弟子入りと燕。
「僕に八極拳を教えてください!」
「え、いいけど?」
修学旅行から二日後の今日、白髪にボコボコにされたネギがもっと強くなりたいということで、弟子入りした。
別に断る理由もないし、ネギの立場と今後を考えたら、戦力増強は必須だろう。
と、いうわけでさっそく、
「指が!指が千切れるぅぅぅっっ!!!」
「大丈夫だ。そう言って後二十分は持つ」
壷を持たせてみた。
お決まりと言ってしまえばそれまで。
今日は初日だから、合計で三十分で済ませようと思っている。
「じゃ、次は足の運び方をやろうか」
「は…はい」
既に疲労困憊か。
まだ始まって三十分なんだが。
まあ、その三十分間ずっと壷を持たせていたわけだが。
そんなことは、どうでもいい。
「この杭の間をな、こんな感じで摺り足を意識して歩くんだ」
「はい」
数歩歩いて歩き方を見せてから、すぐにやらせてみる。
「よいしょっ、ほっ、うんせっ」
さすがになれない歩き方だからか、結構苦労しながら動いている。
俺も最初はそうだった。
ところで、後何百歩歩かせようか。
「それじゃあネギよ。一通り歩法もやったところで、人の殺し方を教えたいと思います」
「老師!言い方が怖いです!」
事実だからしょうがない。
武術なんて突き詰めちゃえば、どれだけ効率的に、確実に敵を殺すかの技術だし。
そんなことを考えながら、基本の『崩拳』を教えようとしたところ、
「神父さーん!手合わせに来たアル!」
バカレンジャーの何色かは忘れたが、バカレンジャーの一員が来た。
「帰れ。褐色似非チャイニーズが」
「酷いアル!?」
酷くない。
今時アルアル言う中国人はいない。
ん?
ちょっと待てよ。
「おーい、こたろーう」
「なんやー?」
良いことを思いついたので、杭の間を歩いていた小太郎を呼び寄せる。
「ちょっとこの似非チャイニーズと手合わせしてくれないか?」
「別にええよ」
「え!?神父さんじゃないアルか?!」
「神父さんじゃないんです」
第一、小太郎とお前でトントンだと思うぞ。
のびしろがまだある小太郎の方がより上に行くとは思うが。
「じゃあ、コタローに勝ったら、神父さんと戦わせてもらえるカ?」
「小太郎に勝ったら、次は刹那だな」
「………………………」
徐々に敵の実力が上がっていく、四天王方式。
「…もう、それで良いアル」
「分かってくれて何より。じゃ、二人とも向かい合って」
適当に引いた開始線に立ち、構えを取って向き合う二人。
二人とも、緊張とワクワクが混ざった顔をしている。
「開始!」
開始の号令とともに打ち合う二人。
その中には、ありとあらゆる技が使われている。
「しっかり見とけよ、ネギ。ああいう、生きた技を見たほうが後々良いからな」
「はい!」
全ての動きを見逃さないようにと、瞬き一つせずに食い入ってみるネギ。
ククッ、どれだけ見えているかは分からないが、将来が楽しみだな。
と、あの力の溜め具合、小太郎が決めにいっているな。
「絶招『秘拳・燕返し』!!」
「な?!ウグゥッ?!」
………え?
今、小太郎の拳が三つに増えてたぞ?
あれぇ?!
「なあ、どこであんなの覚えた?」
「深夜アニメで侍が刀でやってたのを見て練習したんや」
「…なんで『燕返し』なんだ?」
「小次郎と小太郎って、一文字違うだけやよね」
「一字違いが大違いだけどな」