魔法世界の混沌   作:逸環

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前書きに書くことがなくなってきた七話です。


問題と解決。

一夜明けてオルレアン門前。

 

 

「………なぜ来てしまった?」

 

 

必要とあらばジャンヌを掻っ攫うつもりで来ていたが、戦争に参加する気は若干程度しかなかったというのに。

 

 

「………こんにちは」

 

「おいっす」

 

 

声をかけてきた参戦の原因。

まあ、頼られたと思えば悪い気分ではないが。

 

 

「………申し訳ございません。……………本来なら、部外者の貴方にこんな」

 

「気にすんない。『見物料』を支払っているだけだ。それに、あの場はお前のおかげで穏便にすんだ。」

 

「!………分かっていたのですか」

 

 

あのままでは、俺の一方的な殺戮が始まっていた。

聖女はそれを防ぐために、あのような提案をしていた。

 

実際、契約は成立しているし気にすることは無い。

 

 

「………でも」

 

「俺は必要な血液が補充できる。お前らはオルレアンを解放できる。何一つ問題は無い」

 

「……………貴方は、戦うのが怖くないんですか?命を奪うことが、怖くないんですか?」

 

 

おおう。

まさかの質問だ。

まあ、答えならとっくに出てはいるが。

 

 

「戦うわけじゃない。俺の場合はただの食事だ。命を奪うって言われても、あんたらが豚やら何やらを食うのと似た感覚だしな」

 

「………………………………」

 

 

嘘だ。

 

確かに、戦うのは怖くはない。

喧嘩ばかりの人生だったから、行き過ぎて命のやり取りをしたことも多々ある。

 

だが、俺はまだ人間としての部分が強い。

吸血だけならまだしも、能力のことを考えたらどうしても『食べる』という選択肢しかない。

なのにどうして、家畜を食うのと同じ感覚になれるか。

 

なれるわけがない。

 

しかし、この世界に来て一ヶ月チョイ。

幸い、まだ吸血衝動は現れていないが、それも時間の問題。

肉体の維持もそろそろ限界だ。

 

人間としての部分は拒絶するが、それが必要であるならばするだけの話。

他人と自分なら、俺は何があろうとも自分を選ぶ。

 

まあ、そんな自分にムカついたりするわけなのだが。

 

 

「だから安心しろ。俺がお前の敵を喰らい尽くしてやる」

 

「………………分かりました。ですが、絶対にご無理をなさらないでください」

 

 

無理をするな、ねえ。

 

 

「阿呆。女の前でくらい格好付けさせろ。そのためなら、多少の無理くらいするさ」

 

 

惚れた女ならなおさら。

それが『男の子』ってもんだ。

 

さて、参戦が決定したが、ここで問題が生じる。

史実によれば、オルレアン解放は4月29日~5月7日の間に行われている。

 

俺が手を出せば、行軍の時間などを考慮して、実質三日あれば十分ケリがつく。

 

 

「でもなあ、それだと駄目なんだよなあ」

 

「……………何が、ですか?」

 

「ん~?全部俺が手を出すかどうかって話」

 

「………駄目、なんですか?」

 

「当たり前だ。戦争はな、一つの産業としての側面も持っている」

 

 

例えば、武器が当然必要になり、その手の商人が儲かる。

また、兵糧も必要だからその関係も儲かる。

 

まあ、兵糧に関しては臨時の税として取り立てるというパターンも多いが。

 

 

「兵士たちだって、手柄首を挙げて出世を狙っているし、俺が単騎で出れば被害は無いだろうがただでさえ薄い戦争の『意義』が消えちまうんだよなあ」

 

 

…………おい、そんなに驚いたような顔をするな。

 

なんだ?

俺がそんなことも分からない阿呆だとでも?

 

 

「…………驚きました。できるだけ人が死ななくてすむように、と思って行動してきたのですが。…………戦争に『意義』なんてあったなんて」

 

「ああ、戦争がくだらないいていう種類の人間だったか?まあ、実際くだらないな。悲しいことに、人が死ぬ条件、いや、『死のうとする』条件が整っているし」

 

「『死のうとする条件』ですか?なかなか面白そうな話をされていますな」

 

「ジル・ド・レェか」

 

 

いつの間にか後ろに立ちやがって。

見ろ、ジャンヌなんかビックリしすぎて顔が面白いことになっている。

 

 

「それで?『死のうとする条件』とは?」

 

「簡単だ。『護らなくてはいけない時』、これがその条件だ」

 

「………『護らなくてはいけない時』、ですか?」

 

「どういうことでしょうか?」

 

 

むう。

説明してもいいんだが。

 

……………面倒だな。

 

 

「俺も、俺の先生からの受け売りでな。答えはよく知らん。自分たちで考えてみてくれ」

 

「「………………………………………」」

 

 

うん。

問題を出すだけ出して、自分でもすごく無責任だと思う。

まあ、貴族なら分かってもらわなくては困る問題だが。

いや、片方は田舎娘か。

 

ちなみに、今の問題を出したのは中学の数学の先生だ。

因数分解の授業の最中に教えてくれたが、「本当は社会科の教師になりたかった」と言っていたのが記憶に残っている。

 

よく授業をサボって競馬をしている先生だった。

そのせいでPTAに訴えられて教師を辞めさせられかけたのを覚えている。

それも4回。

よく俺の卒業式まで残っていられたものだ。

 

 

「…………ある意味、聖女の奇跡を越えていたな」

 

「………え?」

 

「気にするな。こっちの話だ。まあとにかく、俺はジョーカーどころかワイルドカード。ここぞという時にしか出ない、と言うか出れないからな」

 

「………分かりました」

 

 

物分りがよくて助かる。

とりあえず、これで歴史が変わりすぎるのは防げそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ところで、じょーかーとか、わいるどかーどとは何なのですか?」

 

「………カードしないの?」

 

「…………田舎育ちなので」

 

「………………………………………」

 

 

 

 




利己的でありながら、欲に塗れながら、矛盾を抱えながら、それでも答えを探し続ける、そんなどこまでも人間臭い主人公を目指しています。
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