「綺麗よ、ジャンヌ」
「ああ、本当に」
「………お父さん、お母さん」
教会の一室、ウェディングドレスに身を包んだ私と、涙ぐみながら褒めてくれる両親がいる。
兄妹たちは、会場の準備のお手伝いだそうです。
「俺、本当にジャンヌと結婚していいのかなぁっ?!」
「マリッジブルーも大概にしなさい!!」
向かいの部屋から聞こえる、夫と友人の声。
………………何をしてるんでしょうか?
「………あの坊主、この土壇場でマリッジブルーになったか」
ああ、お父さんも、声に出さないけどお母さんも呆れています。
「わしは、お前を幸せにできないような男に、お前との結婚を許した気はないんだがなぁ」
「………お父さん」
あのお父さんが、いつもお酒を飲んで酔っ払って、畑仕事中に倒れたりしたあのお父さんが、こんなことを言うなんて。
「…………なあ母さん。わしが何をしたというんだ?」
「少なからず、娘に良い所を見せたことはなかったと思いますよ?」
お母さんが追い討ちをかける。
なんて酷な。
でも、私は、
「………でも、私は、そんなお父さんが………大好きです。……………あの人の次くらいにですけど」
「…………ジャンヌ」
思わず、涙ぐむを通り越して泣き出すお父さん。
本当に、大好きですよ。
お父さん。
「………ププッ、ククッ、あっはははははははっっ!!!」
「笑うなや!」
ゴドッ!
「鈍器っ?!」
そして向かいの部屋から聞こえる声。
……………本当に、何をしてるんでしょうか?
「ジャンヌ。貴方は今、このムロクを夫としようとしています。貴方は真心から、このムロクを夫とすることを願いますか?」
「………はい」
神父様の前、私から宣誓をする。
「貴方は、この結婚が神の御旨によることを確信しますか?」
「………はい」
「貴方は神の教えに従い、清い家庭をつくり、妻としての分を果たし、常に貴方の夫を愛し、敬い、慰め、助けて、死が二人を分かつまで健やかなときも、病むときも、順境にも、逆境にも、常に真実で、愛情に満ち、貴方の夫に対して堅く節操を守ることを誓約しますか?」
「………神と証人の前に謹んで誓約いたします」
この誓約は、絶対に嘘になんかならない。
いや、絶対にしない。
そして、彼の番になった時、それは起こりました。
「ムr「ちょいと待ってくれや神父さん」…なんでしょう?」
神父様の言葉を止め、出席者たちの方を向く彼。
それに会わせて振り向くと、両親は泣き、ジャック兄さんとジルさんが肩を抱き合って泣いている。
「式の最中になんだが、まずはお集まりの皆に礼が言いたい。感謝する。」
出席者たちは、彼が何をするのかと思ってソワソワしている。
いや、ジルさんだけ笑ってますね。
貴方は、泣いてんじゃなかったのですか?
「今、こうやって宣誓をしているんだが、俺はあえて言いたい。神様になんざ、誓いはしない」
場が騒然とする。
この場で結婚を取りやめるという発言にも聞こえるでしょうが、彼は絶対にそんなことは言わない。
「静かにして欲しい。今のは別に、結婚しないという意味じゃない。ただ」
チラッ、と彼が横目で私の顔を見る。
だから、
ギュっ
と、手を握る。
彼の口上を邪魔したくない。
だから、信じているという意思だけを伝える。
そうすれば、この人は、私の夫は絶対に期待に応えてくれるから。
「俺はただ、神様にでも、あんた達でもない、ジャンヌだけに誓いたいだけだ」
私の頬は今、絶対に紅潮している。
お父さん、お母さん。
私を生んでくれて、本当にありがとう。
私は今、世界で一番幸せな花嫁です。
女性視点は頭を使う………。