タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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1-2-7 おきらく作戦会議 解答編

とりあえず、テスト前に余計な時間はとられたくないから、部長を見捨てよう。そうしよう。

 

「はい、俺たちは部長に呼ばれてきただけです。ほぼ強制的につれてこられました。」

「ちょっ!国広っ!私を見捨てる気か!?」

 

部長は会長に向けていた視線を俺に向けた。目は明らかに血走っている。

 

「見捨てるも何も、俺は何も間違ったことを言っていませんが?」

「・・・だそうだな。じゃあ生徒会室に来てもらおうか。」

 

朱鳥は素早く部長の背後に回り襟首をつかんで引きづり、この場から立ち去り始めた。ちなみに彼は、相手が先輩であろうが教師であろうが女性であろうが言葉づかい、態度が荒い。一応名前を呼ぶときにはさんづけなのだが、それ以外はため口だ。

まあそんな感じであるから、女性の襟首をつかむことなんて彼にとってはたやすいことなのだ。俺にはとてもじゃないけどそんな真似はできないな。

 

「や、止めてぇ!行きたくないっ・・・行きたくないよ生徒会室にっ・・・・・・!もうあの罫線Cは見たくないっ・・・!誰かっ、誰か助け――」

 

そこで、言葉は途切れた。部長は朱鳥、それに付き添いのカトル先輩に連れられて部室から出ていった。残されたのは俺と柄谷、ハムに、会長と刹那だけである。

会長の後ろにいた刹那はこちらに目を向け・・・いや、違う。焦点がずれている。これは・・・先ほど部長がいろいろと書きなぐっていたホワイトボードに目を向けているな。

でも、特に何も面白いことは書いてないんだが・・・。

数秒の後、刹那はホワイトボードの側に近寄って、その文字を確認――――――――――しようと、足を部室内へ踏み入れようとしたところ、会長は腕を横にひき、行動は止められた。

 

「では皆さん、部室の鍵を閉めるので、外に出てください。」

 

言われるがまま俺らは荷物をまとめ、部室を出た。鍵を閉めた後、会長は刹那の手を取りこの場から立ち去った。心なしか足取りは早かった。おそらく部長の始末をさっさと済ませたいのだろう。

残されたのは俺と柄谷とグラハム。嵐が去った後のように、あたりには静寂が広がっていた。

 

「にしても、さっきの先輩はなかなかでしたね。」

 

その静寂を破ったのは柄谷であった。

 

「まさか部長をこうもあっさりと見捨てるなんて。」

 

おいおい、なんで自分たちがいけないことしたかのように言っているんだ?

 

「まあ確かに申し訳なくはある。だがな、柄谷、人間というものは、時にはあえて見捨てなければならないこともある。もし仮に部長と共犯者になろうとする。それなら俺ら3人はあの罫線Cの反省文をびっちり書かされるんだぞ?しかもテスト前であるのにもかかわらず。そうなりたかったのか?」

 

俺と部長だけで罪をかぶる方法もあったのだが・・・・・・・これは黙っておこう。

 

「それは・・・嫌ですが。」

「全員が助かる方法なんてなかったんだ。最低一人は生贄となる。生贄にはなりたくないだろう?それを部長は・・・部長はっ!犠牲になってくれたんだっ・・・!」

「な、なるほど・・・部長さんは犠牲になってくれたんですね・・・。」

「そうだ柄谷、部長は俺たちを救ってくれたんだ。反省文という魔物から俺たちを。これは部長に感謝しないとならないな!」

「部長さん、ありがとうございます!」

 

よし、洗脳完了。

扱いやすい女で助かった。

あとはハムだが……

俺はハムに目を向けると、彼はただ黙って腕を組み、背もたれに体重をかけて、少しうつむきながらたっていた。

 

「なあ、ハム・・・」

「言わんとしていることは分かっている。正義である行動が、果たして善行であるのか。否、今回がまさにそれだ。カタギリは正しい判断をしたことは分かっている。私も時間が無いのは同じだからな。」

 

な、なんて物わかりのいいお人っ!

