全裸転生~気が付いたら、フル・フロンタルになっていた~   作:アムル・ガイ

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第2話 やっぱりガンダム世界のシステムってガバガバだわ

量産型キュベレイ。キュベレイMkⅡの火力を強化、ファンネルの搭載数や、二連ビームキャノンといった数々の追加装備を持ったMS……

量産型の方が強い、という非常に珍しいMSであると言えるだろう。

相変わらずガンダム世界はトチ狂ってると思う。

さて、それに対する俺の乗機は赤く塗装されたこのザクⅢだ。正確に言えばザクⅢ改に近いかもしれない。

頭部ビームキャノンがオミットされ、背中には追加のプロペラントタンクが搭載されている。

複数のタイプが存在するザクⅢだが、この機体はバックパックを丸丸交換できる仕様になっている。

このバックパックは、アタッチメントが増設され、そこにバズーカをマウントしていた。

この二機、基礎性能ではほぼ互角。キュベレイは推力でザクⅢに勝り、ザクⅢは出力で勝っている。

が、キュベレイの真価はそのようなものでは測れない。

ご存知、オールレンジ兵器、ファンネルの存在こそが最大の脅威なのだ。

30機のファンネルたちが全て自機に向かって向けられたら……?回避する術もなく、細切れにされるに相違ない。

「すべてが向けられるなら、な……!」

ファンネルによるオールレンジ攻撃は非常に複雑な攻撃だ。

一歩間違えれば味方機に、下手をすれば自機にすら当たりかねない。すなわち……

「こう近づけばっ!」

「ッ!?」

シュミレーションの開始と同時に、ザクⅢをキュベレイに向けて突撃させる。

相手は意を測り兼ねたのか、クロスレンジには入らせないよう、機動させる。

四方からの攻撃……は出来るかもしれない。すでにファンネルは展開されている。

が、30機全てを攻撃に廻せるか……?というとそれは出来ないのである。それは相討ち覚悟の攻撃になるからだ。ザクⅢのバズーカを発射する。拡散弾。対ファンネルに有効な装備だが、銃口が下に向けられた状況で発射する。ザクⅢの下方から狙撃しようというファンネルが数基破壊された。

さらにその反動で、ザクⅢは思わぬ向きへと機動をかえる。すかさず、ライフルを斉射。

直撃はしないまでも、バインダーに掠めたようだった。

 

 

 

その後も戦況はこちらに優位に進んだ。すでに破壊したファンネルの数は恐らく10は行っているだろう。

「このままいけば勝てるか…?」

俺でもニュータイプみたいな戦いができるじゃないか、と満悦する。

満悦のあまり、ついそんなことを呟いてしまった。これがいけなかった。

「なっ」

プル・エイトは戦法を変えてきたらしい。ファンネルを時期の周囲に展開し、一斉射の構えを取った。

……やばいぞ。

30基のファンネルが、一斉にオールレンジ攻撃は出来ないだろう、というのが俺の読みであった。

だからこそ、距離を付かず離れずに保つことでファンネルをじりじりをと減らす戦法が通用したのだ。

「これだけ続ければ流石に相手も気づくか……!」

相手はファンネルをオールレンジ攻撃ではなく、一方向からの弾幕に切り替えようとしている。

散弾……では遅い。展開するのに時間がかかる。

 

そこで、ひとつの思考が頭に上る。もしや……というものである。

いや、流石にないか?でももしかしたら。あってくれたらいいなーというちょっとしたインスピレーション。

シュミレーションでは殺意は感じられないので、これはニュータイプとか強化人間とかそういうのは関係ないちょっとしたアイディアだ。

「負けても、死にはしない……か」

だから、ここはひとつ。賭けてみるのもいいかもしれない……!

