小説を書いているうちに、ブラインドタッチがいつの間にかできるようになっていたことを。
なんでだ!
なんで当たっているのに、ダメージがない!
「ふふふ。そんな拳では、私には効きませんよ」
違う!
これはそんな感触じゃない!
父さんという、攻撃が効かない存在が身近にいるから分かる。
父さんみたいな、当たっているのに効かない感触ではなく、当たっていないから効いていない。
そんな
だが、そんなことは、どうでもいい。
そんな疑問を解消する手立ては、今は私の手の内にはない。
だったら、今目の前にいるこいつを、全力で殴るだけ。
もし、今ここにいる奴が幻覚や分身だとしても、もしかしたらダメージの一部はフィードバックするかもしれない。
だから、ひたすらに殴る。
「ハアァァァァアァァアアァアァァァァッッッ!!!」
「貴方も分からない人ですね」
フードが何かを言うが、それこそそんなことは、どうでもいい。
とにかく、全力で殴り続けるだけだ。
「小太郎。お前の技を借りるぞ」
「はい?」
腰を捻り、溜めを作る。
そして、
「『燕返し』!!」
三つの拳撃が、同時に相手に襲い掛かった。
~Side主人公~
「あ、あれは小太郎君の技じゃないですか?!」
「ん~、まあ、それがあいつの得意技だからなぁ」
選手控え室で、シャークティーちゃんとテレビで観戦しているんだが、今の真名の一撃を見たシャークティーちゃんが驚いている。
ちなみに、ネギは観客席だ。
「あいつは魔族とのハーフで、目が常人よりも遥かに良い。必然的に『見た技を覚えること』が得意なんだよ」
「…それは、凄いですね」
左目の魔眼を使えば、もっと再現度は高いがな。
まあ、
「それが長所でもあり、短所でもあるんだよなぁ」
「え?」
「『見て』、『覚える』。つまりは、見て覚えたままの動きになるということだ。自分の身体に合った動きができているわけじゃないから、どうしても無理は出る」
現に、今の『燕返し』は三撃の中の一発は、あってないようなものだった。
おそらくだが、さっきの試合で刹那の『六徳崩拳』も覚えたんだろうが、出力は比較にならないだろう。
修行という過程を経て自分の物にした技と、他人の借り物の技では雲泥の差があって当然だな。
「あれは技を修める切欠としてはいい。だが、実践でどこまで通用するか、一流や超一流に通用するかとなると、な」
「なるほど。道理ですね」
画面内の真名は、今だに実体がない相手に攻撃を続けている。
何時の間にやら、その身体に電気を纏っているが、予想通りその出力は刹那の物よりも低い。
「あいつの最大の弱点は、自分の絶招を持っていないこと」
それは、ありとあらゆる技を使えるせいで、自分の一撃に自信を持てないということの
まったく。
「ちょっと行って来る」
「いってらっしゃい」
腰を上げて歩き出すと同時に、身体が煙に包まれる。
どうやら、薬の効果が切れて元の姿に戻ったらしい。
まったく、良いタイミングだな。
~Side真名~
クソ!クソ!!クソォッ!!
なんでだ!
なんで一撃もダメージに繋がらない!
『燕返し』も、『六徳崩拳』も何もかも!
「だから言ったでしょう。私には効かないと」
知ったことか!
私は、負けちゃいけないんだ!
父さんの顔に、泥を塗るわけにh「真名!」
「え?」
声の聞こえた方を向くと、そこには観客席でいつも通りの余裕そうな笑みを浮かべた、私の大好きな父さんがいた。
「余計なことは考えんな!お前が今までやってきたことを思い出せ!!」
その声が、その姿が、
「分かったらとっとと拳固めてぶん殴りやがれ!!」
「ああ!」
私に力をくれるんだ…っ!