 

「では私は帰らせてもらうぞ。また明朝に会おう。」

 

グラハムはカバンをとり、立ち去って行った。

 

「じゃあ俺たちも帰るか。」

 

俺はそう柄谷に告げ、席を立とうとしたとき、

 

「あ、あの、ちょっと待ってください。」

 

柄谷に呼び止められた。

 

「何?どうした?」

「えっとその・・・実は・・・」

 

何をもじもじしているのだろう――――――と柄谷を見ていたら、彼女の手元には参考書があった。

なるほど、そういうことか。

 

「なにかわからない教科でもあったのか?」

「あ、そうです!ちょっと数学で分からない問題が・・・・・」

 

怜の家では酷いことしてしまったからな。その埋め合わせと言ってはなんだが、柄谷の希望には応えようと思う。今すぐ帰らなければならないというわけでもないし。

 

「よし、どんと来い、俺に任せろ。」

「あ―――――――ありがとうございます!」

 

柄谷は俺にぺこりとお辞儀をし、上がってきた顔には満面の笑みを浮かべていた。なかなかいい笑顔だな。そう素直に思う。

にしても、もしあの時、部長と共犯者になったとしたら…どうなっていたのだろう?

 

 

 

 

 

柄谷との勉強を終え、家についたのは7時であった。リビングでは有希が参考書を広げてテレビを見ながら勉強していた。テレビの内容はバラエティ番組。

ながら勉強、あんまりよくないんだけどなぁ・・・。加えてバラエティとか・・・いや、人によっては集中できるのだろう。中学の同級生なんて、歌いながら勉強してるやつとかいたしなあ。

 

「兄さん、お帰りなさい。部活はないのに遅かったね。」

 

俺に気付いたらしく、有希はこちらに視線を向けず勉強しているまま出迎えてくれた。

 

「いや、正確にいえば部活はあったんだ。ただいろいろあったけど。まあその話題には触れないでくれるとありがたい。」

「ふうん。」

 

これ以上離すこともなかったので、俺は自室に戻った。階段を上がっている最中、リビングから笑い声が聞こえてきた。

・・・駄目だ擁護できねえ。こりゃ絶対、はかどらねえだろうな。

 

 

 

俺は部屋に着いたら、とりあえず一休みしたかったのでベッドにつっぷした。ポケットには竜崎がいるのにもかかわらず、だ。

 

「むがっ・・・むぅ・・・・・・・ぷはぁっ・・・。君はなんてことをしてくれるんだっ!常識的に考えろ!」

 

なんとかポケットの中から這い出て、俺とベッドの間を掻い潜り、俺の眼前に竜崎はやってきた。

 

「ああスマソスマソ」

「誠意が感じられないっ!しかもなんだスマソとは!日本語でしゃべれ日本語で!」

 

・・・うざい。が、なんか可愛いからいいや。

 

「まあそんなことはどうでもいいとして。」

「どうでもいいんかい!」

「五月蠅い、茶々を入れるな。黙って聞け。」

 

何故、今度は命令されているのだろう。

 

「さっきの部室内でのやり取りで、君は一つの分岐点に立った。そうだろう?」

「ああ、確かにそうだが・・・」

「その時に、君は2つか3つの選択肢の中から1つを選んだ。その結果君は、反省文を書くことを免れ、宮永龍華を切り捨てた。」

「・・・それがどうしたよ。」

「もし仮に、これがゲームだとしたら、選択肢の前ではセーブをし、差分を回収しようとする。違うか?」

「いや、違わない。確かに俺もセーブはする。」

「そうだろう?だが現実はできない。自分の主観が過去に遡る、そんなことはありえやしない。」

「タイムリープマシンさえあれば話は別だけど、まあ確かに、そんなマシンは空想にすぎないし、お前の言う通りだな。」

 

こいつはいったい何が言いたいのだろう。まったく想像がつかない。

 

「だが、考えてみてほしい。主観が遡ることは不可能だが、『それに近いことができるとするなら。』分岐したのは変えられないが、別の選択肢の選ぶ、乃ち、『差分を回収できるとするなら。』」

「っ・・・!」

 

なんだと・・・?つまりそれは・・・

 

「単刀直入に言おう。君に“差分回収装置”を与える。これを使えば、君は別の選択肢を選んだ時の展開を見ることができる。」

 

これもサポートの一つというやつか。にわかに信じがたいが、竜崎の言うことだ。きっと、本当なのだろう。

 

「ただ、注意してほしい。これはあくまでも、『展開を見る』ことしかできない。その選択肢を選んだからと言って、『現在は変えられない』のだ。だけど、参考にはなる。今後の彼女づくりに役立ててほしいというわけだ。」

