…なるほど。
考えたな、刹那め。
男の子としてはプロレスでこられたからにはプロレスで応じたいところ。
というか、どうしてもスイッチが入ってしまう。
まあ、それはいいんだ。
プロレス好きだし。
問題は、プロレスの絶対の掟。
「これでいこう」
そう言って刹那が、手を拳銃の形にする。
「いいよ、やろう」
丁寧で、綺麗で、真剣な、プロレスを。
「ダッシャァァッッ!!」
刹那が吼える。
完全に八極拳士の発声ではなく、プロレスラーのそれだ。
お父さん、さすがに複雑です。
「セアァッ!」
刹那の声に応じて、俺が吼える。
それを合図に、
ほんの数秒の組み合い。
今のままでは仕掛けようがないと判断し、一旦離れる。
その瞬間、
「ダッシャァァッッ!!」
「~~~~ッッ!!?」
脳天に走る衝撃。
まるで、脳内で火花が散ったかのよう。
かのアントニオ猪木の本物の武器は、『卍固め』に代表される大技ではなくその鉄拳にあると評する専門家は多い。
刹那がやったことは、まさにそれ。
『ナックルパンチ』。
プロレスにおいて、暗黙のうちに認められた反則であるこれを、刹那は使ったのだ。
「良い度胸だ」
ギロリ、と刹那を睨む。
今の一撃は手痛かったが、ダメージは残っていない。
怯んだ隙に追撃できなかったのは痛かったな。
足に力を入れて踏み込み、刹那の後ろに回る。
そして、その腰に手を回し、
「アァァッッ!!」
「ッ?!」
「【ここで大技、『ジャーマンスープレックス』だぁぁっっ!!】」
刹那の頭を、石舞台に叩きつける。
リングではないここでそれをやるのは非常に危険だが、ある程度抑えてやっているから大丈夫だ。
「くっ!」
フラフラと、頭から血を流しながら立ち上がろうとする刹那。
その後ろから、再び仕掛ける。
「シャァァッッ!!」
「グッ?!」
『延髄斬り』。
運動中枢であり、人体の急所である延髄をジャンプして蹴る技だが、今回は刹那が立ち上がる途中ということもあり、延髄の位置が低いので、ジャンプせずにできた。
「「「「「「「「ワアアアアアァァァァアァァアァァッッッ!!!!」」」」」」」」ドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッ!!!!!!!
観客の歓声と足踏みの音が、よく聞こえる。
あえて言わせてもらうが、ここは東京ドームでも後楽園でもない。
麻帆良だ。
「さて、続きt「ハアァァァァッッッ!!!」ヌァッ?!」
一瞬刹那から外れた意識。
その隙をつかれて身体を掴まれ、無理やり屈まされる。
そして、視界が反転。
「ガッ?!」
『パイルドライバー』。
相手に正対して立ち、前に屈ませた相手の頭部を両方の太ももではさみこみ、相手の胴を抱え込むようにクラッチして持ち上げ、そのまま脳天から垂直にマットに叩き付ける技。
今のは、間違いなくそれだった。
いや、そんなことは、どうでもいい。
今は早く、立ち上がらないと。
………刹那はどこn『スドッ!!』なぁっ?!
「【ここで『スピアー』だぁぁっ!これは効いたぞ!】」
突然わき腹に起きた衝撃。
今のはどうやら、刹那が突進してきたらしい。
俺がもたついている間に、助走するだけの時間を与えてしまったようだ。
再び、立ち上がる。
刹那は、俺の前にいた。
五体に溢れんばかりの電流を迸らせながら。
その構えはプロレスのもので、まだプロレスは続いているという意思表示をしながらも、その動作は明らかに八極拳のそれ。
これはマズイ。
避けないといけない。
だが、避けてはいけない。
なぜなら、
「『絶招・
プロレスラーは、絶対に技を逃げてはいけない。
敵の攻撃は全て受けてみせる。
たとえそれがどんな危険な技でも、受けきってみせる。
プロレス道とは!
理想のプロレスとは、プロレスラーの王道とは、肉体を…否、骨を断たせて肉を斬る……!!
それがプロレスだからだ。
出ました刹那の絶招。
詳細な説明は次回するとして、六徳の説明で大体分かると思います。
最後のプロレスラーの王道については、『グラップラー刃牙(外伝)』から引用しました。
アントニオ猪木とジャイアント馬場。
本当に闘ったら、どっちが勝ったんでしょうねぇ…?