魔法世界の混沌   作:逸環

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バトルの時はいつも、作者が頭脳パートです。


意図的な反射。

「負けないよ。タカミチ」

 

「僕だって負けないさ。全力でいかせてもらうよ、ネギ君」

 

 

僕の目の前には、ポケットに手を入れたタカミチ。

たぶん、あれがタカミチの戦闘スタイルなんだろう。

 

六禄さんに弟子入りしてからというもの、僕は魔法の修行をほとんどしていない。

あれから全ての修行を八極拳に集中してきた。

だけど、まだまだ未熟にもほどがある僕が、魔法の補助もなしにタカミチに勝つなんて、凄く難しいだろう。

だけど、僕はやるしかない。

 

 

「試合開始!」

 

「先手は譲るよ」

 

 

余裕そうにそう言うタカミチ。

いや、実際に余裕なんだろう。

なら、せっかく譲ってもらった先手だ。

 

 

「フッ!!」

 

 

こっそり覚えた瞬動を使い、一気に距離を詰める。

狙うはタカミチの顎。

そこにさえ当てられれば、タカミチだろうとも立ち上がることはできない!

 

 

「甘いよ、ネギ君。瞬動は直線にしか動けないからね。だから」

 

 

タカミチが脇に避けて、足を引っ掛ける。

それに躓いてしまった僕は、なんとか受身を取ることに成功しながらも転んでしまう。

 

…六禄さんとの組み手の最中だったら、頭を踏んづけられたんだろうなぁ。

 

そんなことが頭をよぎりつつも体勢を立て直してタカミチと向き合う。

 

 

「それじゃあネギ君。今度は僕の番だよ」

 

 

ゴッ!

 

 

「ッ?!」

 

 

タカミチの言葉と同時に、僕の額に衝撃が走る。

僕の目には、何も見えなかった。

 

…凄い。

 

 

「凄い!凄いやタカミチ!」

 

「あ、あはは。煽ててもなにもでn「六禄さんほどではないけど」右手に魔力、左手に気。『咸卦法』!」

 

 

上げて落としたからって、本気を出すタカミチは大人気ないと思う。

 

 

「いくよネギ君。これが僕の本気だ」

 

 

気と魔力が混ざったものを身に纏い、なおかつ明らかに雰囲気が変わったタカミチ。

これは僕も、結構な取って置きを使うしかない。

 

 

「『豪殺居合い拳』!」

 

 

タカミチの腕から放たれる、さっきとは比べ物にならない威力の一撃。

もちろん、それは僕には見えない。

 

だけど、

 

 

スッ

 

 

「えっ?!」

 

 

反射的に(・・・・)身体が動き、回避できた。

ふう、危なかった。

 

 

 

 

 

~Side真名~

 

 

…いやいやいやいや。

ちょっと待ってくれよ、父さん。

 

 

「…何でネギが、あれを避けられるんだい?」

 

 

もったいないからと、先ほど効果が切れた年齢詐称薬を自分の試合直前まで飲まないと決め、今は観客席で私の隣に座っている父さんに訊く。

 

 

「ん?そんなもん、俺が避け方を教えたからに決まってるだろうが。まあ、特別急造にだがな」

 

「…だろうね」

 

 

じゃなかったら、今のネギではあんなことはできない。

私ですら、今の一撃を避けるなんてことは無理だ。

 

しかし、

 

 

「いったい、どうやって避けているんだい?」

 

「反射的に」

 

 

いやいやいやいや。

 

 

「無理だろう。あの速さでは、反応することもできないと思うんだが」

 

「『意図的に反射』しているんだ」

 

「『意図的に反射』………?」

 

 

思いっきり矛盾した表現。

意味が分からない。

 

 

「ふむ、簡単に言うとだな。まず、相手は次にどこを攻撃してくるか、どんな方法で攻撃してくるかの見当をつける。後はひたすら相手の挙動に注意し続けるだけ」

 

 

………それって、要するに先読みじゃあ?

 

 

「先読みとの違いだが」

 

 

心が読まれた?!

あ、でも父さんが私のことを分かってくれて嬉しい。

 

 

「先読みは幾つもの可能性を検討した結果、正しいであろう一つの答えを導くこと。つまりは絶対の一だな。こっちは敵の次の動きが分かっているから、先に行動することができる。対して、意図的な反射の場合は、絶対の一ではなく、複数の可能性を同時に、その中でより本命であろう一手に特に注意しながら待つ。つまり、完全に受身な形になる。この場合必要となるのは、本命及びその他の可能性全てに対して『反射』できるようにそれ以外のことを視界に、思考に入れないほどの集中力だ。それさえできれば、二~三段くらい上の相手なら一撃を入れるくらいならギリギリギリギリギリギリ可能になる。避けるだけなら、もっと楽だな」

 

 

ギリの数が多すぎるだろう。

そして珍しく長めに話したな父さん。

 

 

「ネギは頭が良い分、余計なことも考えてしまう。だけどまだ修行を始めたばかりで未熟にもほどがあるあいつが、あれができるのとできないのとでは勝率が大きく変わってくる」

 

 

まあ、そうだろう。

今もネギはタカミチ先生の攻撃を避け続けている。

それも、着実に、確実に一歩づつ近づきながら。

 

…本当に天才なんだな。

 

 

「ああ、それと」

 

 

ニヤニヤと、実に、正に、真に面白そうに唇を弧の形にしながら、父さんが言う。

 

 

「俺が特別急造に教えたのはあれだけだが、あいつはあいつで自分を磨いていたらしい」

 

「え?」

 

「そら、見てみろ」

 

 

父さんが顎で指した瞬間、試合場で爆発的な魔力と気の奔流が起こる。

そして、蒸気や砂埃がおさまったそこには、

 

 

「…まさか」

 

「ククッ、おもしれーなぁ。若いってやっぱ良いわ」

 

「『咸卦法』だと?!」

 

 

試合場で、ネギが魔力と気が混ざり合ったものを纏っていた。

 

 

 

 

 




今回登場した意図的な反射ですが、実際に私が剣道で使っていたりします。
まあ、感覚9割で使用しているものを文章に起こすのは、ひどく難儀しましたが。
ちなみにですが、これを使うと相手の攻撃が見えてなくても当たる瞬間にギリギリで反射できるので、割と真面目に重宝してます。
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