「な、なるほど。だが一つ質問いいか?」

「なんだい?」

「なぜ今日なんだ?分岐は一週間前にもあっただろ?」

「なあに、簡単な話さ。先週の分岐では、マイナスな選択肢はなく、単なるフラグ建てだった。だが今回はマイナスな選択肢もあり、好感度も動く。故に先週は特に必要というわけではなかったのだ。必要のないものを前渡するのは、私の意向にはそぐわないのでね。」

「・・・マイナスか。」

「もうすぐ届く、暫し待つのだ。」

 

竜崎はそういうとベッドの上から降り、机の上に登った。

なぜそんな簡単に上れるのかというと、いつの間にか机横に小さい階段らしきもの(俺が怜の家に行っている間に作られた)がつけられているからである。

俺はうつぶせの状態からあおむけの状態になり。天井を見上げた。真っ白い光景が広がる。それは自分の制服の黒さと相まって、余計に白く感じる。

・・・そうだった、まだ制服だった、着替えなきゃな。

俺は起き上がり、下着以外(パンツはボクサー)はすべて脱――――――――ごうといたところで声がかかった。

 

「お、おい君!何をしている!」

「何って着替えようとしてるんだけど?」

 

俺はすでに学ランの上は脱ぎ、Yシャツのボタンに手をかけていた。竜崎がなぜかとめに入っているが、そんなことは気にせずボタンを外す。

 

「いやそれはわかる。だがちょっとまて、俺の話を聞け。」

「はいはい、着替えてから話を聞くからさー。」

 

既にこのときに、俺は上半身はマッパ、ズボンのベルトを外しているところであった。竜崎の言葉は無視。ベルトを外し、ズボン、ソックスを脱いでパンツ一枚になった俺は、私服を取ろうと箪笥に手をかけようとしたら、

 

「遼!待たせたわね!サポートの一つの差分回収装置をとど、け、に・・・」

 

ドアは勢いよく開けられ、そこにはヘルメット型の装置を抱えた怜がいた。

・・・状況を整理しよう。

今俺はパンツ一丁、しかもボクサーパンツだから、俺のムスコの形がくっきりしてしまっている。だが箪笥が横向きにおいていたため、ドアを開けた時は体半分しか見えていないはずだ。

まあそれはいい、問題なのは、“入口にいるのが女性である”ことだ。しかも有希ならまだいい、まだ見慣れてるはずだ。だけど……そこにいるのは怜だ。

 

 

一瞬時が止まったように思えた、いや、止まった。怜は扉を開けたその体制のまま硬直し、俺はタンスの引き出しを開けようとした姿勢のまま硬直していた。

数秒の後、

 

 

「きゃ、きゃあああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

 

家じゅうに、怜の悲鳴が響き渡った。

 

「ば、馬鹿野郎!なんでこんなタイミングでやってくるんだ!しかもシチュエーションは普通逆だろ!男のヌードとか、誰得だよ!みんなは女の子のエロハプニングを望んでいるんだよ!」

「いやあぁぁぁぁ!こっちむかないでえぇぇぇぇ!!!!」

「ひでぶっ!」

 

ヘルメットを抱えていない方の手で、俺の頬にビンタが炸裂した。顔にはモミジが作られ、衝撃で後ろに転げてしまった。

 

「あああああんんた!よりにもよってなんで仰向けでM字開脚なのよおぉぉ!正座しなさい正座ぁ!!」

「れ、怜さんどうしましたか!?・・・・・・って、兄さん!?」

「おうおうどうしたい怜ちゃん。そんなに悲鳴を上げ、て・・・おい遼。お前、何、やっているんだ?」

 

怜の悲鳴を駆けつけて、叔父さんと有希が、俺の部屋に、きやがった・・・。

 

「だから言ったのに・・・素直に君が私の言うことを聞いていれば・・・」

 

竜崎はやれやれといった風に額に手を当てている。

―――――状況を再確認しよう。

俺は今パンツ一丁のまま床にへたり込み(M字開脚)、目の前の怜は顔を真っ赤にしてうずくまって、その後ろには、まるで汚物を見るかのように目が座っている有希、鬼の形相をした叔父さんが立っていた。

 

俺、この後生きているかな・・・

 

 

 

 

あの後、俺の必死の弁解により、なんとか事態は収束に向かった。が、有希の目には『お隣さんの女性に自分の股間を見せつける変態兄』と映り、叔父さんからも軽蔑されてしまったことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

沈静化したころ、自分の部屋には俺と怜と竜崎を残すだけとなった。

 

