最初に会ったときは、捕まったっていうのに余裕な態度をとり続ける、面白い奴という印象だった。
その後、ふざけた実力を持つ吸血鬼だと分かり、そのことが気に食わなかった。
それが、一緒に酒を飲み、航海をしていくうちに、少しづつ変わっていった。
そして今、唇が離れる。
身体が火照って、しょうがない。
「………気は済んだか?」
ッ!
……………ああ、そうかい。
そういう風に冷めた目で、そういうことを言うのかい。
だったら、アタシにも手があるよ!
「ん?おい、お前どこを掴んで…うおっ?!」
ガッ
ドサッ!
襟元を掴み、足を刈って押し倒す。
そのまま身体を足で挟み、腕を押さえ込んで動けなくする。
「どうだい?もしかして、こういうのが好みかい?」
「俺は下にいるよりも、上の方が好きだ」
その顔は、サディスティックに笑っている。
まったく、可愛げのない男だよ。
て言うか、あんたは今、女に組み敷かれてるんだよ?
その余裕は、いったい何なんだい?
ま、いいか。
「じゃあ、こういうのは?」
顔を近づけ、
ピチャピチャ
と、周囲に濡れたもの同士が触れ合う音がする。
組み敷いてから、まったく抵抗しないのを良いことに、その口内を蹂躙する。
「んっ」
思わず、声が出る。
吐息が漏れ、熱くなる。
チュッ
と音を立て、唇が離れる。
二人の間には、一筋の糸が垂れている。
「どうだったよ?」
「そらぁ、気持ちよかった。でもな」
ガバッ!
「これでお終いだ」
アタシの問いに対する答えは、上下の入れ替えと終了宣言だった。
~Side主人公~
「………アタシじゃあ、ダメなのかい?」
「ああ、ダメだな」
お前は良い女だけどな。
「このままじゃあ、あいつに顔向けができん」
そもそも、キスでもアウトだと思っているぞ、俺は。
「百年以上想い続けてんだろう?だったら、いい加減嫁さんも許してくれんじゃないかい?」
何を言っているか。
「たとえあいつが何を許そうとも、俺はあいつしか想えんよ。だから」
少し、言い澱む。
そういえば、こういう経験は初めてだったな。
「だから、お前を想うこともできない」
生まれて初めて、女をふった。
ジャンヌとは初めからうまくいっていたし、あいつが死んでからは、ずっと独りで居続けたからな。
まったく。
我ながら、身持ちが固すぎる。
別に、あいつに操を立てているというわけではないんだが。
「………そうかい。…………………迷惑をかけたね」
「いや、いい。女にかけられる迷惑なら、いつでも歓迎だ」
俺も男だからねえ。
女に頼られたり、好かれたりすれば普通に嬉しい。
それが良い女なら、なおさらだ。
そして、下に居る女が痛みを感じないように立つ。
「じゃあ、俺は行くぞ?見たいものが色々あるからな」
「ああ、分かったよ。どうせ、最初っから止められるだなんて、思ってもなかったしね」
「そうかい」
何で?
なんて野暮なことは訊かない。
訊かなくても、分かるものだってある。
「じゃあな。…………『フランシス』」
頭を掻きながら、振り向かずに立ち去る。
あー。
こっぱずかしいこと言ったー。
~Sideフランシス~
………フランシス、か。
「フフッ」
いつも、線引きをするかの様に通り名で呼ばれていた。
でも、最後には名前で呼んでくれた、か。
「これは、まだチャンスはあるかもねぇ」
そう言いながら、立ち上がる。
さて、そろそろ部下たちのところに戻ろうか。
この時間なら、全員船で酒でも飲んでいるはずだ。
「あんたたち!今戻ったよ!」
「「「「「「船長!」」」」」」
船に戻ったアタシを出迎えたのは、
「………なんで、あんたたちパンツ一丁なんだい?」
「「「「「「ムロクとカードで負けて持っていかれました!」」」」」」
馬鹿ながらも、愛すべき部下たちだった。
て言うか、最後になんてことをしてくれたんだい。
まったく、あの男は。
「あはっ!あははははっっ!!」
思いっきり、泣くほど笑う。
この頬をつたう涙が、こいつらを心配させないように。
亡くなった奥さんだけを一途に愛し続けている主人公でした。
そういえば、『フランシス・ドレイク』ってこの時点で35歳という事実が。