「さて、俺の故郷に行くにあたり、必要な心構えがある」
「………なんでしょう?」
あれから大体2時間くらい経った頃、フランスどころかゲルマン民族のうろちょろしている地域に差し掛かった辺りで着替えて、今後の方針決めとかをしている。
で、必要な心構えとは、
「これから地球を約半周します」
「…………………はい?」
いや、マジでマジで。
「………あの、地球は平面だから、周ること自体できないんじゃ?」
ん?
ああ、この頃はまだ、天動説なのね。
「見れば分かる。この世界に端なんてない」
「………見たことあるんですか?」
「あるぞ?空から確認した」
前世ではブラジルに旅行したことがある。
「それに、地球の端の滝なんて、いまだかつて誰も見ちゃいない」
「………それもそうですね」
誰も見たことがないものが、存在するかのように扱われる。
なんとも、常識とは面倒臭いものだ。
「あ、それからもう一つ注意しておくぞ?」
「………いっそ、現地が未開の土地と言っても、驚きませんよ?」
「ほぼ正解」
「………………」
いや、俺の生まれは神奈川だからねぇ。
しかも鎌倉とか横浜とか、そういう開けた場所じゃないとこ。
山・オブ・山。
しいて言うなら、桜が綺麗。
それだけ。
「ま、なんにしろ良いとこではあるぞ?」
「………たとえどんな所であろうとも、私は夫に着いて行きますよ?」
ククッ!
嬉しいねぇ。
「じゃ、行こうか」
「………はい!」
手を繋ぎ、歩みだす。
で、
「……………真冬の日本海か」
「………大荒れですね」
目の前は荒れる日本海。
………もっと、あちこち見て来れば良かった。
そうすれば、春先の穏やかな日本海を渡れたのに。
「闘牛とか、ピラミッドとか見て来れば良かった」
「………方角が真逆ですよね?それ」
気にするな。
見たかったんだ。
「うー、さみい」
「………宿に戻りましょうか?」
「そうするかぁ」
ただ今韓国。
今日の晩飯は、いったいなんだろうか?
「………………出たよ」
冬場の保存食なのは分かる。
だが、なぜコンオフェなんだ?!
宿のおばちゃんに、コンオフェはやめてくれって言ったよな?
「そしてジャンヌ。お前はなぜそれが食える?」
「………意外と、美味しいですよ?」
いや、俺は臭いの時点でパスなんだが。
朝鮮半島の皆さん、ごめん。
俺、無理。
「まあ、米が食えればそれで満足」
何年ぶりかね?
この懐かしい味、もっちりねばねばした舌触り。
日本人は、やっぱり米だな。
あれだ、パンばっか食っていられん。
日本人の主食は米だわ。
ここが韓国でよかった。
日本と米が一緒。
東南アジアの米は、日本人には合わないからねぇ。
「………でも、好き嫌いは良くないです」
「でもなぁ」
「………お祖母さんとの約束では?」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
ああ、トラウマが走馬灯のようにフラッシュバック。
「………しょうがないですね。はい、あーん」
「……………いや、唐突に何?」
「………あーん」
「あの?ジャンヌ?」
「………あーん」
「いや、無理だって」
「………あーん」
「………あーん」
ああ。
折れたよ。
て言うか、あーんの魅力に勝てなかったよ。
ぱくっ
ふむ。
口に入れた瞬間に、口内に広がるアンモニア臭。
味なんて、まったく分からない。
て、
「鼻がもげるぅぅぅぅっっっ!!!!??」
「………無理なものは、無理でしたか」
余裕ぶっこいて感想言っている暇なんてなかった!
鼻が!
鼻がああぁぁぁぁぁっっっっ!!!
ちゅっ
………ん?
今、唇に何か触れた気が。
「………口直しです」
「………もっと欲しいって言ったら?」
顔を真っ赤にしたジャンヌに訊く。
「………好きなだけ、してあげます」
こうなるならば、コンオフェもなかなか悪くはない。
『コンオフェ』
口にすると凄まじいアンモニア臭が鼻を抜け、軽く地獄を見れる。
なのにマッコリで流すとスッキリするとか。