「ああ、夢か」
目を開けると、そこは白百合が咲き乱れ、まるで月を掴んだかのように見える大樹がそびえた平原だった。
それに俺、普通に夜になったから夜這いをかけようとする真名と攻防戦を繰り広げ、勝利して就寝したし。
そりゃあ、夢だって判断するさ。
しかし、この空間は妙に既視感があるな。
見たことはないはずなのに。
デジャブ?
あれ?
デジャヴだっけか?
まあ、そんなことはどうでもいい。
「しかし、夢は夢だと自覚したら覚めると聞いたことがあるが、アレはパチだったんだな」
「………いえ、そうとは言い切れませんよ」
「ほう、なぜだ?」
「………あなたが寝ている間に、私があなたの精神を『座』まで引っ張ってきたからです。ですから、今回のは夢とも言えることは言えますが、一概に一般的な夢と断ずることはできません」
「へぇ?………ん?」
……………あれ?
俺、誰と話してんの?
いや、この声は………。
「お前、そんなことできたんだな」
「………凄く頑張りました」
「ま、なんにしろ随分と久しぶりだな。………ジャンヌ」
「………本当ですね。…六禄さん」
何時間にやら俺の隣に来ていたのは、随分とご無沙汰なジャンヌだった。
「………それと、私だけではないんですよ?」
「は?」
いやいや。
さっき『座』に喚んだって言ったよね?
何?
そんなホイホイ誰かを喚べるもんなの?
そんなことを思っていると、
ドンッ
と、俺の背中に誰かがしがみ付いてきた。
「アハハ~。まーくんだ~」
「すーちゃんっ?!」
何でこいつがここにっ?!
「ジャンヌちゃんにお呼ばれしたんだよ」
「あれ?!お前たち仲いいの?!」
「………何故か『座』同士で行き来できるんです。普通はできないのに」
それで知り合って、仲良くなったというジャンヌだが。
…………………何故だ?
何故そんなことができる?
あれ?
『座』ってそういうもんだけ?
「まあ、そんなことはどうでもいいか」
「………考えることを放棄しましたね」
「面倒臭くなると放り出すのは、昔からの悪いとこだよ?」
じゃかぁしい。
「………ああ、それと」
「ん?どうした?」
「どうせなので、彼も呼んでおきました」
彼?
ジャンヌの繋がりで、男の英霊というと………。
「おおぉ!聖女!そして我が親友y「オラァッ!!」ホゴォッ?!」
やっぱりこいつか。
「出たなロリショタのリョナギョロ目」
「え?私貴方に殴られたのに、なんでそのまま会話が進んd「オラァッ!!」フグホォッ?!」
いやはや。
ここで会うことになろうとは。
「20年前かなぁ?お前が死んだ後に、後世でどう扱われたのか気になって調べてみたら、『プレラーティー』とかいうのと一緒に錬金術してて、その挙句生贄やら虐殺やら陵辱やらなんやらで子供300人犠牲?」
「い、いや、そ、その!」
「それを調べたばかりの頃は特に『あいつバカやったなぁ』で済ませたけど、こどもできてからはちょっと、ねぇ?」
ゴキゴキッ!
と、指の関節がなる音が渡る。
「さて、神に祈れ」
「か、神よ!私は貴方を冒涜する!!」
「『死を思え(メメント・モリ)』」
「私もう死んでますけど?!」
ゴキャッ!
