6月14日 日曜
先週、静乃が『なんなら勉強会でもする?』と刹那に話していたので、実際にすることとなったのだ。俺はてっきりあいつらだけでやるつもりだと思っていたのだが、怜が転校してきたこともあって、怜の家でやろうという話になったのだ。そこで、隣の家に住んでいる俺にもお呼びがかかったのだ。あ、ついでに言えば有希と柄谷もいる。理由は・・・有希が静乃から勉強を教わりたいからであろうな・・・あと、有希だけだとあれだから柄谷を呼んだんだろうな・・・。
あと、竜崎は『怜がいるなら私はいらないだろう?』などと、俺をサポートする身であることを全く感じさせないことをほざいていた。
怜と柄谷は初対面である。柄谷は人見知りをするほうなので、正直よくここにもこれたなと感心するほどであるが、有希がいたおかげか、彼女が間に立って話を進めていたので比較的早くに仲良くなることができた。
そうして今現在怜の部屋で皆かれこれ2時間ペンを走らせている。・・・・・・にしてもすごい集中力だな。殆ど休憩してないのに・・・。まあ俺や静乃は成績上位だからわかるっちゃわかるけど、有希や柄谷は中の下なのによくもまあ続くものだな。柄谷は分からないけど、有希はあんまり続かないはずで、いつもなら30分で休憩が始まるんだが、やっぱり環境が違うからかな。ちなみに、怜はというと、正直やばい。いろんな意味でやばい。さすが神のエージェントとか言うだけあるわ。この学校ならきっと順位は一桁に入るんじゃないのか?ただそれは、数学、化学、英語においてであり、文系分野の出来は・・・
ちなみに、こんな女だらけの空間に男が俺一人であったら、集中なんてできないだろうけど、なぜか今はそんなことはない。その理由はおそらく怜の家が女の子女の子してなくて、シックな感じであるからだ。こういうのを御洒落っていうんだろうな。人数が人数なので、リビングで勉強しているわけだけど・・・怜の部屋はどんな感じなんだろうか。やっぱリビングと同じようにシックなのかな?勉強終わったら拝見させてもらえないかなぁ・・・・・・俺から『部屋見せて!』って言うのは図々しいし、男があそんなこと言うのは問題があるし・・・
「先輩、この二次関数の問題なんですけど・・・」
いや、怜だからなぁ・・・そんな気遣いはいらないかなぁ。いやでも、他のメンツがいるから結構問題だよな。特に有希。あいつが騒ぎそうだな。『女子の部屋にお邪魔したいだなんて――――――――ハッ・・・!さては兄さん、下着漁り!?しかも堂々とこんなこと言うなんて・・・兄さんは貶されたいの?罵倒されたいの?蹴られたいの?なら私が蹴ってあげる!』って言いかねないよなぁ・・・・・・
「せんぱ~い、聞こえてるんですか~?」
あーみたい。とてもみたい。どうしてこんなにとてもみたい。あーみたい。怜に伝えたい。なんでこんなに見たいんだろう。一度気になると止まらなくなるみたいな?意識したら負けってやるか。
そんな、考え事をしてるとき、
「ひでぶっ!」
衝撃が、主に頭。
なんだ?なにが起こった?
とりあえず現状を確かめてみる。視界に広がっているのは天井。ようするに仰向けになっていたのだ。でもなんで、俺は、仰向けになっているんだ?頭に・・・・・・てか顔がひりひりしてるってことは、何か投げつけられたか、殴られたり蹴られたりしたかだな。でも、近くに投げられるようなものはないし、そもそも物を投げられただけで仰向けにはならないだろうし・・・てことは蹴られたのか。
「おいおい、何があった?だれか説明してくれ!」
起き上がって周りを見渡すと俺の周りには手に持っていたはずのシャープペンが転がっていて、右に静乃が立っていた。そして、全員に共通して気づいたことがある。それは、俺を見る目がやけにしたたかであったことだ。
「最低糞野郎ですね。」
「兄さん・・・・・・・ぶっww」
「私、あなたへの印象を変えなくちゃならないかもしれないわ。」
???
なんでののしられてるん?笑われてるん?
なんか俺、変なことしたか?いや、そんなことはないはずだ。俺はただ勉強していただけなのだから。
「なあ静乃、俺って何か悪いことしてないよな?な?」
刹那、有希、怜から罵られたので、俺は静乃に現状の説明を求めていた。静乃を選んだのは完全に無意識であった。
「・・・・・・それはひょっとしてギャグで言っているのか?まあどっちにしろ、たちは悪いけれど。」
「??? 三行で説明してくれ。」
「はぁ―――
『栞がお前に数学を教えてもらおうとした。
だがお前はそれを完全にスルーした。
しかも、なんども。』
わかった?」
「ああ、なるほど。少しボーっとしていたから気づかなかったわ(笑)。」
でもまてよ?
「誰が俺の事を蹴ったんだ?」
「ああ、それはぼくだ。」
「・・・なぜに?」
「ちょうどそこにけりやすそうな頭があるからさ。」
「馬鹿野郎!!そこは蹴るんじゃなくて踏みつけ――――――すなわちふみふみだろうが―――――――」
その時、再び頭に衝撃が走った。静乃の蹴りが入ったのだ。てか、この蹴り、つま先とかじゃなくてもろに足の甲だったぞ?サッカーで言うインステップキックのフォームだったし、なんて危ない奴なんだ。
再び仰向けとなってしまった。視界がぐわんと揺れているが、なんとか上体を起こす。―――起こそうとしたが、何か大きな力によって押し倒されてしまった。
視界が揺れていたため一瞬気づかなかったが、
それが人の足であることに気付くのはすぐであった。こんなとき、踏みつけている側がスカートでもはいていたら、丸見えだったのだが、ジーンズの静乃には何の関係もなかった。
ちょ、おまっ・・・まじで踏むなよ!ぐりぐりするなって!・・・・・てか何気にいたいから。痛いから!二度蹴りと踏みつけのダブルパンチ……意識が、意識が遠のいて・・・・・・・――――――――でもなんでだろう、まんざらでもないこの気持ち。・・・・・・いや、俺はマゾではない!サドなはずだ!てか周りの奴止めろよ!
「ちょww誰か助けてww」
周りに助けを請うてみたが、残念ながらみんなは非協力的であった。
「そんな笑いながら言われても、ねえ?」
「喜んでいるようにしか見えません。」
刹那と怜は俺を蔑み、
有希は腹を抱えて笑っていて、
柄谷は申し訳なさそうに俺を見ている。
え?柄谷?申し訳ないと思ってるなら泊めてくれよ
「お前らっ!頼むからっ!助け・・・」
そこで俺は気を失った。