「いくぞ」
「ふむ、いいでしょう。来なさい」
来る日も来る日も繰り返した、崩拳5000回。
初めて父さんから拳の握り方を教えてもらったあの日から、ずっと繰り返してきた。
父さんが放つそれを見て、どうやったらより早く、より強く打てるかを見てきた。
それをどうしたら、完全に自分の物にできるのかを考え、拳を振り続けてもう十年。
父さんの背中に追いつけるように駆け抜けた十年。
「アアァァァァアアァァァアアアアアァァァアァァァッッッ!!!!!」
「ッ?!これはっ?!」
その十年の全てを、この拳に。
「『絶招・崩拳』っっ!!!」
「なっ?!」
フードの腹部に突き刺さる、この感触。
それは、とても確かなもの。
だが、
「…代償は、大きかったな」
強烈な信号を発する私の右腕。
それは、今までに出したことがないほどの力を使ったためか、血管が破れて酷い内出血をしていた。
「だけど、悪くはない」
そうだ。
父さんは今、どんな顔をしているのだろうか。
父さんのほうを向き、その表情を見る。
「真名!後ろだ!!」
「非常に惜しかったですが、私の勝ちですよ」
その顔は、慌てていて、焦っていて、そして心配していた。
そして私の意識は、後ろから声が聞こえてきた瞬間に、何かに押し潰されて消えてしまった。
…ああ、初めてあの背中に触れたと思ったんだけどなぁ。
~Side主人公~
俺の視界に移るのは、重力魔法に押し潰されて倒れる真名。
その身体を助け起こして連れて行きたいが、この後に試合がある俺ではそれができない。
だから、拳を握る。
固く、固く、血が出るまで。
「水無月神父…。そろそろお時間が」
「ああ、そうだな」
さて、まずは頭を切り替えよう。
次はネギとの試合だ。
「続いては、ここまで勝ちあがった少年少女の戦いです!それでは、試合開始!!」
ブン屋ちゃんの掛け声で、試合が始まる。
俺の目の前にいるのは、これまでの戦いでボロボロのネギ。
「いきます!」
気合を入れて、踏み込むネギ。
だが、お前にはこんな高みがあることも知ってもらおう。
「我が八極に二の打ち要らず」
「…え?」
これは、とことんまで武に携わったものだけができること。
「『无二打』」
いつかお前も、ここまで上って来い。
~Noside~
「さあさあ!並み居る強豪たちが戦いあった麻帆良武道会もいよいよ最後の一試合となりました!」
司会の朝倉が口上を述べると、会場のボルテージがどこまでも上がっていく。
「それでは最後の試合、まずはフードに隠れた実力者!『クウネル・サンダース』選手です!!」
「ふふ」
選手が入場すると、またしても観客の熱が上がっていく。
「続いては、幼いながらもここまで勝ち上がりました!『五月七日 ミナ』選手です!!」
名前が呼ばれると再びボルテージが上がっていく。
しかし、それもすぐに収まった。
なぜなら、
「…ミナ選手ー?」
肝心の選手が、この場に来ないからだ。
会場全体が、別の理由で沸き出したとき、クウネルがそれをいぶかしんだ時、
ジッ!ジジッ!ザザザーーーーッッ!!
それは起きた。
「おおーっと?!会場のスクリーンに、何かが映りました!?」
急に別の場所を映し始めたスクリーン。
そこには、
~Side主人公~
目の前にあるのは、何製かもいまいち判別しずらい扉。
そして超ちゃんと交渉し、これからここを撮影するために稼動しているロボットカメラ。
まずは目の前にある扉を、拳で吹き飛ばす。
扉の先には、透かした顔のクウネル…、いや、『アルビレオ・イマ』がいた。
とりあえず、これだけは言おう。
「さあ、殺しあいましょう。『クウネル・サンダース』さん」
久し振りに、最後の台詞を書きました。
ネギの扱いが悪い気もしますけど、あれはあれで必要なことですので。
次回は根城にカチコミしての決勝戦です。
英雄と英雄の戦いは、どうなるのでしょうか。