「「………うわぁ」」
女子たちは見ちゃいけません。
「しかし、なんで集めたんだ?」
「………集まりたかったからですけど?」
………ジャンヌ、割と俺に影響受けたよね。
「………まあ、六禄さんに会いたかったというのが一番ですが」
「…そっか」
…なんか、恥ずかしいな。
「私もまーくn「ちょっと失礼」もがっ!」
何か言おうとした菫を、復活したジルが封じる。
お前、何気に良い働きするな。
「俺も逢いたかったよ」
「………はい」
「お前が死んで、あちこちを旅して、子供ができて、いろんな奴に出会って別れたけど」
「………はい」
「お前に一番、逢いたかった」
「……………はい!」
泣き出したジャンヌを抱き寄せる。
この感触も、このにおいも、何百年ぶりだったか。
まったく、愛おしくてしょうがない。
「………そういえば、この『座』は私と六禄さんの『座』が共有され、混ざりあって存在しているのですが」
「マジか」
それは予想外だったな。
いや、ありえないことではないだろうが。
「………最近、『座』が変化したんです」
「変化?」
『座』ってのは、変化するもんなのか?
いや、心象風景に左右されるから、変化はしてもおかしくはないか。
「………あの木ですが、前は月を掴もうと、手を伸ばしているようでした。でも、今は月を掴んだように」
平原の白百合がジャンヌの心象風景だとしたら、あの木は俺のものなのだろう。
だとすれば、それは、
「………もう、満たされましたか?」
「ああ」
そういうことなんだろう。
「『生きる理由』を探すために生きて、ようやく分かったとこだ」
「………それは良かったです。でも」
「でも?」
「………私が、見つけさせてあげたかったですね」
そう言って、寂しそうに笑うジャンヌ。
その顔を見ていると、
「…お前がいたから、答えが分かったんだ。お前がいなかったら、お前と逢わなかったら、俺は今でも彷徨(さまよ)ってたろうよ」
「………そう、ですか」
その言葉の後、また静かに泣き出すジャンヌ。
その華奢な身体を抱きしめ、耳元で言う。
「だから、俺はお前のためになら死ねる」
「………そんなこと、私は」
「でも、お前に見せたいものや、話したいことはまだまだある。だから」
一息吸い、告げる。
「俺はお前のために生きる」
「………はいっ」
そう頷くジャンヌに、キスをする。
ああ、もう時間だな。
「じゃ、次に会う時は俺が死んだ時だな」
「………まあ、私もそう簡単にあなたを喚べませんしね」
「大体、後60年程度待っててくれや」
「………あなたなら、もっと生きられるのでは?」
ジャンヌ、分かってないな。
「『子供は親より先に死んじゃいけない』なら、『親は子供より後に死んじゃいけない』んだぞ?」
「………そういうところが、変わったとこで、変わらなかったとこなんでしょうね」
どっちだよ。
ま、それにあいつらが死ぬとこなんざ見たくはないしな。
「………でも、こういうときは、なんて言いましょうか?」
「目ぇ覚ます時にいう言葉なんて、決まってんだろ?」
「私も言う!」
「では私も」
お、すーちゃんとジルもか。
じゃ、さん、はい。
「「「「おはよう」」」」
目を覚ますと、まだ微妙に子供たちが寝ている時間だった。
とりあえず顔を洗い、ボサボサの頭は放置する。
「あ、そういえば」
ふと、思い出し酒蔵へ行く。
そこで目当てのワインを見つけ、手に取る。
そのワインの銘柄は、
「ククッ。ま、今度の命日にするか」
『Jeanne d'Arc』。
そうこうする内に、子供たちが起きる時間になったようだ。
リビングに行き、三人と集まる。
子どもたちが、今日も元気に生きている。
ただそれだけのことが、たまらなく嬉しい。
だから、今日もこれを言う。
「真名、刹那、小太郎。…おはよう」
さて、今日も一日が始まる。
明日も、明後日も。
だが、それも何時かは終わる。
だからこそ、『今』を一生懸命に生きよう。
『今』は、『今』しかないのだから。
『座』にいるあいつ等に、俺が行ったときに笑われたくはないし、な。
ちなみにですが、にじファンの時のこの話のタイトルは、『カーテンコール』でした。
その時は規制強化に伴い、この回が最終話でしたので。
これで貯蓄していた分も終了。
これからが新スタートです。
これからの展開を、お楽しみに!