「2012年はせ、せ、世界の滅ぶ年~♪」
調子外れに歌うが、実際2012年に世界が滅ぶわけではないらしい。
ペルーに着いて四日目の夜。
連日のように続く宴会に参加し続けたわけだが、いい加減一つの港に居るのも飽きたため、マヤの遺跡でも見に行こうかとしていた。
夜の町の明かりの中、ジャングルの方角に向けて歩き出す。
「マヤのピラミッドは、蛇が階段の飾りになってるらしいな」
未だにエジプトのピラミッドは見れてないんだよね。
だから先に見ておきたいってだけなんだが。
「さて、お前はどうする?………エル・ドラゴ」
「ありゃりゃ、バレてたのかい」
後ろに声をかけると、物陰から現れたエル・ドラゴ。
「何時からバレてたんだい?」
「俺の5M後方を付回したときから」
「最初からじゃないか!?」
いや、だって5Mだぜ?
しかもヒールだぜ?
そりゃ分かるって。
何でそれでバレないと思ったよ?
「で?何でつけてきたんだ?」
「あんたが道に迷ってたから、呼び止めようと思ってね。欧州に戻る船は、そっちにはないよ」
………ククッ。
なるほどねぇ。
「迷ってなんかねえよ。ちょっとばかし、見せたい物があったんでな」
「………死んだ嫁さんにかい?」
「おう」
まだまだあるぞ?
あいつに見せたかったもんなんて。
「………あんたは………………、あんたは何時までそうやって生きてくつもりなんだい!?」
「!?急に怒鳴るな!」
何なんだこの女は!?
あー、耳がいてえ。
「なんで、なんでそんな生き方しかできないんだい?…これじゃあ、あんたがアンマリじゃないか」
俯いて、唇を噛み締めるエル・ドラゴ。
その表情は、今にも泣きそうだ。
だが、
「話はそれだけか?だったら、もう行かせてもらうが」
踵を返して、とっとと目的地に行こうとする。
俺の生き方は、あの時に固定されてしまった。
いまさら変えることなんて、できはしない。
「待ちな!」
「ああ?」
うろんっ
と、そんな擬音が似合うかのように、首だけで振り返る。
俺を呼び止めたその顔は、何かを決意した顔だった。
「……………アタシは、あんたが好きだ」
「………え?」
は?
いやいやいやいや。
「えっとー。お前、俺のこと嫌いだって言ってたよな?」
「あんたのその身体が嫌なんだ。でも、あんたは嫌いじゃない。前にそう言ったはずさね」
………あー。
なるほど。
言ってた言ってた。
「て、納得するか。阿呆め」
「だろうね。じゃあ」
一歩、俺に近づくエル・ドラゴ。
「こういうのはどうだい?」
クチュッ
気がつけば、唇どころか舌が触れていた。
はい。
唇を奪われました主人公。