門の上から戦場を見渡す。
「おーおー、やってるやってる」
「…………目を瞑って、何をなさっているのですか?」
「分体を門の上に飛ばして、戦場を見ている」
今、門の上にいるのは鳥の因子から出した分体だ。
ちなみに、鳥の因子と指定して出したとき、最初に出てきたのが鶏だったのは焦った。
あんな使いどころの無いもの、どうしろと。
「………吸血鬼の魔法ですか」
「別に吸血鬼限定じゃなくて、俺限定なんだがな」
『獣王の巣』は体内に展開した『固有結界』だからな。
『固有結界』は発動者の心象風景で世界を塗りつぶすもの。
心象風景は人それぞれだから、『獣王の巣』は俺以外には使えない。
いや、まあ『獣王の巣』は神から貰ったものだから、俺の心象風景ではないだろうが。
と言うか、そうであってほしくはない。
「………そもそも、吸血鬼とは何なのですか?」
「ん?ククッ、教会に狩られる化物さ。なあ、『聖女』さん?」
「………そんな意地の悪い言い方をしないでください。………吸血鬼とは、どのように生まれるのですか?…ここまで人とそっくりというのはどうも」
ああ、そういうことね。
「吸血鬼には二種類ある。一つは生まれた時点で吸血種である者。これは『真祖』と呼ばれる。もう一つは他の吸血種に咬まれて吸血鬼化した者。こっちは『死徒』と呼ばれる。俺は後者だな」
ここがネギまの世界ならば、『真祖』の扱いが違うだろうが、まあどうでもいい。
「……………では貴方は」
「そ。元人間だ」
いや、意識的にはまだ人間だがな。
「……………吸血鬼になってどのくらい?」
「そろそろ二ヶ月」
うん。
割と最近だよね。
「……………なんで、吸血鬼に」
「知らん。事故みたいなものだ。死んで、目が覚めたらこうなっていた」
嘘はついていない。
死んで、目が覚めるまでの間に一悶着あったが。
「まあ、おそらくは死んでいる間に吸血鬼かなんかに咬まれたんだろう。じゃなかったら、俺の頭の中に流れ込んできた知識の理由がつかない」
「………知識?」
「ああ、この体のこと、使い方とかの知識だ」
もう一度言う。
嘘はついていない。
「………貴方に、神の祝福があらんことを」
「唐突に十字を切るな。祈るな。なんかあったのかと思って地味に怖い」
まあ、祈ったところで俺が会ったあの神はキリスト教とは無縁そうだが。
しかも、きたのは祝福じゃなくて同情だったし。
まあ、そんなことは、どうでもいい。
「んじゃ、お天道様もまだ高いし、俺はそろそろテントで休むわ」
「……………ところで、吸血鬼は日に弱いと聞きますが、そうでもないようですね」
「ん?そうでもないぞ」
なんだ。
気付いてなかったのか。
「俺はずっと、日陰から出ていないぞ」
「…………………………え?」
俺は日陰の中にずっといたし、門の上の分体には覆いを被せてある。
前に一度、この世界に来たばかりの頃にうっかり日向に出てしまったことがある。
その瞬間、痛みも感じないやばいレベルの火傷になり、死にかけた。
「で、吸血鬼の回復力で治っていったのは良いんだが、治ってきてからが地獄でな。狂い死ぬかと思うくらい痛かった」
「………貴方に、神の祝福があらんことを。………せつに願う」
「いらん部分がついた?!俺そんなに幸薄そうに見えるの?!」
はい。
吸血鬼なのに祈られた主人公でした。