「本当に、反省しています。どうか、醜い私めをどうか許していただけないかと、思います。」

 

何度も何度も謝ったが、再度怜に謝る。謝りすぎるのはいけないことであるということは分かっているのだが、どうしてもやってしまうというのはなぜであろうか。

 

「アンタの謝罪は聞き飽きたわ。それにノックもしないでドアを開けた私も悪かったことだし。」

「怜はなんて優しくて、心の広い人なんだっ!」

 

俺は感激して目をうるうるさせていたが、そんな俺を怜は冷ややかな目で、

 

「勘違いしないでよね。さっきの件に一々かまっていると竜崎さんに頼まれた仕事がいつまでたっても始まらないと思っての言葉よ。まさかあんな汚物を見せられて、そんな簡単に許してあげるとでも思ってんの?もしそうなら、とんだおめでたい脳味噌ね。」

 

俺を、完膚なきまでに、言葉で叩き潰した。

例えるなら、詰め合わせの飴を渡されて、そのあと電流の流れている鞭でメッタメタにするような。そんな感じがした。なんてエッジの鋭いアメとムチ。

絶望に浸っていた俺を地の底から呼び起こすかのように、竜崎は一つ、大きな咳払いをした。

その瞬間、怜は自分の使命を思い出したのか、『まあとりあえず話を始めるわよ。』と切り出した。

 

「竜崎さんから説明があったように、この差分回収装置さえあれば、過去の分岐点にとんで、展開を見ることができる。まあ物は試しよ。さっさとこれを被りなさい。」

 

そういって怜はベッドの横に置かれていた装置を俺に放ってきた。いきなり放られたもんだからこっちもびっくりしたが、なんとかそれをキャッチする。―――――これ、結構重いぞ。落としたら壊れてたんじゃねえの?

 

「おいおい、これ、精密機械だろ?こんな粗雑な扱い方でいいのか?」

「五月蠅い。黙ってさっさとかぶれ。」

 

怜に気圧されて、俺はおっかなびっくりこのヘルメットをかぶる。

 

「そんなにびくつく必要はないわ。別に電流が流れたりするわけでも、頭を圧縮するわけでもないんだから。――よし、被ったわね。じゃあこれがコントローラーだから。」

 

そういって怜が手渡したコントローラーは・・・まんまPS3コントローラーじゃねえかじゃねえか。

 

「じゃあ真ん中のHOMEボタンを押して。あとはガイドに従って。」

「ボタンの名称まで同じとは・・・」

 

俺はそうつぶやき、ボタンを押すと――

HOMEボタンは光り、開け放された眼前がバイザーで一瞬で覆われた。そして、光は完全に遮断された。あたりはただただ闇であった。

首を左右に振ってみてもその景色は変わらない。当然だ。ヘルメットをかぶっているのだから。

ほんの数秒前とのギャップに暫し動揺したが、眼前にあるウィンドウが表示され、動揺は収まった。

 

【氏名、生年月日、血液型、父母の名前を入力してください】

 

画面下には、よくある会員登録のようなウィンドウが表示されている。

試しにコントローラーを動かしてみると、パソコンで言う矢印アイコンが動いた。なるほど、基本的操作はなんらPS3と変わらないのか。

慣れた手つきで空欄を埋め、『次へ』のボタンをクリックすると、

 

【退行時刻を設定してください】

 

そう表示され、その下にはカウンターがあった。ここに時間を入力しろというわけだな。

えっと、確か6時間授業の後だから・・・

3時25分か?

いや、間違いない。大体そのあたりだ。

俺はその時間を入力し、『決定』のボタンをクリックすると――あたりが眩しく輝き、思わず目を瞑った。おっかなびっくり目を開けると……そこには、ゲー研の部室が広がっていた。え?なんでなんで?どういう理屈?さっきまでパソコンみたいな画面だったのに、なんでいきなりこんなリアリティのある風景―――いや違う、全然奥行きが感じられない、そして視界は固定されている。それはまさしく・・・・・

 

【「なら水金で決定!異論は認めない!」】

 

突然眼前に一人の女性の“立ち絵”が現れ、そのセリフが“画面下に表示された”。勿論彼女はわれらがゲー研部長、宮永龍華その人である。この装置の仕組み、それはおそらく、“過去をギャルゲ風に表わす”のであろう。

