魔法世界の混沌   作:逸環

99 / 124
山場を迎える前に、片付けなければいけないことが一つ。


賭けの勝者と恋模様。

「父さん、次はアレをしたいんだが」

 

「ん?お、射的か。いいぞー」

 

まほら武道会も終わり、三日目の昼過ぎ。

祭りの中でも縁日的な出店が多い区画を、真名と二人で歩く。

 

どうせヤバくなるのは夜から。

それに教え子のことは、教師であるネギがカタをつけるべきこと。

俺がやるとしたら、地上でロボの相手ぐらいだろう。

 

 

「そういえば、昨晩は楽しかったか?」

 

「ああ、超のお別れ会か?なかなか楽しかったよ。…父さんがいないのが、不満だったけどね」

 

「そりゃあお前、俺が行く意味はないだろうよ。面識なんてほとんどないし」

 

 

菫の葬式で会ったくらいか?

俺は基本的に、店の方にも顔を出してなかったし。

第一、クラス単位でのお別れ会に、保護者が出張るのもどうだろうか。

 

 

「父さん。私が父さんに居て欲しかったんだ」

 

「会の趣旨を忘れて、私情に走りすぎだろう。それは」

 

 

お前のお別れ会ではなかったはずなんだが?

 

…と、あれは。

 

 

「真名、昼飯は家で食うから、先に帰っていろ」

 

「…なんでだい?」

 

「ちょっと話さなきゃならん奴がいた」

 

 

俺の視線の先には、人ごみの中真っ直ぐにこちらを見てくるテオドラが居た。

 

 

 

 

 

 

「ほれ」

 

「…ありがとうなのじゃ」

 

 

祭りの定番のラムネを買ってきてテオドラに渡す。

 

 

「ここは静かじゃな」

 

「あー、そうだなぁ」

 

 

テオドラと合流した後、場所を移して訪れたのは麻帆良神社。

その石段に腰掛け、祭りの騒ぎがちょっと遠くなった、ここの静寂が心地いい。

 

 

「そうじゃ、優勝おめでとうなのじゃ」

 

「ありがとうよ」

 

 

思い出したように言うのが、引っかからんでもないが。

そもそも、お前のせいで出る羽目になったんだろうが。

 

 

「まあ、賭は俺の勝ちだな。契約は守ってもらうぞ」

 

「…うむ」

 

 

その言葉の後、しばらく続く無言の時間。

 

 

「…なあ」

 

「んー?」

 

 

それを破ったのは、テオドラだった。

 

 

「何で、妾に着いて来てくれぬのじゃ?」

 

「一昨日言っただろう?」

 

 

あいつとの思い出が、ここにあるからだと。

 

 

「俺はもう、誰にも振り向くことはできない。いつまで経ってもあいつを背負ったまま、前を向くことしかできない。だから」

 

 

その先は続けず、しかし諦めろ。と、言外に言う。

テオドラは頭を垂れ、そのまま俯いてしまった。

 

 

「…だか…、…め………いけ…の…?」

 

「ん?」

 

 

数秒の後、テオドラが呟いた俺の耳でも拾いきれないような、それほどの小さな声。

いったい、なんて言ったんだ?

 

 

「だから!諦めなくてはいけないのか!?」

 

「ッ!」

 

 

その声に、気迫に、思わず怯んでしまう。

そんな俺に、なおもテオドラは続ける。

 

 

「妾はお前が好きなんじゃ!お前の隣に誰がいようが!妾がそこにいたいのじゃ!!」

 

 

胸が痛い。

苦しい。

それら全てを歯を食いしばり、耐える。

俺は全部、聴かなくてはいけない。

 

 

「妾の想いを!お主が勝手に終わらせるでない!!」

 

 

…ああ、そうだな。

確かにそうだ。

それは俺の想いではなく、お前の、いや、お前たちの(・・・・・)想いなんだ。

俺がジャンヌへの愛をジャンヌに誓ったように、お前たちが俺に誓う種類のもの。

だったら、俺がとやかく言うことはできないだろう。

 

 

「…じゃ、好きにするといいさ」

 

 

頭をグシグシと乱暴に撫で、立ち上がり、ヘラヘラとした笑顔を顔に貼り付けながら、帰路を歩く。

 

 

「六禄!妾は、お主のことを諦めんからな!妾はお主のことが!」

 

 

後ろからテオドラの声が聞こえてくるが、振り向かないで歩き続ける。

 

 

「………好きじゃから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ああ、知ってるよ。

 

 

 

 

 

 

 

ネギが一回り成長し、俺の人生最大の再会があったのは、この日の晩だった。

 

 

 

 

 




昨日まで学祭で動いていたので、更新するための時間が取れなかったため、遅くなりました。
まあ、終わったからといっても書く時間が増えるわけではないのですが。

というわけで、次回から本格的に山場を迎えます。
これからの展開を、お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。