そして春になり、日本。
「おーおー。古都京都とは言うが、この頃は新都って言うのがしっくり来るねぇ」
「………ここが、日本の首都ですか。……………木造建築が多くて、フランスとは違った雰囲気ですね」
はい。
韓国から穏やかになった日本海を渡り、京都に来ました。
気がついたら、韓国に三ヶ月近くいたよ。
「京都に限らず、日本は木造建築が多い。四季があって多湿の日本の気候には木造が一番だからな」
「………なるほど」
「あ、あれが五条大橋だ。義経と弁慶の、出会いの場として有名だな」
「………おー」
まあ、しかし。
「俺としては、後は清水寺でも見て、とっとと京都を出たいんだがな」
「………何でですか?」
「日本において、ここ、京都ほど排他的な場所はない」
一見さんお断りって、何なんだ一体。
商売する気あんのか?
「………こんなに良い町なのにですか?」
「ジャンヌ。俺のとある友人(京都出身)の言だが、京都で褒められたら皮肉と思えだそうだ」
友達いわく、観光産業で成り立っているのに排他的。
そんな不思議都市京都。
町が良くても人はどうだか。
だって。
………あの男、京都で何かあったのだろうか?
転校してきた理由は、親の都合だったらしいが。
「とまあそんな理由があってな、あまり京都に長居はしたくない」
「………分かりました。では、行きましょう」
手を繋いで、歩き出す。
……………手汗が凄くないか?
ジャンヌ、今の説明でビビリまくってるな。
そして清水寺を見た後、生まれ故郷の神奈川(この頃、なんていうんだ?)に向かって歩いていると、小さな農村に差し掛かった。
「………どの国にも、このような風景があるのですね」
「当たり前だ。人が集まって、暮らしている。そんなことは、特別でもなんでもないからな」
たとえ肥沃な草原だろうと、枯れ果てた大地だろうと、不毛の砂漠だろうと、惨めなゴミ溜めの中だろうと、人は集まれば生きていける。
目の前に広がる、実に牧歌的なこの光景も、その中の一つに過ぎない。
「て、ん?」
ふと気付くと、なんかジャンヌがむくれていた。
「どうした?」
「………今の目は、嫌いです」
「………………は?」
何を言ってんだ?
「………特別でもなんでもないって言ったとき、また空っぽの目をしてました」
………ククッ。
なるほどねぇ。
こいつと居ることで満たされてきてはいたが、俺は未だに虚ろのままらしい。
「悪いな。どうやら俺は、未だに空っぽみたいだ」
「………謝らなくていいです。私が絶対に、あなたを満たしますから」
………………ああ。
そうか。
「ククッ、任せたぞ?ジャンヌ」
「………任せてください。それと」
「それと、なんだ?」
「………今の目は、空っぽじゃないですよ?」
なんとなく、俺の生きる理由が分かってきた気がする。
なんとなくです。
なんとなくなんです。