よくよく見ると左上には日付の表示、試しにスタートボタンを押してみるとコンフィグが表示され、×ボタンを押せばセリフが消えた。もう一度押すと再びセリフが表示される。○ボタンを押せば、セリフが進んだ。

 

【部長はホワイトボードに《水金突撃!》とでかでかと書いた。】

【どうでもいいんだけど、文字を大きく書くか小さく書くかで性格がはっきり分かれるよね。】【あとかっちりかくか適当に書くかで。部長の場合は適当かつ大きく書いているな。まあどうでもいいんだけど。】

 

 俺が思っていたことまで、まさにそっくりそのまま。ものすごい再現力だな。

 

【「それで、次はタッグの出る順番を―――――――――――――」】

 

 とりあえず、俺の考えてることは飛ばしていいか。自分の思っていることを自分で読み返すのってなんか嫌だし。

 

【「やはりいましたね。部活動停止期間中、無断で活動し、さらに部室のカギを許可なく持ち出して・・・。」】

 

 画面に緋色先輩が映し出された。この立ち絵もまさしくギャルゲそのもの。そのものなんだが、その、あれだな。実写ギャルゲーはちょっといやだなあ。せめて俺の好きな絵師さんならいいのだが。

 

【「あ、あはは・・・結衣、いや、緋色会長ではあ、ありませんかぁ~。こんなところで会うなんて奇遇ですねぇ~~・・・。」】

【「ええと・・・君たちは、部長に呼ばれてここに来たんですか?」】

 

ここだ、ここが分岐点だ。

竜崎の言っていたことが本当なら、ここでは選択肢が3つ出るはずだ。

そう考えていた通り、画面には選択肢が3つ表示された。

 

A 「いいえ、みんなで部長と相談して今日来ようと思って集まりました。」

 

B 「いいえ、実際に集まろうと言い出したのは俺で、鍵の件は俺が部長に頼んだんです。」

 

C 「はい、俺たちは部長に呼ばれてきただけです。ほぼ強制的につれてこられました。」

 

先ほどは現実世界であったからクイックセーブなんてことはできない。だがこれはまさしくギャルゲ。それなら、クイックセーブもできるはずっ!!

○はテキスト送り、×はテキスト消し、△はバックログ表示だろうから、□でメニューの表示なはずだっ!

案の定、□ボタンを押すとメニューが表示された。セーブ、ロード、クイックセーブ、クイックロード、タイトルバック、本来ギャルゲにあるはずのすべてものが、そこにはあった。

よし、クイックセーブだ。

俺はそのボタンを押し、クイックセーブが確認された後、元の画面に戻った。

前回の俺は3番を選んだ。クイックセーブは完了した。なら、残りの二つ、両方ともやろう。最初は1番からだ。

俺は1番の選択肢を選ぶと・・・

 

【「いいえ、みんなで部長と相談して今日来ようと思って集まりました。」】

【俺がそう言ったその時、部長も含め全員が驚いていた。】

【「先輩っ!なに余計なこと言っているんですか!」】

【「そうだ。貴様は何を言っている?」】

【「国広・・・・・私とともに共犯者になってくれるんだねっ!あたしゃあ嬉しいよっ!」】

 

そして、画面上には

 

《柄谷の好感度がダウンしました》

《ハムの好感度がダウンしました》

《宮永の好感度がアップしました》

 

そう表示された。

 

・・・・・なるほど、マイナスとはこういうことだったのか。でも一応プラスもあったな。

確認が取れたから次だ。2番の選択肢を選ぼう。

俺はクイックロードをし、2番の選択肢を選ぶ。

 

【「いいえ、実際に集まろうと言い出したのは俺で、鍵の件は俺が部長に頼んだんです。」】

【俺がそう言ったその時、部長も含め全員が驚いていた。そう、それは生徒会の面々も。】

 

・・・ん?ちょっと違うぞ?

