない」
場が騒然とする。
そりゃそうだ。
結婚をドタキャンするって言っているようなもんだからな。
そしてギョロ目、テメーは相変わらず笑ってんじゃねえ。
「静かにして欲しい。今のは別に、結婚しないという意味じゃない。ただ」
チラッ、と横目でジャンヌの顔を見ると、
ギュっ
と、手を握ってきた。
これはまた、なんとも信用されたもんだ。
ま、期待には応えよう。
「俺はただ、神様にでも、あんた達でもない、ジャンヌだけに誓いたいだけだ」
この誓いは、誰のものでもない。
次回はジャンヌ視点です。
お楽しみに!