刀子先生が使っていた、京都神鳴流の奥義『雷鳴剣』。
気を電気に変えて、剣先に帯電させて斬るという技術。
うちはそれを見て、あることを思い出した。
それは、修学旅行の最終日に真名から聞いた、父様の幼馴染さんの話。
真名が言うには、彼女は人造人間であり、体内の電気を増幅することで機動力を上げることができたらしい。
それを応用して、新しい技を作れないか。
まずは、気を電気に変えるところから始まった。
夜警の際に刀子先生と一緒になるたびに、頼み込んでその方法を教わり、修行を見てもらった。
そのかいもあって、割と早く気を電気にすることはできるようになった。
だが、問題はこの先にあった。
作り出した電気を、自分の身体に取り込むことができなかった。
体内で生成した電気は、気から変換した瞬間にうちの身を焦がした。
その時は父様たちに知られたくなくて、治癒魔法を何人もの先生に使ってもらい、家族には隠し通せた。
そうして煮詰まっていたある日。
小太君が読んでいたジャンプのとあるマンガの敵キャラが、主人公の使った技を吸収して、自分が使っているのを見た。
これや!
と思った。
その夜、さっそく刀子先生に見てもらいながら、掌の上で電気を作る。
ここまでは上手くいった。
だが、そのままではただ『でんきショック』を出しているだけ。
掌で迸る電流を、安定した形になるように意識をこめる。
しばらくして、球形になって安定したそれを握り締める。
外界の気を取り込む小周天は、四歳のときから父様に教わり続けてきた。
だから、大丈夫。
そして、掌にあったものがなくなった時、うちは自分が求めていたものを会得した。
「『絶招・六徳崩拳』!!」
うちの最高速度の拳が、父様の胸の中央に突き刺さる。
これで倒れないはずは…、ない!
そう、確信していた。
「…つ~かまえた~」
確信していたのに。
うちの手首を掴むことによって、吹き飛ばされることを回避した父様が、ギニィッ、と笑う。
「ッ?!」
その瞬間、うちの膝から力が抜ける。
いったい、父様は何をしたんやろうか。
「合気だよ。随分昔、喧嘩に勝つために覚えたんだ」
即座に後ろに回りこんだ父様が、他の人には聞こえないように耳元で教えてくれる。
そして、
「これでフィニッシュだ」
あっという間に、スタンディングでホールドされる。
しかも、これは………ッ!
「【『卍固め』ぇぇぇぇっっっ!!ミナ選手、ここで決めにいったぁぁぁっ!!!】」
あの、アントニオ猪木の代表的なフィニッシュホールド。
これを喰らったら最後。
脱出不能な必殺技。
「~~~~~ッッ!!!!」
どうにかして
そして、痛みの臨界点が来てしまったとき、うちの視界は暗転してもうた。
~Noside~
激闘の勝者は、リングの上で高らかに勝鬨を上げる。
「1!2!3!」
「「「「「「「「ダアアァァァァァアアァァァァアアァァァァッッッ!!!!」」」」」」」」
会場の全てを、魅了して。
~Side刹那~
「んっ、んん…」
目を覚ますと、真っ白な天井が視界に映る。
頭の下には、少し硬い感触。
「お、目を覚ましたんやな」
「っ?!」
急に、視界いっぱいに入ってくる小太君の顔に驚く。
え?
て、いうことは何?
これってつまり………、
「………膝枕?」
「…そうや。か、勘違いしちゃあかんで!?父ちゃんが、膝枕したら刹那姉ちゃんが喜ぶからやってやれって言ったから、しかたなくやな!?」
うちの弟はツンデレやった。
萌え禿げてしまいそうです。
「ふふ」
「やめて、そういう余裕そうな笑い。俺今、結構恥ずかしいんやから。いつも通りの、変態な刹那姉ちゃんになって」
「やーや」
それをしたら、小太君が膝枕をやめる理由ができてまうやろ?
「刹那姉ちゃん、あんなことできたんやな」
「こっそり覚えたんや。…父様には通用しなかったけど」
「むしろ、父ちゃんの場合それが普通やからなぁ」
あの人の場合、大体の攻撃が通用せえへんしね。
でも、
「………悔しいわぁ」
「…………………」
全力で立ち向かい、明らかに余力を残して負けた。
もてる策を全部使い、秘蔵の拳を使ってなお。
「本当に、悔しいわぁ…」
閉じた目から、涙が零れ落ちる。
「…俺も一緒に強くなる。せやから、今度は
「………うん」
次は絶対に勝ってみせる。
でも、今だけは、もうちょっとだけ甘えさせて。
「…なあ、小太君。チューしてくれる?」
「…ほっぺなら、ええで」
「ん」
頷いたうちの顔に、徐々に近づく小太君の顔。
その顔は、緊張を隠せていない。
そして、うちの頬にその唇がつく瞬間、
「んっ」
「っ!!?」
顔の向きを変えたうちの唇と、小太君の唇が重なった。
主人公で甘い話が書けないなら、他のキャラでやれば良い。
小太郎はツンデレでした。
そしてなぜかだいたい受けになる。