むう。
やはり、ここ最近外からの侵攻が増えておる。
痕跡は関西の強硬派を示しておるから、婿殿に言っておかねばならぬし、その間現状をしのぐためには、新たに戦力を手に入れねばならぬし。
しかし、即戦力を整えることは、非常に難しい。
………いや、おったか。
超特Sクラスとも言える、最強の即戦力が。
でものぉ。
脅されたからのぉ、儂。
ああ、あの時のことが思い出される。
以下回想じゃ。
「よう。あんたがこの町で一番偉い人間か?」
「そうじゃが、お主は?」
学園長室で仕事をしている最中に、いきなり現れた男。
いったい何者で、何が目的じゃ?
「ちぃっと、定職と住居が欲しいんだけど」
………何を言っておるのじゃ?
この男は。
「そんなもん、自分で見つければよいじゃろう」
儂に頼むべきことでは、なかろうに。
「いやいや、それがそうも行かなくてな。子供が三人もいるし、何より」
ズォッ!
と、奴の体から何かの獣が出てきて、椅子に座った儂を押し倒す。
「こんな身体なんもんでねぇ、下手に一般のところで就職できないのよ」
奴が、儂を見下ろす。
下手に魔法を使おうものなら、一瞬で首を噛み千切られるであろうことが理解できた。
「………お、お主は、いったい?」
「吸血鬼」
「ッ?!し、しかし!わしに手を出したならば、この麻帆良の全魔法使いがその杖をお主に向けることになるのじゃぞ!?」
「俺の言うことがきけなかったら、麻帆良の全住人の命が無いぞ?」
そ、そんなこと、できるわけが!
「『オルレアンの英雄夫婦』」
「?!」
「俺がその夫だ」
『オルレアンの英雄夫婦』の夫と言えば、伝承によればありとあらゆる軍勢相手でもその妻を守りきり、最後には自国の軍隊からも逃げ切ったという、英雄ではないか!
………たしかに、彼ならば可能じゃろう。
「………そちらの望み、確かに承った」
「ん。ありがとうね」
こうして麻帆良は、たった一人の男に屈したんじゃ。
そして今、その男に頼らねばならなくなっておる。
~Side六禄~
なんか、近右衛門の小僧に呼び出された。
1月の風が、めっちゃ寒い。
「呼んだかー?」
「ホッホッホ。よく来てくださったの」
胡散臭い笑い方をすんな。
「で?俺に何のようだ?」
「実は、夜の警備をして欲しくての」
「別に良いぞ?」
「ホッ?!本当かの?!」
なんだ、そんなことか。
「最近は、うちの子供たちも学校や幼稚園で友達できたからなぁ。それを守るためとしたら、やぶさかではないさ」
俺は、父親なんでね。
まあ、あくまでも優先はうちの子供たちだが。
「それは良かったわい。………む?どうやら、早速来たようじゃの」
近右衛門が、侵入者を感知したらしい。
「じゃあ、行ってやるから、金は弾んどけ」
「分かっておりますじゃ」
夜の麻帆良を、俺は駆ける。
脚部に群体を集め、脚力をたたき上げて跳躍。
眼下に広がる森には、式紙と思われる50程度の鬼たちと、その術者たち3名がいる。
どうやら、まだ魔法教師ならびに生徒は来ていないようだ。
とりあえず、戦力は隠しておきたいし槍でいくか。
「さあ、蹂躙だ」
奴らの空は、膨大な殺意で埋め尽くされた。
次回、主人公がバトルします。