「なぁに?」
「俺たちって、付き合ってるって言うのかな?」
「ふえぇっ?!」
「………予想外に
「えいっ!えいっ!」
プシュッ!プシュッ!
と、音を立てて噴出それを避ける。
しかし、
「可愛い声に反して、やることはエグイな、おい」
掌の傷口から十字型の高圧の血液を噴出するって、相当にアレな絵面だと思う。
なまじこいつは顔が良いから、余計にそう思うな。
「えへへ」
「照れるなっつの」
本当に頼むから、まともだった頃に戻って欲しい。
『人造人間』は人格か記憶、もしくはその両方が壊れて
まったく持って面倒臭い。
「つーか、さっきからガチでお前殺しに来てるのな」
「アハハ!当たり前だよ!だって」
トロンとした、ハイライトの消えた目になり、
「まーくんを私だけの者にするためなんだから」
………ゾクッと来た。
背筋にゾクッと来た。
これはヤバイ。
具体的には、未来のことを書き出す日記の持ち主になったら殺人鬼に追われるんだけど、なんだか分からんが女の子に助けられて、その子が重度のヤンデレだったのと同じ位ヤバイ。
「まあ、俺に日記を書く習慣はないから、そんなイベントは絶対に訪れないけどね!」
「ヤンデレ枠は埋まってるよ!」
知らねえよ。
そもそも埋まってねえよ。
永久欠番だよ。
埋まって欲しかねえよ。
そしてヤンデレの自覚はあったのかよ。
「ま、そんなことはどうでもいいから、死・ん・で♪」
「阿呆ぬかせ」
ちなみに、こんな会話をしながらだが、菫が『茨の十字』を連射したりしているので油断ができない。
しかも、
「えいっ!」
プシュッシュンッ!
さっきから地味に、『茨の十字』に紛れて圧縮された空気の刃を飛ばしてくるから性質(たち)が悪い。
緩急と威力に差がある、いい攻撃になってしまっている。
射出口が違うから、同時に噴出することもできているし。
まあ、
「よっと」
割と簡単に避けられるわけだが。
師匠の拳の方が、圧倒的に早かったし。
「あーもう!避けたら殺せないから、避けないでよまーくん!」
「お前がもの凄い無茶なことを言っていると知って欲しい」
避けないなら避けないでも、『十二の試練』のおかげで無事なわけなんだが。
「まあなんにしろ、そろそろこっちから行くぞ!」
「ふぎゅっ!?」
最近覚えた瞬動で一気に懐に入り、振りかぶった拳を腹に叩き込む。
そのまま面白いように飛んで行き、木にぶつかってようやく止まった。
少し砂煙が立ち込め、菫の姿を隠す。
そして、
「ア…アハハ…。これがまーくんのくれる痛みなんだね?まったく、痛みを感じにくいこの身体が嫌になっちゃう。せっかくまーくんがプレゼントしてくれたものなのにね。あ、大丈夫だよ、まーくん。気にしないで。まーくんがくれるものは、それが物でも、痛みでも、愛でも、子種でも、全部全部受け取って愛し尽くしてあげるから」
未だ立ち上がらず、砂煙の中から聞こえた声は俺に一つの思いを抱かせ、後悔させるには十分だった。
何故、あの時俺は死んでしまったのだろうか。
密かに設定した菫のテーマは、行き過ぎた恋の恐ろしさではなく、『貴方が死んでも世界は続く』だったりします。