「父さん、次はアレをしたいんだが」
「ん?お、射的か。いいぞー」
まほら武道会も終わり、三日目の昼過ぎ。
祭りの中でも縁日的な出店が多い区画を、真名と二人で歩く。
どうせヤバくなるのは夜から。
それに教え子のことは、教師であるネギがカタをつけるべきこと。
俺がやるとしたら、地上でロボの相手ぐらいだろう。
「そういえば、昨晩は楽しかったか?」
「ああ、超のお別れ会か?なかなか楽しかったよ。…父さんがいないのが、不満だったけどね」
「そりゃあお前、俺が行く意味はないだろうよ。面識なんてほとんどないし」
菫の葬式で会ったくらいか?
俺は基本的に、店の方にも顔を出してなかったし。
第一、クラス単位でのお別れ会に、保護者が出張るのもどうだろうか。
「父さん。私が父さんに居て欲しかったんだ」
「会の趣旨を忘れて、私情に走りすぎだろう。それは」
お前のお別れ会ではなかったはずなんだが?
…と、あれは。
「真名、昼飯は家で食うから、先に帰っていろ」
「…なんでだい?」
「ちょっと話さなきゃならん奴がいた」
俺の視線の先には、人ごみの中真っ直ぐにこちらを見てくるテオドラが居た。
「ほれ」
「…ありがとうなのじゃ」
祭りの定番のラムネを買ってきてテオドラに渡す。
「ここは静かじゃな」
「あー、そうだなぁ」
テオドラと合流した後、場所を移して訪れたのは麻帆良神社。
その石段に腰掛け、祭りの騒ぎがちょっと遠くなった、ここの静寂が心地いい。
「そうじゃ、優勝おめでとうなのじゃ」
「ありがとうよ」
思い出したように言うのが、引っかからんでもないが。
そもそも、お前のせいで出る羽目になったんだろうが。
「まあ、賭は俺の勝ちだな。契約は守ってもらうぞ」
「…うむ」
その言葉の後、しばらく続く無言の時間。
「…なあ」
「んー?」
それを破ったのは、テオドラだった。
「何で、妾に着いて来てくれぬのじゃ?」
「一昨日言っただろう?」
あいつとの思い出が、ここにあるからだと。
「俺はもう、誰にも振り向くことはできない。いつまで経ってもあいつを背負ったまま、前を向くことしかできない。だから」
その先は続けず、しかし諦めろ。と、言外に言う。
テオドラは頭を垂れ、そのまま俯いてしまった。
「…だか…、…め………いけ…の…?」
「ん?」
数秒の後、テオドラが呟いた俺の耳でも拾いきれないような、それほどの小さな声。
いったい、なんて言ったんだ?
「だから!諦めなくてはいけないのか!?」
「ッ!」
その声に、気迫に、思わず怯んでしまう。
そんな俺に、なおもテオドラは続ける。
「妾はお前が好きなんじゃ!お前の隣に誰がいようが!妾がそこにいたいのじゃ!!」
胸が痛い。
苦しい。
それら全てを歯を食いしばり、耐える。
俺は全部、聴かなくてはいけない。
「妾の想いを!お主が勝手に終わらせるでない!!」
…ああ、そうだな。
確かにそうだ。
それは俺の想いではなく、お前の、いや、
俺がジャンヌへの愛をジャンヌに誓ったように、お前たちが俺に誓う種類のもの。
だったら、俺がとやかく言うことはできないだろう。
「…じゃ、好きにするといいさ」
頭をグシグシと乱暴に撫で、立ち上がり、ヘラヘラとした笑顔を顔に貼り付けながら、帰路を歩く。
「六禄!妾は、お主のことを諦めんからな!妾はお主のことが!」
後ろからテオドラの声が聞こえてくるが、振り向かないで歩き続ける。
「………好きじゃから!!」
………ああ、知ってるよ。
ネギが一回り成長し、俺の人生最大の再会があったのは、この日の晩だった。
昨日まで学祭で動いていたので、更新するための時間が取れなかったため、遅くなりました。
まあ、終わったからといっても書く時間が増えるわけではないのですが。
というわけで、次回から本格的に山場を迎えます。
これからの展開を、お楽しみに!