「ままよっ!」

取った戦法は、動かないことだ。一方向に向けた一斉射、すなわちそれは、避ける方への予測射撃となる。

読みが正しければ、逆に動かないことこそが回避となる。悠然と、ライフルを前に構えた。

バズーカを腰だめに展開する。果たして、ビームとビーム、そして散弾が二機の間を交錯し……

「ええい、避けられたか!」

読み通りであった。攻撃はこちらの方向には向かっていない。

避けるだろう、という予想のもとで放たれたビームであった。

ニュータイプ能力も、未来を完全に予知するわけではない、ということだ。

が、こちらもその裏をかいたライフルとバズーカの一斉射撃をすんでのところで読み取られてしまった。

ビームは腰だめに掠るのみ。散弾も致命傷には至らなかったらしい。

「やるな、プル!」

白熱する戦いに、つい物まねにも気合が入るというものである。

 

緊急離脱する。このレンジでの戦法は見破られた。次は確実に避けられない攻撃となるだろう。

バックパックのスラスターを全開に吹かす。追尾するファンネルを、紙一重で振り切る。

「これは、これで……スリルがあるなっ」

設定されていたデブリまで後退する。小惑星の裏側に隠れこみ、相手のファンネルが攻撃できない位置を作る。

「バズーカの弾数……どうせ尽きるのだ、くれてやるッ!」

バズーカに自動射撃の設定を掛けて放出した。暴れるままに、残弾を吐き出す。そこにファンネルが食いついた。

が、そこをこそ狙うのがこちらの目的だ。

バズーカをジグザグに打ちまくるファンネルを、ビームライフルで破壊する。

撃ち落とせたのは二機。残りはこちらに向かって、今度こそ獲物をしとめんとビームを放った。

「こんな小さいのが落とせるわけがないという……!」

二機のビームも、掠めるだけで終わる。そうなるようにランダム回避を行ったからだ。

脚のスラスターがやられた。アンバックはまだできるが、機動力が若干低下する。

後続のファンネルが再びこちら食いついてくる。今度は六機。アウトレンジからの攻撃は厄介である。

「ならば、ランドセルもくれてやろう」

ランドセルをパージし、再び回避。すんでのところ、すんでのところばかりだ。

実戦ならなんどか死んでてもおかしくないだろう。

脚部裏のバーニアスラスターを全開。小惑星ごしに、先ほどのファンネルから離脱する。

慌てて本体に食らいつこうとするが、おそいっ!

ビームサーベルを引き抜き、ファンネルの予想ルートに投げつける。そこに数発のライフルを叩き込んだ。

「ビームコンフューズ、といったところか!」

サーベルに残ったメガ粒子が暴走し、ビームライフルの射撃を反射させ、四方八方にビームをまき散らす。

カミーユが使ったアレである。

 

果たして、破壊したファンネルは半数。ランドセルとバズーカ、サーベル一本を持っていかれたが、未だビームライフルとサーベル一本は残っている。近距離レンジの戦闘にすべてを掛ければ、チャンスはあるはず……!

 

 

そんな淡い期待を抱いた。

 

 

……冷静に考えれば舞い上がっていたのである。初めての生身を持った敵。それとの戦いが、有利に進んでいた。そこに、ちょっとした欲目を持っていた。

だが、それは間違いだ。後から考えれば、ファンネルの戦い方は、意思を四方八方からまき散らす戦いだ。

だからこそそれを感知できないオールドタイプにとっては脅威であるし、それを感知できるニュータイプにとっては対処できる真っ当な戦いとなる。

しかしシュミレーションは、所詮はデータ上の戦いでしかない。如何にサイコミュに対応していても、偽物の偽物である『今のフル・フロンタル』にはそれを感知するセンスは無かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プル・エイトは目の前の存在に大きな動揺を示していた。思ったよりも脅威的な存在だ……と。

 

 

フル・フロンタル。この研究所の最新作、シャアの再来。詳しいことは知らない。特に興味もなかった。

自分は『あの日』、死んだ存在だ。正確に言えば、壊れた道具だ。

『あの日』……つまり、多くの姉妹たちが、一度に死んだあの戦いの日。

この五年間、ずっと思ってきたことがある。「自分はなぜ生きているのだろう?」と。

なぜ、生き延びてしまったのだろうか……と。戦いに出れば、まだ救いはあった。

『まだ自分は、動く』と思えただろう。だが第一次ネオジオン戦争終結後、密かに回収されたプル・エイトを待っていたのは、雌伏という名の無為の日々だった。

 

恐らく、ジオニズムでもなんでも、熱を持った意志が彼女にあればそうはならなかっただろう。

ジオンの再興、宇宙移民者の自治独立!じゃなければ、姉妹たちの復讐を!

