全裸転生~気が付いたら、フル・フロンタルになっていた~ 作:アムル・ガイ
目が覚めたら、フル・フロンタルになっていた。
こんなことを言う奴がいたら、多分多くの方は統合失調か酸素欠乏症だとお思いになるだろう。
そうだったらどんなによかったか。夢か、幻か、あるいは妄想の類ならどんなに救われたろう。
しかし、厳然たる事実として目の前に自信がフル・フロンタルであるという事実が存在しているのである。
まずひとつ。金髪のイケメンフェイス。シャアっぽい、あのロンゲが鏡を見ればいつでもそこにある。
もうひとつは声だ。
「認めたくないものだな……」
試しに言ってみたが……すごく、池田秀一の声(略してイケボ)です……
フロンタルカッコイイヤッター!と能天気に思えればいいのだが、ことはそんな単純ではない。
私が眼を覚ましたのはサイド3にほど近い、とある研究用の小惑星基地だった。
眼が覚めた時の感想は「今日、学校あったっけ?」である。
日本の学生として今まで過ごしてきた『俺』にとって、まず大事なのは学校に行って出席がもらえるか。
単位がもらえるかであった。が、それと相反する記憶(と言うよりプログラム)が頭の中を駆け巡るのである。
曰く、自分はフル・フロンタルだ。ジオン再興を願う人々の器たれ。マスターには従うべし。
……マスターって誰だ?というか、なんだこれ。
その答えは驚くほど速くやってきた。目の前に現れた中年の男。
それがジオン共和国国防大臣、モナハン・バハロであり、自らのマスターなのだと……
「フル・フロンタルはネオジオン再統合を為す、シャアの再来として作られた器。
その役割を全うするのがお前の役割だ」
一方的。あまりに一方的なセリフに驚く。従おうとするフロンタルと、バカなことがあるか!と叫ぶ自分。
この喧嘩は非常に長いものがあった。実時間で言えば一週間くらい。
研究所での調整とか、訓練とかそういったものをこなしつつ、自分がフロンタルなのか、シャアなのか。
それともただのガノタである『俺』なのか、という自問自答を繰り返した。
その答えが今の俺である。
『自分はシャアでもフロンタルでもない。が、目の前の出来事は夢ではない、現実だ』
……その頃になると、この超常現象にもある程度の慣れを持っていた。
あまりに可笑しすぎると、一周回って冷静になるのが人間らしい。
さて、それではどうだというのだろう……?
と、冷静に考えた結果、「あれ、もしかして自分、絶対絶命の状況なのではないか……?」
という結論が出てきた。
もしモナハン・バハロの言う通り、シャアの器として振る舞い、原作通りに進んだとしよう。
「ミネバに罵倒されて、二機のガンダムに楯突かれて、闇黒に突っ返されるな」
……ヤバい。これだけは避けなくては。
アニメ版展開であることも考えられるが、どっちみち自分はシャアじゃないので救いも得られない。
あの謎空間に行っても「もう、いいのか…って誰だお前!?」となるのは自明の理である。
これは、あれだ。やるべきことはひとつしかない。
どこかで逃げよう。取り返しのつかないことに為る前に、フル・フロンタルを廃業しよう。
気を見計らって、地球でも木星でも良いが、高跳びしよう。うん、それしかない。
生憎、自分はシャアじゃないのだ。ラプラスの箱だって大したことないものだし、一人くらい
キャストが欠けていたところで、そこまで大きな問題にはならない……はず。
むしろ、バナージとミネバを邪魔する障害がリディ少尉くらいになって好都合なくらいだ。
よし、そうしよう!今後の方針はそれしかない!
……なんて、意気込んではいるが。この時の自分は気が付いていなかった。
いらない、もたない、夢は……まぁ、見るかもしれないが。
ともかく、色々なものを投げ出して自由な状態になろうとしたところで、しかし
運命というものは登場人物を放っておくことは無いのだ、ということを……。
プレリュードとか言いながらクイズ出さなくてすみません……
許してください、なんでもしますから!