魔法世界の混沌   作:逸環

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ただの幼馴染だった。

俺にとってはそうだった。

だから、どれだけ女遊びをしても、お前には手を出さなかった。

家族だと思っている。

今でもそうだ。

あの時死んだことに、後悔はない。

でも、これは自分勝手な理屈だ。

だから言わせて欲しい。

死んでしまって、ごめんなさい。





八つ当たり。

スクナのいる湖か何かにつくと、

 

 

「うっ…、うぅ………」

 

「おや?君は?」

 

 

右腕が石化したネギと、白髪の無表情なガキがいた。

確か、『フェイト・ゼロ』だったかな?

 

ん?

名字が短すぎる気がするな。

 

まあ、そんなことは、どうでもいい。

 

 

「君が誰か分からないけど、ここに来てしまったからには、消えてもらわなくちゃね」

 

 

白髪ヘッドが何か言っているが、それを無視してスクナを見る。

 

うむ。

デカイ。

そして知らない女と木乃香ちゃんが、頭部周辺にいるのはなぜだ。

 

 

「…よそだなんて、余裕だね。小さき王(バーシリスケ・ガレオーテ) 八つ足の蜥蜴(メタ・コークトー・ポドーン・カイ) 邪眼の主よ(カコイン・オンマトイン)時を奪う(プノエーン・トゥー・イゥー) 毒の吐息を(トン・クロノン・パライルーサン) !『 石の息吹(プノエー・ペトラス)』!!」

 

 

俺に向かって吹き付けられる霧。

石化効果があるんだったかな?

 

ふむ。

 

 

「フッ」

 

「え?」

 

 

石化するまでのタイムラグの間に霧の中を突っ切り、白髪ヘッドの目の前まで接近し、

 

 

「ハァッ!」

 

「グハァっ!!?」

 

 

内臓がグチャグチャになるような一撃を、腹部に入れる。

これでしばらくは動けないはずだ。

 

 

「カハッ!」

 

 

奴の口から出た血は、その髪と同じ白。

ヘモグロビンとかはどうなっているのだろうか。

 

と、石化をどうにかしなくちゃな。

とりあえず石化した部分を切り離して砕いて、その部分が死んだら取り込んで蘇生すれば、

 

 

「復活」

 

「…君はいったい、なんだんだい?」

 

 

俺?

俺ねぇ?

 

 

「ただの父親さ」

 

「………そうか」

 

 

実際問題、ヘタに能力とか知られたくないから、英雄とか言うよりは数倍良いだろう。

 

 

「ッ!?カハッ!」

 

 

白髪ヘッドがまた吐血する。

 

 

「…クッ。これじゃあ僕も、しばらく動けそうにないね。退散させてもらうよ」

 

「おーおー、勝手にしろ。俺だってガキを殴るのは心苦しいんだ」

 

 

バシャッ、と音を立て、水のゲートで消えた白髪ヘッド。

これで残すはスクナだけだ。

 

 

「な!何をこっち見てんねや!?スクナ!潰してまえ!」

 

 

スクナの頭上から、黒い長髪の女の声が聞こえる。

名前は確か、『天ヶ崎(あまがさき) 千草(ちくさ)』だったか。

 

さて、あの巨体どうしたものか。

 

 

「ヴオォォォォォォッッッ!!!!」

 

 

考えている内に、スクナがその四本あるうちの一本の腕で殴りかかってくる。

体格差のため、斜め上からだ。

これでは『消力(シャオリー)』を使ったとしても、地面に叩きつけられてしまうから意味がない。

 

では、どうするか。

簡単なことだ。

 

全力で、ただ、

 

 

「…絶招」

 

 

武を始めてからの七十七年、そして、初めて拳を握ってからの、五百余年の全てを込めて、

 

 

「『崩拳』!!」

 

 

その迫り来る拳に、打ち込む。

 

 

ゴォッ!!

 

 

「ヴオオオオォォォォォォッッッ!!!」

 

 

拳と拳がぶつかり、スクナの腕が()ぜる。

 

 

「はあぁぁぁぁぁっ?!な、なんなんや今の?!」

 

 

うるさい声を無視して、軽気功を駆使して湖面を走る。

 

 

「グルオオオオォォォォォッッッ!!!」

 

「う、うわわ!?スクナ!早く潰してまうんや!!」

 

「もう遅い」

 

 

一気に距離を詰め、スクナの懐に潜り込む。

さすがに水上では踏ん張りが利かないので、足元に巨大な蜘蛛を出して足場を形成する。

 

 

「オラァッ!」

 

 

ドズンッ!!

 

 

「ヴオオオォォォォッッッ!!?」

 

「え?!ちょっと?!えぇ?!」

 

「このちゃぁぁぁん!」

 

「あ、せっちゃんやー」

 

 

スクナの巨体が浮き、湖に仰向けで落ちる。

その顔面の上に立ち、拳を引き上げる。

 

 

「……グ…、グオォォォォ………」

 

 

俺の足元で、弱々しく呻るスクナ。

 

 

「お前には悪いな」

 

 

口では謝るも、この拳を下ろさない。

なぜなら、

 

 

「これはただの、八つ当たりだ」

 

「グッ!ヴオオオオォォォォォォッッッッ!!!!」

 

 

スクナの顔面に、拳は振り下ろされた。

 

 

 

 

 




片やたった一人を狂ったように愛し続ける主人公。
片やたった一人を狂ってまで愛し続ける菫。

この二人、結構な似たもの同士です。
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