……が、結局彼女にそんな熱は持ちえなかったというだけの話であった。

 

あるいは依存するマスターがいれば、また違ったのかもしれない。彼女がマスターと仰いでいた『グレミー・トト』という男への忠誠と依存があればこそ、彼女は道具としての意義を持てたのだから。グレミーは死んだが、強化人間の刷り込みの再調整はこれだけの時間があれば可能なことであったろう。

しかし、ニュータイプ研究所はそんなことをしなかった。むしろマスターを失ったケースの強化人間として、緩やかに観察を繰り返していた節すらあった。

もしかしたら、起伏の少ない、比較的安定した強化人間として彼女の存在が後々の同属たちの開発の際に影響した可能性もあるかもしれない。だが、そこにも彼女は自分の意義など見出すことが出来なかったのである。

 

いっそ、死んでしまえば……と、考えなかったこともないではない。外に出られず、しかし誰にも見られない籠の中の鳥は想像を絶する苦痛だからだ。だが、そんな時だけ、人間としての本能が死を拒むのである。

「行きたい、まだ生きていたい」と。

 

結局彼女は、死ぬことも出来ず、かと言って活きることも出来ずに今日まで生きてきた。あちこちを転々とする生活は、無感動なりに飽きもしなかったので、なんとか生きていれる。ただ、今日のカロリーと惰眠のみが、彼女の人生の意義だったのである。

 

 

それが、一応、興味を持ったのは昨日のことであった。正確に言えば嫌悪であるが。

ニュータイプ的な感性で感じ取った、ある強烈な思惟。

人の思惟を受信するというのは、気持ちの悪いことだとエイトは感じている。

心とは自分の家のようなものだ。そこに、ズカズカと無遠慮に入られるのは気持ちのいいものでは無い。

 

そこに来てあのフル・フロンタルの思惟は土足で人の心に踏み入る、なんて生易しいものでは無かった。

細かいことは分からないが……こう、ロリがどうとか。幼い子も好きだとか。

何といえばいいのか、彼女にも形容出来ないのだが……。

恐らくもっとも適当な表現は「人の家に全裸で入り込んで、理解できない性癖を暴露しつつオナニーされた」感覚と言うのが適当だろうか。

 

一言で言えば、「気持ち悪い」である。それしかない。

 

プルの嫌悪感、その強い思いがファンネルを鋭い機動で動かした。

こんな変態にだけは負けられない。負けたら、なんか取り返しがつかなくなる気がする。

その思いだけが、プル・エイトの最後のプライドであった。

 

そしてそのプライドが、彼女を暴走させた。

 

 

 

 

 

 

《Falled》という文字が目の前一杯に表示される。あの後はすごかった。残ったファンネル全機が、さながら蛇のようにうねって襲ってきた。キュベレイ(ゴルゴンの魔眼)の名は伊達ではないということか。敵の動きを読み取れなかった私の敗北であった。

 

……まぁ、シャア大佐もCDAでは「シュミレーターでは敵の殺気が読み取れない」って言ってたし。シャア大佐でも出来なかったなら、偽物の偽物にはなおさら無理だろう。つまりしょうがない。

 

「しかし、やっぱり無謀だったか」

 

この調子でユニコーンガンダムと本当に戦って勝てるのだろうか……?いや、勝てなくても良いが、生き残れるんだろうか。下手すると初戦で負けるんじゃ……

 

「精進だな。それにまだシナンジュ手に入ってないし」

 

あるいは本格的に袖付きの動きが活発化する前に逃げた方がいいかもしれない。溜息をつきながら、シュミレーターマシンから出と、周囲がにわかに騒がしい。

 

「何があったんだ……?」

 

どうも、連結した隣のマシン……つまり、プル・エイトのいるブースの方だ。

ドクターをはじめ、数人の研究員たちが周囲を取り囲んでいる。

 

「何があった?」

「ああ、フロンタル……!大変、エイトのサイコミュ受信システムが暴走していたみたいで……!」

「……何?」

 

……恐らく私は若き彗星の肖像あたりなら大コマでびっくりしてる大佐みたいな顔をしているだろう。

 

 

 






言い訳をします!
某なろうでオリジナルにかまけてました!
んで「そういやこっちはどーだろーな。まぁ、2話しか投稿してないし……」と思ってみたら色々お気に入りとかしてくれてる人がいることに気が付いて……
みんなガンダム好きだな!俺も好きだ!というわけで再開します。

やっぱり時間はかかるかもだけど、エタだけはしません。
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