 

【「先輩・・・・・」】

【言葉が見つからなかったのか、それ以外何も言えなくなってしまった柄谷。】

【黙り込んで、目を瞑り、少しうつむき、腕を組んだハム。口元がかすかに笑っていた。】

【開いた口がふさがらない部長。】

【「・・・・・・なぜ、そんなことを?」】

【「ええと、やりたくなったからやったんです。】

【会長は一拍おいて、口を開いた。】

【「・・・・・・そう、ですか。国広さん。了解しました。では生徒会室に来て、反省文を書いてください。あと、たとえ命令したことであっても、彼女が鍵を盗み出したことには変わりないので、貴女も反省文は書いてください。」】

【「そ、そんなぁ!」】

【部長は両腕を朱鳥とカトルにつかまれ、ずるずる引き攣られて部室を後にした。それに続いて俺と会長、刹那が部屋から出た。】

【ほどなくして、会長は俺に小声で話しかけてきた。刹那は俺たちの前を歩いていたので、かろうじて聞こえないレベルである。】

【「さっきのアレ、実は龍華をかばうためのウソでしょう?」】

【「へ?いやあそんなことは……」】

【「もしさっきの言っていたことが本当なら、あれほどまでに龍華がおびえたりしませんよ。それにその時、貴方はやけに冷静であったじゃありませんか。」】

【「……ばれてましたか。」】

【「わかりやすかったですからね。………でも、少し見直しました。正直に話していれば助かったのに、嘘をついてまで罪を背負おうとするなんて・・・・・・・・。だから、反省文は書かなくていいです。というか、もともとやってないのだから書く必要もありません。まあ、ああいってしまった以上。便宜上は一緒についてきてください。】

【会長のその微笑みが、脳裏に焼き付いた。】

 

《柄谷の好感度がアップしました》

《ハムの好感度がアップしました》

《宮永の好感度がアップしました》

《緋色の好感度が大幅にアップしました》

《刹那の好感度が微量にアップしました》

《カトルの好感度が微量にアップしました》

 

なっ

 

なんてこったい!

 

まさか一番アウトだと思われていた選択肢がこんなに素晴らしい結末だなんてっ!

しかも、さっきの会長の言葉を聞いて、3番が非常に嫌な予感がする・・・

俺はクイックロードをして、3番を選択。すると、

 

【「はい、俺たちは部長に呼ばれてきただけです。ほぼ強制的につれてこられました。」】

 

そのあとのみんなの流れは変わらず、グラハムが帰ったところで好感度が表示された。

 

《柄谷の好感度がダウンしました》

《ハムの好感度が大幅にダウンしました》

《宮永の好感度が大幅にダウンしました》

《緋色の好感度が大幅にダウンしました》

 

キャアアアアアジライダッタアアアアアア!!!!

なにこれぇ?なにこれぇ?安全策かと思いきや、地雷だったなんて・・・

マイナスしかないとか・・・こんなのって・・・

しかもグラハム!お前は分かってくれているかと思ったらこれかよ!

・・・いや待て、確かにこれは酷い結末だ。だがこの後に少し続いていたよな?

俺はそう思ってテキストを読み飛ばす。

そして、柄谷との勉強会が終わった頃、

 

《柄谷の好感度が大幅にアップしました》

 

てことはつまり、

 

Aを選べば部長の好感度が上がり、

Bを選べば全員の好感度が上がり、

Cを選べば柄谷の好感度が上がる(失ったものは大きい)

 

なるほどね、これは確かにためになるね。

俺はすることもなくなったので、タイトルバックを選択した。すると画面が暗転し、一つのウィンドウが表示された。

 

【始める 止める】

 

俺はやめるをクリックした。

するとバイザーがゆっくりと開かれ、元板自分の部屋の光景が目に映った。戻ってきたのだ。

 

「どうだった?この装置の意味、わかったかしら?」

「ああ、すごい再現だよ・・・。」

 

正直圧巻であった。だけど、選択しなかった未来が、必ずしもこうなるのであろうか、という疑問はある。

 

「・・・ちなみに、選んだ選択肢のその後は、必ずその通りになる。再現というか、未来そのものだから、原理は諸事情により説明できないが、まあ信じてくれ。」

 

竜崎はアンニュイな表情で俺にそう告げた。なぜアンニュイ――ああ、原理を説明できないからか。

 

「てか、あなたの独り言、結構面白かったわよ。」

「・・・・・へ?」

「プレイ中ぶつぶつ呟いていたじゃない。」

「・・・・・・・・・・」

「目はふさがれていても、口はふさがれていなかっただろう?」

「あと、耳はふさがれていたわけではないわよ。ヘッドフォンみたいなもんなんだから。今回はたまたま私たちがしゃべらなかっただけ。」

 

は、恥ずかしい・・・・・・・・

 

「まあ、最初はよくあるよくある。あまり気を落とすんじゃない。」

 

なんで、フォローされているのだろう。

まあなにはともあれ、この装置は使えるな。

選択しなかった未来が見れるというのは。

ただ………実写は止めてもらおう。

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